
昨年末にフランスのアルプス山脈、シャモニー・モンブランへスキー旅行に行きました。その際、フランス最大の氷河「メール・ド・グラース」に毎年掘られるという氷の洞窟を訪問してきました。
温暖化により30年後には見られなくなるとも言われるこの氷河。美しい洞窟体験だけでなく、気候変動の影響を実感できる場所でもありました。

かわいい列車と新しいゴンドラの旅
フランス語で「氷の海」という意味のメール・ド・グラースは、19世紀にはヨーロッパ中から登山家や旅行者が訪れたという人気の観光地です。

メール・ド・グラース氷河へは、観光拠点、シャモニーの駅から赤い2両編成のモンタンヴェール登山鉄道で行くことができます。鉄道の終点、モンタンヴェール駅までの所要時間は約20分。シャモニーの駅の標高が1035m、モンタンヴェールの駅が1913mとのことなので、約900メートルほど山間を上ることになります。道中は、雪山の景色が楽しめました。

さて、氷の洞窟へ行くには、この駅でゴンドラに乗り換えて渓谷を1760メートルの地点まで下っていきます。

ゴンドラは2024年の2月に新しくなった10人乗りのガラス張りのもの。所要時間は2分程度とのことですが、かなりワクワクします。

そして、さらにゴンドラの下の駅から、今度は金属製の階段を下りていきます。新しいゴンドラになってから歩く距離が縮小され、階段は170段ほどのようです。
多くの観光客と共に歩くことになりますが、見晴らしがよく、ついつい立ち止まって写真を撮りたくなります。滑らないように気をつけて!
失われつつある、美しい氷の世界へ

メール・ド・グラース氷河の氷の洞窟は、毎年、氷河の厚い氷壁をトンネルのように掘って作る人工的なもの。毎年氷河が動くため、洞窟も毎年作り直され、その年ごとに形が変わるそうです。

内部にはカーペットやライトが設置されていて安全に見ることができます。また、氷河氷の椅子やテーブル、虫の彫刻、小部屋などがあり、写真撮影スポットとしても人気を集めていました。
氷河は近年、毎年6メーターもの厚みを失っているそうですが、実際に氷がどれくらい溶けたのか、また歴史による変化や温暖化に関する情報の展示もあり、地球の変化を、美しい氷の中という、まさに現場で知ることができます。

温暖化によって氷河が後退し、モンタンヴェール駅から氷の洞窟までの距離はどんどん延びています。

雪があったので、私はそれほど気にならなかったのですが、夏場はモンタンヴェール駅から氷の洞窟までの間は、かつての「氷の海」の代わりに灰色の山肌が剥き出しになっていて、巨大氷河が消滅していくという現実を目の当たりにすることになるんだとか。実際、この辺りは、4、5年で40メートルほど、氷河が溶けてしまったそうです。
来た道を引き返す帰路は、きれいな氷の洞窟を見にいく! という行きのワクワク感よりも、温暖化の危機をひしひしと感じることになるかもしれません。
私たちは冬場にでかけましたが、氷河の融解と再掘削作業のため洞窟が一時閉鎖される秋の数か月以外は一年を通して洞窟を訪れることができます。氷河がなくなってしまう前に、足を伸ばしてみては?