初心者からベテランまで、多くの人々を惹きつけてやまない百名山。
全座登頂を目指す方もいるほどの美しい山々は、経験者であれば楽に登れてしまう山から、上級者向けの山まであります。
本記事では、日本百名山の基礎知識から、登山の難易度、初心者から上級者までレベル別におすすめの登山ルートまでを徹底解説します。
自分に合った山を見つけ、安全に楽しく挑戦するための「完全保存版」として、活用してください。
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CONTENTS
日本百名山とは?初心者が知っておきたい基礎知識
そもそも「百名山」はどうやって選ばれた?

日本百名山とは、作家であり登山家でもあった深田久弥(ふかだ きゅうや)が、著書「日本百名山」の中で選定し紹介した100座の山々のことです。
深田久弥が品の高さ、その山が持つ美しさ、個性・歴史・個性・標高の目安などを考慮して選定した100座で、単に標高が高い山を選ぶのではなく、日本の山岳文化と自然の美しさを代表する山々が選ばれています。
百名山は誰でも登れる?登山難易度の幅
百名山は「体力があれば登れる山」から「体力と合わせて技術も求められる山」まであり、登山難易度は初心者から上級者まで非常に幅が広いです。
登れる可能性があるのは春から秋の雪のない時期ですが、積雪になると登山口までのアプローチすら困難になる山もあります。
百名山の難易度を評価するポイント
登山時間・標高差・技術レベル・アクセスの観点で評価

百名山の難易度の評価ポイントは、全ての山で測ることができるポイントを元に評価されます。
長いほど体力的な負担が増し、難易度が上がる登山時間・登山口から山頂までの高いほど、短時間でも体力の消耗が激しくなる標高差・危険箇所の通過や道迷いのリスクなどの技術レベルなどがあります。
また、登山口までの移動時間やその交通手段も見逃せません。登山口までの交通手段が不便な山は、登頂までの難易度を引き上げる要因ともいえます。
天候・季節による難易度の変化にも注意
山の難易度は登る時期、当日の天候によっても変動します。
特に雨や降雪という、外に出るのも億劫になる時は難易度は大きく高まります。視界不良・足元の不安定さ・落雷などのリスクは登頂どころか下山も困難にさせます。
このほか強風の危険性も見逃せません。
百名山の中でも標高が高く森林限界を越える山の場合は、風による転倒や滑落、体温低下のリスクが高まります。
登山の適期は春から秋がおすすめで、そのなかでも天候が安定している時期を狙うのが良いです。
百名山のなかでも難易度が高い山に登る場合は、こうした安定期に登れると安心です。
遭難事例に見る「難しい山」の傾向

各山域によってその傾向はさまざまですが、特に多いのは道迷い遭難といわれています。
標高が低い山でも、アプローチが長く分岐が多い山、あまり登られていないルートでは踏み跡も見えなくなることは珍しくありません。そうして体力が尽きてくると冷静な判断ができなくなるため、標高が低い山とはいえ遭難リスクは高まります。
さらに岩稜帯は、技術難易度が一気に上ることになります。
まとめると「所要時間が長い」「分岐が多い」「岩場で避難できる場所がない」といったポイントが増えると、遭難リスクが高い難しい山と考えて良いでしょう。
こうした難しい山を登るためには、とにもかくにも体力をつけることが重要です。
初心者におすすめ!登りやすい百名山ランキング
ここで紹介する山は、初心者におすすめとしておりますが、実際に登山する際は安全のための装備や体調管理は徹底しましょう。先述したように、天候によっても難易度は変わります。
アクセス良好&日帰り可能な山5選

①筑波山(茨城県)
標高1,000m未満でロープウェイ・ケーブルカーが利用できるのが魅力。関東平野を一望できる眺望の良さもポイントです。
②霧ヶ峰(長野県)
整備された遊歩道にマイカーでのアクセスが良好な山で、貴重な植物や眺望に恵まれています。
③大菩薩嶺(山梨県)
登山口までバスとマイカーアクセス良好。山頂付近は稜線歩きで富士山の絶景が楽しめます。
④天城山(静岡県)
ルートが明瞭でアップダウンも比較的緩やか。ルートが豊富でブナやシャクナゲの原生林を歩けます。
⑤開聞岳(鹿児島県)
登山口までのアクセスはマイカーが便利。岩場もあるが危険箇所が少なく展望にも恵まれています。
絶景が楽しめるのに難易度低めの山3選

①瑞牆山(みずがきやま)(山梨県)
巨大な花崗岩の岩峰で、日帰り可能なコースタイム登れます。頂上では同じく日本百名山の金峰山方面の見事な眺望が待っています。
②金峰山(きんぷさん)(山梨県・長野県)
五丈岩と呼ばれる象徴的な岩がある森林限界を越えた山。大弛峠から登れば日帰り可能圏内。難易度を抑えて登頂できます。
③蓼科山(たてしなやま)(長野県)
八ヶ岳エリアにある見事な独立峰です。技術的難易度は低く登りやすく日帰り可能です。山頂からは360度の大展望があり、信州エリアの山々が望めます。
初心者が最初に目指したい百名山ルート例

