南東アラスカのケチカンから水上飛行機に乗って、誰もいない湖へ! | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2025.10.18

    南東アラスカのケチカンから水上飛行機に乗って、誰もいない湖へ!

    南東アラスカのケチカンから水上飛行機に乗って、誰もいない湖へ!
    米国アラスカ州の南東部にある街、ケチカン。著述家・写真家の山本高樹が、この街とその周辺を訪れて取材した時のフォトレポートを、全4回に分けてお届けしています。第2回は、ケチカンの街からは水上飛行機でしかアクセスできない、深い森の中にある湖への旅を紹介します。
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    森と海に囲まれた南東アラスカの町、ケチカンを行く 第2回

    星野道夫さんも勧めた、南東アラスカでの旅の方法

    アラスカの自然と野生動物を生涯にわたって撮影し続けた写真家の星野道夫さんの著書『長い旅の途上』には、南東アラスカで森林局の山小屋に滞在する旅の方法が紹介されています。

    南東アラスカに広がる世界最大規模の温帯雨林、トンガス国有林の中には、森林局が管理する150軒以上の無人の山小屋が点在していて、予約が空いていれば、誰でも1日数十ドル程度の料金で泊まることができます。現在は、Web経由での予約も可能です。

    ただ、それらの山小屋の大半は、道路も通じていない深い森の奥や、湖や入江のほとり、無人島などにあります。現地まで行き来するための小型船や水上飛行機は、別途手配しなければなりません。

    今回のケチカンへの旅で僕が計画していたのは、街から北東に45キロほど離れた場所にあるマンザニータ・レイクという湖のほとりにある、一軒の山小屋での滞在でした。そこに2、3日滞在しながら、湖や周辺の風景、そしてあわよくば、何かしらの野生動物の姿を撮影したいと考えていたのです。

    ケチカンからマンザニータ・レイクまで往復する水上飛行機は、タクワン・エアーという会社に依頼して手配してもらうことにしました(昨今の円安や燃油高の影響もあって、料金はかなり高くつきました……)。

    出発日の早朝、食料や水など、重い荷物を抱えて発着場に到着したまではよかったのですが、それから6時間ほども待機するはめに。マンザニータ・レイクに着水するまでのアプローチで、濃霧が消えない場所があったためです。聞くと、この一帯の各スポットには無人の観測カメラが設置されていて、天候や霧の状況をリアルタイムでモニタリングできるのだそうです。有視界飛行で飛ぶ水上飛行機の安全を確保するための重要なシステムなのだとか。

    昼頃になって、ようやく現地の霧が晴れたとの情報が。急いで荷物を積み込み、いざ、離水。ゆらり、と翼を傾けながら、水上飛行機は高度を上げていきます。

    ケチカンからマンザニータ・レイクまでの飛行時間は、ほんの数十分ほど。長靴で浅瀬に降り、荷物を砂州まで運び出したところで、僕を乗せてきてくれた水上飛行機は、向きを変えてケチカンへと戻っていきました。

    この湖の周辺数十キロには、誰もいません。僕は完全に、一人ぼっちになりました。

    湖のほとりに建つ山小屋、マンザニータ・レイク・キャビン

    湖の岸辺から続く細い小径の途中、木の幹に小さな看板が留められていました。和訳すると、「マンザニータ・レイク・キャビン ミスティー・フィヨルド国定公園 トンガス国有林」とあります。マンザニータ・レイク・キャビンというのが、僕がこれからしばらく泊まる山小屋の名前です。

    マンザニータ・レイク・キャビンの外観。とてもこぢんまりとした、でもなんとなく、良い雰囲気のある小屋です。湖の岸辺から数十メートルほど入った場所に建っていました。当たり前ですが、電気や水道、ガスなどは、もちろんなし。携帯電話の電波もまったく入りません。

    山小屋からさらに数十メートルほど奥に入った場所に、ぽつんと建てられていたトイレ。ドアなどはなく、あっけらかんと丸見えです。まあ、このあたりに、泊り客以外の人間はいるはずもないので、こういうトイレでも何の問題もないのですが。

    山小屋の中には、小ぶりな薪ストーブが一つ据えられていて、煙突が屋根から突き出ていました。僕が訪れた時期(9月初旬)はさほど冷え込まなかったので、このストーブのお世話になることはありませんでした。

    山小屋の中には、木製の二段ベッドが2つと、テーブルが1つ。こうした山小屋での標準的なしつらえです。ベッドは硬い板張りなので、持参したエアマットレスを敷き、その上にスリーシーズン対応の寝袋を広げて寝ることにしました。

    小屋の片隅には、小さな戸棚とカウンターがあったので、僕はそこに調理器具や持参した食料や水を置いて、食事やお茶の支度に使うことにしました。もちろん、食料の包装紙などのゴミの類は、一つ残らず回収して持ち帰ります。

    到着した日の晩ごはん。フリーズドライの白飯とふりかけ、フリーズドライの味噌汁、瓶詰めのスモークサーモン、パック詰めのフルーツ。朝昼晩と間食を含め、滞在中の食料は、あらかじめかなり周到に考えて準備したのですが、想定される食事の回数ぴったりの量ではなく、少し余裕を持たせて用意しました。というのも、雨の多いこの地域では、急な悪天候で、水上飛行機が予定通りに迎えに来れなくなる可能性もあるからです。

    こうして、誰もいない森の中の湖での、2泊3日の滞在が始まりました。

    山本 高樹さん

    著述家・編集者・写真家

    1969年岡山県生まれ、早稲田大学第一文学部卒。2007年から約1年半の間、インド北部の山岳地帯、ラダックとその周辺地域に長期滞在して取材を敢行。以来、この地方での取材をライフワークとしながら、世界各地を取材で飛び回る日々を送っている。著書『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』(雷鳥社)で第6回「斎藤茂太賞」を受賞。近著に『雪豹の大地 スピティ、冬に生きる』(雷鳥社)、『流離人(さすらいびと)のノート』(金子書房)など。

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