足で登って出会った絶景。熊のいない千葉県鋸山で気軽に楽しむ産業遺産ハイキング | 山・ハイキング・クライミング 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

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2026.01.22

足で登って出会った絶景。熊のいない千葉県鋸山で気軽に楽しむ産業遺産ハイキング

足で登って出会った絶景。熊のいない千葉県鋸山で気軽に楽しむ産業遺産ハイキング
旅エッセイストの国井律子です。今回は2025年末、家族3人で出かけた鋸山ハイキング&車中泊旅をレポートします。
登山となるとつい気合いが入りますが、私のスタイルはあくまで気楽なハイキング。今回あえて熊鈴を持たずに出かけたのは、本州で唯一クマが生息しない千葉県の鋸山だからです。自分の足音と風の音だけを相棒に、ロープウェーが動き出す前の静かな時間帯を狙って、海抜0mから一気に標高329mへ。海越しの富士山もくっきり見えました。一歩ずつ、かつての職人たちが刻んだ歴史の跡をたどりながら、自分の足だけで登った先に出会える景色。そんな、ちょっと贅沢で自由な山歩きのお話です。
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ルート選びが運命の分かれ道?車力道を推す理由

地図
今回は海沿いの駐車場(S&Gと記載した場所)にクルマを置いてスタート。左回りで歩きました。

鋸山にはいくつかの登山ルートがありますが、徒歩で登るなら基本は「車力道」か「関東ふれあいの道」の2択。途中までは同じ道を進みますが、分岐点に来たら迷わず車力道を選ぶのがおすすめです。
というのも、関東ふれあいの道はとにかく階段が多くてハード。延々と続くステップに息を切らすより、なだらかな車力道のほうが断然歩きやすいのです。

JR浜金谷駅からのルートを画像とともに解説

浜金谷駅
のどかなJR内房線の浜金谷駅。

鋸山は電車でもアクセス可能で、全行程を徒歩で回れます。

鉄道橋
浜金谷駅から住宅街を抜け、鉄道橋をくぐると登山口へ。
分岐点
ここが分岐点。

分岐点では、関東ふれあいの道の階段が目に入りますが、ここはぐっとこらえて左へ。

車力道の表示
車力道方面へ向かいます。

コース上には案内板も多く、方向音痴の私でも安心でした。

この日は2025年の瀬、スキーキャンプに出かけている次男を除く家族3人で、キャンピングカーで車中泊をしてから出発しました。

トンネル
分岐の目印となる高速道路の高架。

しばらくは舗装された上り坂が続きますが、高速道路の高架が見えてきたら、トンネルをくぐらず左の山道へ。

ベンチ
あちこちにベンチがありました。

うれしいのは、絶景ポイントに、ベンチや地元の方々の手作りと思われるスマホスタンド(自撮り台)が、たくさん設置されていること。 三脚がなくても、ひとりハイキングでも、ちゃんと『私がここにいた証』が残せます。そんなさりげないおもてなしに、心がポッと温かくなりました。

「ゆるゆる」ハイキング道に刻まれた歴史

切通し
私たちが歩いた車力道は、かつて切り出した石を運び出すための道。

鋸山は江戸時代から昭和にかけて、良質な房州石の採石場として栄えました。山頂のギザギザした景観も、じつは石切りの跡なのです。

足元の石畳には、深い溝が平行に刻まれています。これは重い石を積んだ荷車を、女性たちが引いて運んだときにできた轍(わだち)だそう。そんな歴史を足裏で感じながら歩く時間は、ロープウェーでは味わえない贅沢です。

石畳の坂
石畳を踏みしめて進みます。

かつては靖国神社や早稲田大学の石垣にも使われていたという房州石。働く山としての役目を終えた現在は、自然と人工美が溶け合う産業遺産として、静かにハイカーを迎えてくれます。重い荷物を運ぶために作られた道なので、傾斜が緩やかなのもうれしいポイント。

東京湾ビュー
ところどころに景色の開けた場所があります。東京湾、そして対岸の三浦半島がよく見えました。

2021年に復活した猫丁場へ寄り道

猫丁場の看板
案内板が出ているので見逃さずに左へ入るのがポイント。

中腹まで来たら、ぜひ立ち寄りたいのが猫丁場(ねこちょうば)。
車力道の分岐から約100m。5分ほどで到着します。ここは長らく通行止めでしたが、地元の方々の尽力で、2021年春に再び歩けるようになったスポットです。

猫丁場
夫が指さしている先にあるものが、見えますか?
猫の彫刻
岩肌をよく見ると、かわいらしい猫の彫刻がありました。

昔の職人たちの遊び心が、時を越えて私たちの目の前に姿を現わしました。そんな背景を知ると、ひとつひとつの石がより愛おしく感じられます。

ハート型にくりぬかれた岩
近くには、岩がハート形にくり抜かれたハートの窓も。

ハートの窓は、鴨川市在住のアーチスト、飯田善郎ベンヤミン氏による作品です。

石切り場跡
登り進むと、あちこちに石切り場跡がありました。

石切り場跡を抜け、最後は階段を一気に登ります。ここが今回一番きつかったところです。

階段
この階段を登り切れば、いい景色が待っていますよ!

