
ヒガンバナの特徴
ヒガンバナの開花期
ヒガンバナは、毎年9月中旬から下旬にかけて一斉に咲き誇ります。特に秋分の日前後、お彼岸の時期と重なることから、その名がつきました。咲く時期が安定しており、年による気温や日照条件の違いがあっても、ほぼ同じタイミングで開花するのが特徴です。
開花期間は1週間から10日ほどと短いため、満開の瞬間を見逃さないようにしましょう。たくさん植えると、地面から炎のように赤い花が立ち上がる、見ごたえのある景色を楽しめます。
ヒガンバナとリコリスの違いは?
園芸の世界では、ヒガンバナとリコリスは混同されがちですが、実はヒガンバナはリコリスの一種です。リコリスはヒガンバナ属に属する植物全体を指し、その中のひとつが、赤い花を咲かせるヒガンバナというわけです。
リコリスにはさまざまな種類があり、花の色や咲く時期、葉の出るタイミングが品種によって異なります。白やピンク、黄色の花を咲かせる品種もあり、同じヒガンバナ属でもそれぞれ異なる特徴を持っています。似ているようで違いのある花々を見比べるのも、楽しみ方のひとつです。
ヒガンバナの種類

シロバナマンジュシャゲ
名前の通り、白い花を咲かせる品種です。赤いヒガンバナと比べると、柔らかく上品な雰囲気があり、墓地や寺院などでもよく見られます。諸説ありますが、黄色いショウキズイセンとヒガンバナの自然交雑によって生まれたとされ、咲く時期は赤いヒガンバナより少し遅めです。
日向でも半日陰でもよく育ち、丈夫で扱いやすいのが魅力です。赤いヒガンバナと並べて植えると、開花のタイミングや色の違いによる美しいコントラストが楽しめます。群生させると、白い絨毯のような幻想的な景観が広がります。
キツネノカミソリ
朱色からオレンジ色の鮮やかな花を咲かせる品種で、ヒガンバナの仲間です。7月下旬から8月中旬にかけて咲くため、ヒガンバナよりも一足早く楽しむことができます。湿り気のある林の中や、山あいの半日陰などに自然に生えていることもあります。
葉の形が細く尖っており、カミソリを連想させることからキツネノカミソリと名付けられました。花が咲く頃には葉は姿を消しており、花だけが目立つ姿も特徴的です。夏の風景に彩りを加える山野草としても人気です。
ショウキズイセン
鮮やかな黄色の花が特徴で、赤いヒガンバナよりも少し早く、8月末から9月上旬にかけて開花します。黄色い花びらが放射状に広がる姿はとても華やかで、庭を明るく彩ってくれます。温暖な地域では自然に自生していることもあり、丈夫で育てやすい種類です。
赤いヒガンバナと一緒に植えると、赤と黄色のコントラストが生まれ、より印象的な花壇になります。球根は自然に分かれて増えていくため、長く楽しめるのも嬉しいポイントです。
ナツズイセン
淡いピンクから藤色がかった、涼しげでやさしい印象の花を咲かせる品種です。名前にはスイセンとありますが、水仙とは別の植物で、ヒガンバナの仲間です。開花は7月から8月ごろで、真夏に咲く数少ない球根植物のひとつです。
花と葉が別々の時期に出るという点もヒガンバナと共通しており、花が終わったあとに葉が伸びてきます。半日陰でも育てやすく、群生させることで涼しげな夏の風景を演出できます。
ヒガンバナの育て方

栽培環境選び
ヒガンバナは丈夫で育てやすい植物ですが、花を美しく咲かせるには場所選びがポイントになります。秋から春に日当たりがよい場所が理想的です。光をしっかり受けることで、葉がしっかり育ち、球根に栄養が蓄えられるからです。
夏の間は地上部が枯れて休眠するため、多少の乾燥にも耐えられます。水はけの良い土壌を好むため、湿気の多い場所では高植えや鉢植えが適しています。斜面に植えると、自然な広がりと立体感が出て、景観としても美しくなります。
水やりについて
庭に植える場合、特別な水やりは不要で、雨だけで十分に育ちます。ヒガンバナは過湿を嫌うため、特に夏の休眠期には水を控えましょう。水はけの悪い場所では、球根が腐るおそれがあるため注意が必要です。
鉢植えでは、秋から春にかけて葉が出ている時期だけ、土の表面が乾いたら水を与えます。受け皿に水をためず、鉢の底から水が流れ出る程度が適量です。湿気の多い季節は水のやりすぎに気をつけましょう。
用土(鉢植え)
鉢植えにする場合は、水はけと通気性のよい土を選ぶのがポイントです。赤玉土と腐葉土を7:3の割合で混ぜた土や、市販の草花用培養土でも問題ありません。軽石やパーライトを少し加えると、さらに排水性が高まります。
鉢の底には必ず鉢底石を敷いて、根腐れを防ぎましょう。鉢はやや深めのものを選ぶと、球根がしっかり根を張ることができます。乾燥を防ぐために表面をバークチップなどでマルチングするのも効果的です。
植えつけ
植えつけは、地上部が枯れて球根が休眠に入る8月から9月が適しています。球根の先端が少しだけ土から顔を出すような浅植えが基本です。深植えにすると、翌年の開花に影響が出ることがあるため注意しましょう。
球根と球根の間隔は10〜15cm程度空けて植えると、風通しがよくなり病気の予防にもなります。植えつけたあとは軽く水を与え、根が定着するまで様子を見守りましょう。
注意したい作業
ヒガンバナの葉が枯れても、すぐに取り除かず自然に任せるのが基本です。光合成で球根に養分を蓄えるため、早く取り除いてしまうと翌年の花が咲かないこともあります。
また、ヒガンバナの球根や茎には毒成分が含まれています。特に球根には強い毒があるため、小さなお子さんやペットがいるご家庭では植える場所に注意が必要です。掘り上げや分球の際には、手袋を着用するのが安心です。
ふやし方
ヒガンバナは年を重ねるごとに球根が分かれて自然に増えていきます。花が咲かなくなったり、葉の勢いがなくなったと感じたら、分球のタイミングかもしれません。
分球は10月から12月ごろの花が終わったあとに行うのが適期です。掘り上げた球根は、大きさや傷みの有無を確認しながら選別し、健康な球根を植え直しましょう。子球も分けて植えることで、数年後にはしっかり花を咲かせるようになります。
ヒガンバナの育て方を知り美しく咲かせよう

ヒガンバナは特別な手入れをしなくても丈夫に育つ花ですが、環境や植え方に少し気を配ることで、より美しく開花させることができます。種類も豊富で、花色の違いを楽しみながら、毎年の季節の移ろいを感じてみましょう。庭のアクセントや秋の風物詩として、ぜひ育ててみてください。