今回は、ハーレーをトラックの荷台に積み、ユタ州から車でおよそ11時間ドライブしてイベントに参加した、20代の若者ライダーたちを取材しました。
初参加の2人を含む彼らの生の声といっしょに、年に一度サウスダコタ州の小さな町がハーレーで埋め尽くされる、バイク旅とキャンプが融合する魅力をたっぷりご紹介します。
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ハーレー愛好家が胸を高鳴らせる冒険の舞台
スタージスとは?
日本人にとって、「サウスダコタ=大統領の顔の山」というイメージが強い、アメリカ北中西部・サウスダコタ州。最も有名なランドマークは、ラシュモア山です。岩山に彫られた4人の大統領の巨大彫刻を、教科書やテレビで見た人もいるのではないでしょうか。
そのサウスダコタ州の西側に位置する山岳地帯に、小さな町「スタージス」があります。人口わずか7000人ほどのこの静かな町が、毎年8月になるといっきに姿を変えます。大陸各地から、ハーレーやツーリングバイクが続々と集まり、10日間だけ「バイクの町」が誕生するのです。その風景は、まるで大空の下に広がる巨大な夏フェス!
1938年に始まり、今では世界中から数十万人が訪れる「ライダーの聖地」として知られています。実際には、イベントは周辺の町にも広がりますが、この記事では分かりやすく「スタージス」と統一して紹介します。
スタージスへの出発を前にガレージでバイク整備
実は筆者の24歳の息子は、ストリートバイクからオフロードバイクまで、大のバイク好きです。自然な流れで、息子の友人たちもバイク好きのメカニック系ばかり。仲間同士でキャンプやツーリングへ行くときは、我が家のガレージが集合場所になります。

バイクに乗ることで、人生や日常に大きな影響をあたえてくれると語るのは、スタージス初参加の、息子の友人デイビッドです。ユタ州にある欧州バイクメーカーのショップで働いています。
「親友のほとんどは、バイクを通して出会ったのさ。仕事で嫌なことがあっても、バイクに乗れば全部忘れられるんだ。バイクは危険だからという理由で、父親に反対されてたんだけど、今は理解してくれて、天気さえ良ければ毎日バイクに乗ってるよ。ヒヤッとする瞬間も正直あるけど、それが逆にスリルで楽しいんだ。バンジージャンプとかと同じで、アドレナリンを感じられるからかもしれないね。」




キャンプ場と町中に鳴り響くハーレー独特の重低音
こうして息子とその友人たちを送り出し、約一週間後スタージスから帰って来た彼らを改めて取材しました。もちろん、まだイベントの余韻と興奮が冷めないうちに。
まず、SNSでバイクのインフルエンサーとして活躍するバグに、キャンプ場で一番印象に残ったことは? と聞いてみると……。
「夜遅くにバーンアウト(バイクを空転させて煙を出すスタント)をしたことさ。バーンアウトし過ぎて、タイヤがバースト(破裂)してしまったけどね。キャンプ場に“静かな時間”なんてなかったよ。テントに戻ったら、焼けたゴムの匂いで体じゅう覆われてたんだ。」

「100%また行きたい!キャンプ場に入った瞬間から、まるで別世界だったよ。数千人の人が自由に楽しんでいて、“人間観察”してるだけでも面白かったんだ。事前に“絶対期待以上の体験になる”と周りから言われてたけど、本当にその通りで、想像をはるかに超える楽しさだったよ。」
と語るのは、初参加だったデイビッドです。

バイク旅とキャンプを組み合わせることの魅力とは?
「シンプルに言うと、移動手段がそのままキャンプと結びついていたことかな。各自バイクがあるから自由に動けたし、もし誰かのバイクが壊れても予備のバイクがあったんだ。それにバイク文化って、とてもオープンで包容力があると思うんだ。実際、友達のバイクを修理したりして、トラブルをその場で仲間と解決したんだ。」
と、みんな口をそろえて話してくれました。
確かに、筆者が夫婦でRVキャンプへ行くとき、オフロード車を持って行かなければ、RVトレーラーという快適な住まいの空間はあっても、移動手段はけん引力のある大きなトラックタイプのクルマのみ。すると小回りがきかないので、小さな町だと移動が不便になるのです。



尖った岩が立ち並ぶ、山の中の絶景ロード「ニードルズ・ハイウェイ」
ツーリングでどこが一番印象に残ったかという質問に対して、全員が即答した場所は、「ニードルズ・ハイウェイ」。サウスダコタ州のブラックヒルズ国立森林の中を通るハイウェイです。
細く尖った花崗岩の柱が林立する絶景エリアで、道路自体が景勝ルート。岩の間を縫うように走るくねくね道路、車一台ギリギリの細いトンネル、急に目の前に現れる尖峰など、走るたびに景色が変わる「冒険感」あふれる道なのです。岩の迫力、景観の変化、森林の匂いが一体となって、ライダーにはたまならい体験だとか。

ワイルドだけじゃない! エンジン音がつなぐ仲間との絆
「初めて参加した仲間たちが感動してる姿を見るのが、一番嬉しかったよ。互いに同じ瞬間を見て“今の見た?”って、目を合わせて笑い合うことが何度もあってさ。とにかく笑いが絶えなかったんだ。お酒も多かったけど、ケンカなんて全く無くて、みんな最高に楽しんでたよ。」
と語ってくれたのは、スタージスに何度も参加しているバグ。

派手なイメージが先行しがちなイベントですが、実際のスタージスは、老若男女がバイクを通じてアメリカの自然と自由を味わう「大人の冒険の場」なのかもしれません。
最後に日本のBE-PAL.net読者のみなさんへ、スタージス初参加のデイビッドとドゥレイからステキなメッセージをもらいました。
「ぜひスタージスに行ってみて!バイクを持ってなくても、一度はその場の雰囲気を体験してほしいな。日本でもチョッパー(カスタムバイク)やスポーツバイクの文化があるでしょ。実際、会場でも日本から来た人を見かけたんだ。年齢や人種を超えて、みんなが楽しんでいるのが素晴らしいのさ!」
「スタージス・モーターサイクル・ラリ―」の公式サイト
https://sturgis.com/