東京湾を望む展望台と名付けられたビュースポットから見る富士山

富士山ビュー
澄んだ冬空の下、富士山がくっきり姿を見せてくれました。

東京湾を望む展望台にはベンチもあり、開けています。ちょっとした休憩をするにも気持ちがいい場所です。

展望台
登り始めてから1時間足らずでこの景色。思わず「サイコー!」と声が出ました。

ちなみに、ここは山頂ではありません。せっかくなので、標高329.5mの鋸山山頂へも足を延ばしてみることにしました。

案内板
展望台へ行くルートの分岐点。

展望台から山頂までは、ゆるやかなアップダウンが10分ほど続きます。

鋸山山頂は意外と地味?

山頂
到着してみると、正直かなり地味な印象でした。でも「ちゃんと登った!」という達成感は十分にありました。

このまま進めば約90分で保田駅まで歩けるそう。山全体を歩いて巡れる鋸山が、やっぱり好きです。
下山は、関東ふれあいの道を通ります。さらに石切り場の見どころが続きます。道中の景色を写真でご紹介します。

観音洞窟

石切り場
名前の由来にもなった小さな観音様が刻まれているそう(現在は立ち入り禁止)。

階段状の掘り残しは崩落防止のため、といわれているそうです。すごい技術ですね。

岩舞台

機械
岩が舞台のような形状で切り残されているため、岩舞台と名付けられたそうです。

岩舞台では、昭和60年まで採石が続けられたとか。周辺には当時の機械が残されていました。錆び付き具合には、なんともいえない迫力がありました。

彫刻された石
岩舞台の壁面に刻まれた「安全第一」の文字。

昭和の職人たちの息遣いを感じるような文字のディテールから、そこが働く人の山だったことを容易に連想できます。

ロープウェーが動く前が狙い目

地獄のぞき
登山道から、地獄のぞきという名所が見えました。ヤッホー!

山道が賑やかになる前に、私たちは下山しました。静かな時間帯を満喫できた満足感と、ちょっとした優越感に包まれながら。
鋸山に登るなら、早めの時間から行動するのがおすすめです。

下山道
朝日を背中に浴びながら山道を下ります。

下山後のお楽しみは、笹生精肉店まつばや

まつばや
住宅街に漂う揚げ物の香りに導かれ、立ち寄った笹生精肉店まつばや。

まつばやでは、登山客向けに揚げ物を販売していて、揚げたてをその場でいただけます。ジューシーなコロッケを頬張る、下山後の至福のひとときです。

コロッケとソース
どうぞご自由にというスタイルの置きソースもうれしいです。

まつばやは、次々と登山客が訪れるのも納得の鋸山ハイカー御用達スポットでした。お店のお父さん、お母さんが、とても気さくでした。

笹生精肉店まつばや

  • 所在地:千葉県富津市金谷3869-15
  • 営業時間:8時~18時15分
  • 定休日:水曜

参考までに、今回の移動距離と旅費などをまとめてみました。

◎移動距離など

  • 出かけた日:2025年12月29日
  • 歩数:17,345歩
  • 歩行距離:10.7㎞

◎今回の旅費 ※( )内は支払方法

  • 往復の高速代(ETCカード):6,240円
  • 鋸南町のスーパーで購入した食材費~夕飯と翌日のランチ分(QR決済):6,534円
  • コンビニで買った朝食代:1,915円(QR決済)
  • コロッケ代(現金):330円
  • 飲料水(QR決済):108円
  • 合計15,127円(自動車の往復燃料代は別)
ランチ
下山後にキャンピングカーでいただいたランチ。

キャンピングカーに戻ったら車内でランチタイム。まずは前の晩に食べたキムチ鍋にラーメンを投入。さらに洗わずに食べられるサラダを数種類盛り合わせました。そんなランチを3人でシェア。

車内に冷蔵庫があるので、自宅から持参した最近お気に入りの足立醸造の糀味ドレッシングや原了郭の黒七味、八幡屋磯五郎の一味などで美味しくいただきました。

日常から、ふらっと抜け出せる、私だけの場所

筆者
自然だけではなく、歴史まで感じられる鋸山。

都心から約1時間30分、思い立ったらすぐ来られる距離に、とっても濃密な時間が待っています。ロープウェーを使わず、自分の足で歩く。静寂の中で絶景を味わい、最後はコロッケを食べながら笑い合う。そんなシンプルで贅沢なハイキングが、日常を少しだけ特別にしてくれました。

富津市観光協会

国井律子

旅エッセイスト

国内外の旅を綴るエッセイを中心に、日常の延長にある“ちょっと特別な旅”も提案。ソロ登山、2人の男児の母として家族とのキャンピングカー旅、自由で自分らしい旅の形を発信中!

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