連載第5回は、その秘密に迫ります。
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人類滅亡のシナリオ
「西暦XXXX年、ある夏の日、夜空からコウモリたちの姿が消えた。
最初は”ただコウモリがいなくなっただけ”に思われたが、次第に人類は追い詰められていった。
まず果物が実らない。果物の王様ドリアンをはじめバナナもマンゴーも、その他多くの果実が実らなかった。
さらに害虫が大発生をした。小麦も野菜も害虫に全てやられた。急激に人類の食べ物は無くなっていった。
高く積み上げた積み木の土台となる大切なピースを失い、グラつきを修正できない状態と同じように、私たち人類の生活は崩壊していった・・・・」
まるでフィクション小説のような話ですが、ぜんぜん考えられることなのです。
不気味で邪悪なイメージを持つコウモリも、実は人間にとって益獣です。私たち人間にとって非常に役に立っている動物です。コウモリが世界からいなくなれば、イコールそれは人類の滅亡を意味すると言っても過言ではありません。
コウモリは生態系の重要なピース
コウモリがいなくなるということは「生態系のバランスが崩れる」ということです。生態系にとってコウモリは欠くことの出来ない重要なピースなのです。いや、そんなこと言ったら、どんな生物であってもいなくなれば困るだろう、そこに差別はないはず。
そうなんです。この世に不必要な生物などいない。というか、必要、不必要という概念自体がそもそも自然界にはない。けれども、コウモリは生態系の中でも中核を担うポジションを守っているので、コウモリがいなくなることの影響は、生態系全体に広がってしまうのです。生物多様性を保ち、生態系を保護してゆくことは、いまや人類の命題といえましょう。
実際にドイツやイギリスをはじめとするヨーロッパでは、多額の国家予算でコウモリ類の調査と保護を行なっています。私たちもそろそろ考えを改めましょう。
コウモリの食べ物
ここで、改めてコウモリの餌についてみてみます。
世界のコウモリの餌を円グラフにしました。

虫が餌
コウモリ類のメインの餌は、虫。とくに蛾や蚊などの小さい虫たちです。実に7割のコウモリが虫を餌にしています。コウモリは非常に大食漢で、1晩に自分の体重の1/3、ときに体重の1/2の虫を捕まえて食べるのです。その量を蚊で換算してみると、1晩に500匹〜1000匹もの蚊を食べる計算になります。とんでもない量ですよね。つまり1頭のコウモリがいなくなるだけでも、生態系には相当の影響がありそうだなと想像できるわけです。

植物が餌
虫の次に多いのがフルーツなど植物を餌にしているコウモリ。全体の3割を占めています。熱帯や亜熱帯に生息するフルーツ食いのコウモリたちは、オオコウモリとかフルーツバットと呼ばれます(国内では小笠原諸島、南西諸島に生息)。
彼らは果物を食べる以外にも花の蜜を餌にしており、そのことが植物の受粉に役立ちます。なのでオオコウモリがいなくなれば、受粉できずに果実が実らない事態に陥るのです。オオコウモリは数百種類の植物と関わりがあると言われますから、その影響は甚大でしょう。また、果実を食べることで種子散布の役目も担っています。

肉が餌
全体のわずか1%弱しかいないのが肉食のコウモリ類です。
肉食の代表はアラコウモリ。気性が荒いという意味のアラ(荒)が名前に付けられます。小動物や鳥や他のコウモリを狩りをして食べます。カエルクイコウモリ(カエル)、ウオクイコウモリ(魚)という専門食の種類もいます(とはいえ昆虫類も食べます)。
また日本にも生息するヤマコウモリは、ウグイスやアオジなどの小鳥類を捕食することが知られています。今までもヤマコウモリは夜間に渡る小鳥類を食べていることが、糞分析や録音記録などから確実視されていました。状況証拠的に証明されていた事実も、最近日本の研究者チームが実際にヤマコウモリが小鳥を襲うシーンを観察、撮影に世界で初めて成功して発表しました。
https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20260723-1.html
(コウモリは飛行中の渡り鳥を捕食していた―世界で初めて空中捕食の瞬間を目視観察・記録)
ヤマコウモリは普段は昆虫類をメインの餌にしていますが、春と秋に渡り鳥が増える時期に小鳥を食べているようです。
小鳥を襲う側のヤマコウモリですが、逆に鳥から襲われることも日常茶飯時。ヤマコウモリの天敵はチゴハヤブサやハイタカなどの猛禽類です。タカ類は夜目はききませんが、早朝や夕方などの薄明るい時間帯にヤマコウモリを捕食します。
コウモリは本当にまだまだ分からないことだらけで、それがコウモリの最大の魅力です。

