日本最大の湖から「水」を考えるため、琵琶湖に注ぐ川の上流域にイワナを見にいった! | 料理・レシピ 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

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2026.05.23

日本最大の湖から「水」を考えるため、琵琶湖に注ぐ川の上流域にイワナを見にいった!

日本最大の湖から「水」を考えるため、琵琶湖に注ぐ川の上流域にイワナを見にいった!
日本最大の湖、琵琶湖。滋賀県の人々にとっては、いつも頭のどこかで意識している存在だという。この大きな湖を中心に、生態系の循環のもとである「水」を考えてみたい。そんな湯本さんの思いに、湖岸で料理店を営む川西豪志さんが共鳴した。そしてふたりは、琵琶湖に流れ込む愛知川の源流部に池田養魚場を訪ねてみることになった。もっとも上流域に生息する渓流魚であるイワナの状況を、まず確かめようというのだ。

滋賀県民は琵琶湖の水質汚染を改善する市民運動を行ってきた!

江戸時代後期の浮世絵師、歌川広重(1797〜1858)は琵琶湖の風景の美しさを『近江八景』という連作に仕上げた。その中の「堅田落雁」。湖西の堅田から湖東の近江八幡あたり、さらに鈴鹿山脈を臨む。国立国会図書館蔵

わたしたち滋賀県民は、いつも頭のどこかで琵琶湖を意識して暮らしている。1960年代後半、日本全体が高度経済成長で盛り上がる中、琵琶湖周辺でも住宅や工場が激増した。規制が緩いままに生活排水や工場排水による汚濁物質の流入が増えるにしたがって、琵琶湖の水質悪化が問題になってきた。

1977年5月、琵琶湖に悪臭を放つ赤褐色のプランクトンが大発生した。この「淡水赤潮」の正体は、ウログレナ(Uroglena americana)という黄色鞭毛藻類である。ウログレナは、直径50〜500μmのゼラチン状の球状群体を形成し、2本の鞭毛で水面付近をゆっくり回転しながら移動する。水温が15〜20℃になる5月頃に富栄養化した水域で大発生して、水が赤茶色に濁る「淡水赤潮」になる。

琵琶湖の富栄養化の大きな原因が合成洗剤に含まれるリンであることがわかったため、リンを含む洗剤の使用をやめて天然油脂を主原料とした粉石けんを使おうという「粉石けん運動」が県内全域に広まった。動きは早かった。1978年には主婦層を中心として「びわ湖を守る粉石けん使用推進県民運動」県連絡会議が結成され、行政に早急な対策を要求した結果、1979年に「滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例」制定につながったのだ。

1981年には7月1日を「びわ湖の日」と定めて以来、県内各地で市民、企業、行政が一体となって「びわ湖を美しくする運動」として、琵琶湖一斉清掃をおこなっている。それ以外にも滋賀県では、琵琶湖の水質浄化に大きな役割を担うヨシ群落の保全活動や、学習船「うみのこ」による環境学習が定着している。学習船「うみのこ」は、県下すべての小学校、特別支援学校、各種学校の5年生が湖上で宿泊体験をするフローティングスクールである。小学校で必ず一度「うみのこ」に乗る経験もあって、県民の琵琶湖への関心は高い。

親しい湖岸の料理人に同行を願い、琵琶湖に注ぐ愛知川の源流へ

琵琶湖に流れ込む主な河川。琵琶湖は滋賀県の面積の約6分の1を占める。写真/滋賀県立琵琶湖博物館の展示より

琵琶湖には117本の一級河川が流入している。流域面積の広い順に、野洲川(流域面積387.0km2)、姉川(369.5km2)、安曇川(300.0km2)、愛知川(232.6km2)、日野川(207.1km2)と続く。そのうち愛知川の上流で、60年も前から流水を使ったイワナの養殖場があることを知り、5月初旬に伺うことになった。イワナは日本ではもっとも上流域に生息している渓流魚である。

愛知川は、鈴鹿山脈の鈴ヶ岳(1,130m)に源をもつ御池川と、雨乞岳(1,237.7m)に源をもつ神崎川が大きな支流として永源寺町政所(読み:まんどころ)付近で合流し、扇状地をつくりながら琵琶湖に注ぐ約48kmの河川である。最上流から河口まで流域のほとんどが、東近江市という単独の自治体内で完結する珍しい川でもある。今回は愛知川河口から遠くない近江八幡市で、ひさご寿しを営まれている川西豪志さんにご同行をお願いした。

川西さんは、もちろんお店では海の魚も扱うが、琵琶湖の湖魚に強いこだわりをもって郷土料理をベースにした創造的な日本料理を提供されている。それでも「渓流魚は店では扱ったことがない」とおっしゃる。しかし、生態系の循環のもとである水を考えるときに、琵琶湖の源流部である渓流で育ったイワナに大きな関心を寄せられたので、今回の探訪となった。

愛知川上流の須谷川。

愛知川を遡り、半世紀以上も続く源流の養魚場を訪ねた

やや盛りを過ぎたホンシャクナゲの花。

愛知川上流域、東近江市にある池田養魚場の池田則之さんをお訪ねした。池田養魚場では、半世紀以上にわたってイワナを養殖しておられる。則之さんは、奥永源寺漁業協同組合の代表理事組合長だけではなく、滋賀県河川漁業共同組合連合会の副会長理事、一般社団法人・奥永源寺渓流の里の代表理事という要職も兼ねておられる。池田養魚場のあるのは、鈴鹿10座(※)のひとつである銚子ヶ口岳(標高1,076.8m)を源流とする愛知川の支流・須谷川である。

池田養魚場の養魚池。須谷川から直接引いた流水で魚を育てている。
養魚場で泳ぐイワナ。
溶存酸素を増やすための曝気水車。

池田養魚場では、植え込みのホンシャクナゲの花が最後の見頃を迎えていた。現在ではイワナだけではなく、アマゴの養殖も手掛けられている。またイワナとヤマメを養殖しているだけではなく、イワナの渓流釣りやアマゴの池釣りが可能で、釣った魚をその場でコンロで焼くのはもちろん、イワナ料理コースやバーベキューセットを提供するなど、奥永源寺の自然をゆったりと楽しむことができる施設になっている。春先には、コシアブラやコゴミなどの山菜天ぷらも人気だという。

成長度合いによってイワナは水槽を変えて育てられていた。魚たちの様子を観察する筆者と川西豪志さん。写真/編集部

※鈴鹿10座/東近江市が2015年、市政10年を記念して鈴鹿山脈の中から市内にある山を10座選定し、その普及と保全を目指している山々。現在、一般社団法人・鈴鹿10座エコツアーガイドクラブが活動している。

とくに表記のない写真は、すべて湯本貴和さんの撮影です。

著者画像

湯本貴和さん

1959年徳島県生まれ。日本モンキーセンター所長。京都大学名誉教授。理学博士。植物生態学を基礎に植物と動物の関係性を綿密に調査。アフリカ、東南アジア、南米の熱帯雨林を中心に探検調査は数知れず。総合地球環境学研究所教授、京都大学霊長類研究所教授・所長を務める。京大退官後も旅を続け、調査を続け、食への飽くなき追求を続けている。著書に『熱帯雨林』(岩波新書)、編著に『食卓から地球環境がみえる〜食と農の持続可能性』(昭和堂)などがある。日本初の“食と環境”を考える教育機関「日本フードスタディーズカレッジ 」の学長も務める。

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