裏庭の鍛冶小屋から、地球を株主にするまでに成長したパタゴニアの歴史 | アウトドアブランド 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

アウトドアブランド

2026.05.05

裏庭の鍛冶小屋から、地球を株主にするまでに成長したパタゴニアの歴史

裏庭の鍛冶小屋から、地球を株主にするまでに成長したパタゴニアの歴史
若きクライマーのイヴォン・シュイナードが立ち上げたパタゴニアは、彼の哲学をいまも貫く。モノ作りの素晴らしさに加え、地球の未来を考えたブランドであるこからこそ、私たちは惹かれるのだ。
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アウトドア界の神ブランド大辞典・パタゴニア

創業 :1973年
問い合わせ先:パタゴニア日本支社 カスタマーサービス TEL:0800-888-7447

1966

シュイナードイクイップメント創業

1973

アパレルブランド パタゴニア創設

1985

シンチラフリース登場

1985

売り上げの1%を環境団体に寄付

2022

地球を株主とし会社を寄付

企業利益を環境保護へ

パタゴニアの歴史は、企業の成長物語というより「ひとりのクライマーの価値観が社会に浸透していく過程」といったほうが近いだろう。
 
起点は1957年、若きクライマーのイヴォン・シュイナードが自宅の裏庭で鍛冶仕事を始めたところにある。当時のアメリカではクライミング人口は増えていたが、信頼できる登攀用具が存在しなかった。そこで彼は自作のピトン(岩に打ち込む金具)を作り、クライミングエリアを回って販売した。これが後に「シュイナード・イクイップメント」へ発展し、’60年代には米国最大のクライミングギアメーカーへと成長したのだ。
 
しかし’70年代、イヴォンは衝撃的な決断を下す。自分のピトンが岩壁を破壊していると気づき、ピトンの製造を中止。代わりに岩を傷つけない「クリーンクライミング」へと方向転換したのだ。企業が自社製品製造を倫理的理由でやめるという、極めて異例の出来事である。この時点で、後のパタゴニアの思想はすでに芽吹いていた。
 
同時期、スコットランドで購入したラグビーシャツを登攀に使ったことが転機となり「クライマーのための服」を作り始めた。そして’73年、ウェアブランド「パタゴニア」が誕生する。
 
その後、’80年代にパタゴニアはアウトドア史を変える革命を起こす。天然繊維中心だった当時、ポリエステルで作られたフェイクファーをヒントに、’77年に「パイル・ジャケット」を開発。’85年に試行錯誤の末に生み出したのが「シンチラ・フリース」である。軽量で暖かく、濡れても保温力を維持し、洗濯も容易。従来のウールセーターに代わる行動着として人気を獲得し、アウトドアの垣根を超えた世界的な大ヒットとなった。
 
’85年、売り上げの1%を環境保護に寄付する制度を開始。利益ではなく売り上げからの寄付という前例のない取り組みは、企業理念を象徴する行動だった。
 
また’90年代には急成長の反省から「無限の成長を目指さない」という企業哲学へ転換。オーガニックコットンへの全面移行、リサイクル素材、修理文化の推進など、環境負荷を減らす取り組みを次々と導入した。
 
そして2022年、シュイナード家は会社の所有権を地球環境のための信託へ移管。「地球を唯一の株主にする」と宣言した。企業利益を環境保護へ回す仕組みを完成させたのである。
 
裏庭の鍛冶小屋から始まった小さな道具作りは、こうしてアウトドア文化と環境思想を象徴する存在へ変わった。パタゴニアが「神ブランド」と呼ばれる理由は、製品の性能だけではない。企業の存在目的そのものを問い続けてきた歴史にある。

1957年
ピトン製造開始

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PHOTO CREDIT:©Tim Davis

イヴォン・シュイナードは自宅の裏庭に小さな炉を作り、クルマの板バネを再利用してピトンを鍛造し始めた。口コミで評判が広がりヨセミテで移動販売をする。

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PHOTO CREDIT:©2026 Patagonia,Inc.

鍛造時代の若きイヴォンは寝ても覚めても岩壁のことばかりを考えているシリアスクライマーだった。

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PHOTO CREDIT: ©2026 Patagonia,Inc.

’72年から岩壁を傷つけないクリーンクライミングへ方向転換し、岩の隙間に差し込むナッツの製造を開始。

1966年~
Chouinard Equipment

クライミング用具製造業を正式に法人化。後に北米最大メーカーへと成長するも’89年に倒産。社員が継承してBlackDiamondとなる。

1973年~
Great Pacific Iron Works

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カリフォルニア州ベンチュラに店舗兼本社をオープンし、登山用具とウェアの販売を開始。「太平洋鉄工所」というユーモラスな店舗名で愛された。

1973年~
patagonia

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アウトドアアパレルブランド「パタゴニア」創設。南米パタゴニアを由来とし、ロゴはイヴォンが登攀したフィッツロイ山の稜線をモチーフにした。

クライマーの大定番・フーディニシリーズの系譜

2002年

初代ドラゴンフライ・ジャケット。フーディニの前身でトンボの羽根のように薄いことからその名がついた。内ポケットにたくし込み小さく携行できた。

2005年

フーディニ・パンツ。2004年から製品名を「フーディニ」に変更。軽くてコンパクトに携行できることから各分野で人気が高まり、パンツも登場した。

2013年

これまでフーディニの生地には一定の通気性がありトレラン等には良かったが、高所登山では寒さを感じた。そこで2012年から防風性の高い仕様に変更。

2024年

フーディニ・スタッシュ1/2ジップ・プルオーバー。バリエーションが増え、フードを持たないミニマムなプルオーバーも登場。重量100gを切る超軽量。

クライマースピリットが息づくFREE WALL KIT 2026

発売年 2026年
現在の価格 ¥28,600
POINT ハーネスの下に着られるアノラックスタイル

左:フーディニ・ロック・ジャケット
  フーディニ・ロック・パンツ

中:R1 ウルトラライト・フーディ
  フリー・ウォール・パンツ

右:デュラブル・ダウン・パーカ
  フリー・ウォール・パック

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ビッグウォールクライミングを原点とするパタゴニアを象徴するキット。同社アンバサダーの要求をもとに設計された、最新6モデルで構成されている。テクニカルフリースのR1ウルトラライト、ハーネスの下に着用できるアノラック型フーディニ、岩壁との摩擦にも強いダウンパーカなどを採用。困難で長丁場のマルチピッチを想定しているが、各アイテムの高い機能性はあらゆるアウトドア用途に対応してくれる。

※構成/ホーボージュン 撮影/中村文隆

(BE-PAL 2026年4月号より)

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