はじめにおすすめしたい百名山は、山梨県に位置する大菩薩嶺です。
明瞭な登山道・ほとんどが緩やかな勾配・日帰り可能・引き込まれる眺望と、百名山の名を持つに相応しいルートが待っています。
スタートは上日川峠。大菩薩峠を目指して緩やかに標高を上げていきます。大菩薩峠以降はずっと見ていられる景色と共に大菩薩嶺を目指します。
大菩薩嶺の山頂は樹林帯の中にあり静かに佇んでいます。山頂周辺の眺望の良いところで一休みしたら周回ルートで上日川峠に戻ります。
中級者向け!登りごたえのある百名山
累積標高・ルート長が魅力の山5選

①丹沢山(神奈川県)
神奈川県に位置する標高1,000m前後の山が連なる山域が丹沢です。日本百名山では山域全体を選定しているようですが、百名山として登頂する際は丹沢山を目指すことが多いです。
山域の中心部に位置するため日帰りでは健脚向きで、山頂の眺望こそありませんが、ルート上にある主脈と呼ばれる稜線は一見の価値ありです。
②富士山(静岡県・山梨県)
日本最高峰の富士山も日本百名山に選ばれています。豊富なルートがありますが、長時間歩く御殿場ルートや麓からの馬返しルートなど、計画次第で体力を必要とする山に変貌します。
③甲武信ヶ岳(山梨・埼玉・長野)
3県の境に位置する甲武信ヶ岳は、1泊以上が最適なルートが多い体力を問われる山です。山頂付近には甲武信小屋があり、甲武信ヶ岳が属する奥秩父の山深さを味わいながら山に没入できます。
④谷川岳(群馬県・新潟県)
厳冬期は厳しい冬山に変わる谷川岳。雪のない時期なら登頂可能圏内。登りごたえのあるルートが幾つかあり、体力が問われる山です。眺望は無論優れており、双耳峰のためそれぞれの景色が楽しめます。
⑤:赤岳(長野県・山梨県)
八ヶ岳連峰の最高峰の赤岳。日帰り可能圏内の山ですが、南八ヶ岳エリアを象徴する岩場が連続し、序盤の歩行メインのルートと合わせ、初心者の場合1泊が適切です。岩場を越えた先にある山頂からは、八ヶ岳の山々や周辺山域の眺望に優れています。
縦走や山小屋泊を楽しめる中級者向けルート

中級者向けルートでおすすめは、硫黄岳・横岳を経て赤岳を目指す南八ヶ岳縦走ルート。
ルート上にある赤岳鉱泉で1泊、翌日は稜線に上がって3座を登頂、下山します。
ダイナミックな景色を見ながら歩く稜線は、登山者として成長したことを実感できる充実感があります。岩場が連続する稜線なので、十分な準備を持って臨みましょう。
上級者向け!高難度の百名山ランキング
登山技術・経験が求められる難関5選

①劔岳(富山県)
日本屈指の技術度を求められるのが、富山県に位置する劔岳。峻険なルートを経てたどり着く山頂から望む景色は、忘れることのできない感動を与えてくれます。
②笠ヶ岳(岐阜県)
日本三大急登に数えられる難ルートを持つ笠ヶ岳。笠新道と呼ばれるルートは体力と気力を奪い、心をへし折られそうになります。笠新道を越えて稜線に出れば、特徴的な形の笠ヶ岳山頂や美しい植物に癒やされます。
③奥穂高岳(長野県・岐阜県)
日本第3位の標高を持つのが、北アルプスに位置する奥穂高岳。山頂に近づくにつれ厳しくなるルートは体力と技術力が求められ、登頂には2泊以上が適当です。山頂に達すれば北アルプスの山々が広がり、日本が誇る大自然に立つ喜びを実感できます。
④塩見岳(長野県・静岡県)
南アルプスに属する塩見岳。大半のルートが長時間を要する南アルプス深部に位置しており、山頂に至るまでは相応の体力が求められます。山頂からは山深い塩見岳ならではの圧巻の景色が広がります。
⑤黒部五郎岳(富山県・岐阜県)
北アルプス最奥に位置する黒部五郎岳。アプローチの長さから相応の計画性が求められ、十分な準備と経験が必要です。山頂に近づくほど山に浸っていく感覚は、日本の山岳を代表する北アルプスならではです。
残雪・岩場・ルート不明瞭など要注意ポイント

怪我や遭難の恐れが高まるシチュエーションが、残雪や岩場・不明瞭なルートです。
残雪は、雪上と夏道のミックスで歩行しづらく気温が上がれば雪が溶けてより歩きづらくなります。
また、岩場は油断して転倒すれば行動不能になるほどの怪我を負うリスクが高く、一度雨が降れば難易度は一気に上がります。
不明瞭なルートを突破するにはコンパスや地形図を見て現在地を判断する力が求められます。
スマートフォンアプリで現在地の特定は昔より楽になりましたが、電子デバイスに依存しすぎると万が一の際に現在地を特定できなくなります。
要注意ポイント突破に大事なのは、自らで安全なルートを判断できる知識と技術、そして体力です。
また進むだけでなく、ときには「これ以上進むと危ない」という撤退の判断も大切です。
上級者向けでも挑戦したくなる魅力
アプローチが長く岩場が連続したりと、体力と技術力が求められる上級者向けの百名山。
難易度が高い山は「いつか登る山」として目標に据え、経験を積むほど「登れることが分かってくる」山になってきます。
厳しい山になればなるほど、その美しさだけでなく自分との対話や限界に挑むなど、さまざまな要素を含んできます。
上級者向きの山の魅力とは、まさにその「厳しさ」自体にあるのです。