血が餌
多くの人が持つ「コウモリは怖い」というイメージを決定的なものにしている吸血コウモリ。
血を餌にしているコウモリは実在します。とはいえ日本にいないのは勿論、世界でも分布は限られます。
中南米に3種が生息します。世界に1500種いるコウモリの中でたった3種です。チスイ(血吸)コウモリという仲間になりますが、実際には血をチュウチュウ吸うわけではありません。牛などの身体に鋭利な歯で傷をつけて、そこから流れ出る血を舐めて摂取します。
チスイコウモリの唾液には、傷をつけても痛くないような麻酔効果があるとされます。また、血が固まらないように抗凝固成分も含まれ、そのお陰で血が止まらずにずっと血を摂取することができるのです。そして面白いことに、この特殊な成分を「ドラキュリン」といいます!
チスイコウモリは家畜以外にも、時には人を狙うこともあります。正直、それはちょっと嫌ですね!!蚊もアブもヌカカもブユも、ダニもヒルも、、、、血を吸ってくる奴らは、みんな嫌いです。人間って勝手なものですね!
でも、考え方によっては吸血動物たちは、誰も殺めない。生きている生物からちょっとだけ血を拝借するだけです。
それにチスイコウモリほど「優しい」生物はいない!?のです。
チスイコウモリは恩義を忘れない
実は血縁関係のない個体間での、餌のやり取りが確認されている生物は人間とチスイコウモリだけとされます。人間でしたら、ご近所さん同士が助け合って食べ物のお裾分けってよくあることですよね。血縁関係がないのに助け合います。こういうことって他の生物では有り得ない。自分の親や子でもないのに手を差し伸べる意味がないからです。
ですがチスイコウモリは同じ群れの中にお腹が空いている個体がいる場合は、血縁関係がなくても血を分け与えるのです(自分が摂取してきた血を吐き戻して相手に与えます)。まさに、ヤクザが盃を交わすがごとく、血を分けた兄弟ってわけです。恩義、仁義はヤクザの世界でも重要なのでしょうけども、それはチスイコウモリの世界でも同じです。チスイコウモリは誰から血を分けてもらったかを覚えているというのです。もし、お腹をすかせた2個体が同時にいた場合、どちらの個体に自分の血を分け与えるのか?答えは簡単、前に血を分けてもらったことのある個体の方を選びます。凄いですね!
また、反対もあります。自分がお腹が減っていた時に血を分けてくれなかった個体のことも忘れません。「そういや、アンタこの前、血を分けてくれなかったわよね!」と根に持つのです(笑)
こういう時にはどうするのか?なんと、いつかその相手との関係修復のチャンスが訪れたときには、必要以上に多くの血を与えて「この前はごめんなさい、これで許して」と詫びを入れるのだとか。もう驚きです!
コウモリがいない世界は不気味
夜行性で、洞窟に群れていて、おまけにチスイコウモリもいるし、とにかくコウモリにはダークで陰湿で不気味なイメージがつきまといがちです。たしかにそういう一面もあるでしょう。だけど、それだけじゃない。コウモリが人間の役に立っている面も大いにあるんです。コウモリがいるから今の世界が成り立っているんです。
もし、この世からコウモリがいなくなったら、こんなに不気味なことはありません。だから偏見が少しでもなくなるよう、僕はこれからもコウモリに注視していきたいですね。




