
私たち夫婦は、まったくの車中泊初心者からスタートし、2023年1月に中古のキャンピングカーでヨーロッパを周遊する旅に出ました。旅を始める前に、ネットや経験者の情報を参考に「これがあれば安心かな?」という装備を一通りそろえましたが、実際に走り始めてみると、暮らしの中で本当に必要なものは少しずつ違って見えてくるものでした。
今回は、2年半にわたる旅の実体験をもとに、走りながらアップグレードしてきた装備や、暮らしの中で“本当に必要だ”と実感したアイテムを紹介します。他のバンライファーから学んだ便利グッズなど、リアルな気づきとともにお届けします。
バンライフ初期の装備と課題/理想と現実のギャップ

旅の出発前、私たちはまだ一度も車中泊をしたことがなく、実際の暮らしを想像しながら、ネットや経験者の情報を頼りに「これがあれば大丈夫!」と思える装備をそろえて出発しました。
けれど、旅が始まるとすぐに、想像だけではわからなかった“現実”が次々と目の前に現れてきました。
特に痛感したのは電力不足です。私たちはパソコンを使ったリモートワークをしながら旅をしているため、インターネットやパソコンを充電するための電気確保は必須です。高速で安定した接続を得るために衛星アンテナを導入しているのですが、これが意外と電力を消費してしまいます。
晴天の多い夏は問題なくても、冬や悪天候が続く日はソーラーパネルがほとんど機能せず、電気の確保に苦労しました。また、移動中の振動による家具や装備の故障、防犯やセキュリティ面での不安など、出発前にはあまり深く考えていなかった問題にも次々と直面しました。
春夏秋冬すべての季節を実際に経験しながら、「やっぱりこれは必要だった」と実感してから取り付けた装備が多くあります。旅を重ねることで、自分たちのスタイルに本当に合った装備が少しずつ見えてきて、バンライフの理想と現実のギャップを埋めるように、装備を見直し、アップグレードを重ねてきました。
2年半のキャンピングカー旅でアップグレードした装備6選
1. 折りたたみ式ソーラーパネル&ポータブル電源

天気が悪い日や日照時間の短い冬場などでは、車載ソーラーパネルだけでは電力が不足しがちで、仕事に支障まで出るようになっていました。そこで導入したのが、BLUETTI(ブルーティー)の折りたたみ式のソーラーパネルとポータブル電源のセットです。
折りたたみ式のソーラーパネルは持ち運び可能で、自由自在に太陽の向きに合わせて移動でき、角度や位置を調整することで、限られた日差しもしっかりキャッチ。効率よく日差しを取り込めるのがメリットです。
ポータブル電源は、連続出力1,800W・容量1,152Whとパワフルで、ドライヤーやヘアーアイロン、電子レンジなどの消費電力の高い電化製品も使用でき、車中泊での快適度が一気にアップしました。さらに、車外にも持ち運べるので、自然の中でのコーヒータイムや、野外でのちょっとした作業にも大活躍。いざというときの災害対策としても安心です。
何より嬉しいのは、面倒な配線作業や取り付け工事が不要なこと。開封してすぐに使えるので、「これから車中泊を始めてみたい」という方にもぴったりのアイテムだと思います。
2. ウォーターポンプのアキュムレータータンク

キャンピングカー生活で意外と悩まされるのが、水まわりのトラブル。特にウォーターポンプは、移動時の振動や気温差の影響を受けやすく、思っている以上にデリケートな部分です。実際、私たちもこれまでに2回もウォーターポンプが故障して交換する羽目になりました。
そこで新しく取り付けたのが、アキュムレータータンクというパーツです。ウォーターポンプの出力側に接続する事で、ポンプの圧力変動を緩和し、水流を安定させてくれます。簡単に言うと、ポンプの「働きすぎ」を防いでくれるクッションのような役割をしてくれます。無駄な作動回数が減ることで、ポンプの負担が軽くなり、結果として寿命が延び、故障のリスクも大幅に減少します。取り付けはとてもシンプルで、専門知識のない私たちでもスムーズに作業ができました。
設置後は、ポンプの動作音が静かになり、水圧も安定。何より嬉しいのは、それ以来一度もポンプが故障していないということです。たった一つの小さな部品が、旅のストレスを大きく減らしてくれました。
3. リチウムバッテリー
旅を始める前に、安価な90Vの鉛サブバッテリーを2つ取り付けていました。しかし、実際に旅を始めてみると、容量の面で物足りなさを感じるようになり、さらに1年半という短い使用期間にも関わらず、寿命の限界も見えてきました。
そこで思い切って、LiFePO4(リン酸鉄リチウム)の100Ahリチウムバッテリーにアップグレード。この1台で、鉛バッテリー2台分以上の容量を持ちながら、重量は大幅に軽くなり、車の負担も減らせました。しかも、深放電にも強く、一般的な鉛バッテリーと比べて充放電サイクルが非常に多いので、10年近く使えるという長寿命も嬉しいポイントです。
確かに初期費用は高額でしたが、そのパフォーマンスと快適さには大満足。電気の持ちが格段に良くなり、長時間の電力使用が可能に。電気切れを心配するストレスが大幅に減りました。ケチらずに「最初から高性能なリチウムバッテリーを選んでいればよかった!」と心から思うほどの効果でした。
4. 太陽光発電のMPPT型チャージコントローラー

鉛バッテリーからリチウムバッテリーに交換した際、本来であればソーラーパネルのチャージコントローラーもリチウム対応のものに替える必要があります。ただ、当初は元から車に付いていた従来型のPWM式コントローラーでも一応使えていたため、ひとまずそのまま旅を続けていました。
ところが、半年ほど経った頃から徐々に不調が目立つように。満充電前にも関わらずソーラーパネルからの充電が止まったり、過充電気味になると保護モードが作動してしまったりと、明らかな誤作動が起き始めました。
そこで、ようやくリチウム対応のMPPT型のチャージコントローラーに交換することにしました。取り付けは驚くほど簡単で、数本の配線を差し替えるだけ。正直「これで本当に変わるのかな…?」と半信半疑でしたが、導入後は発電効率が明らかにアップ。曇り空や朝夕など日照の弱い時間帯でも、より多くの電力をしっかり取り込めるようになりました。
たった一つの部品を正しく交換しただけで、ここまで違いが出るとは思わず、私たち自身も驚きでした。やはり、機器はその性能をきちんと発揮できる“適切な組み合わせ”があってこそだと改めて実感しました。
5. ポータブル発電機

どれだけ高性能なソーラーパネルや大容量バッテリーを積んでいても、「太陽が出ない日」はどうしようもありません。特に曇りや雨が続く日、そして日照時間の短い冬場には、発電が追いつかず、電力がどんどん減っていきます。
私たちも、何度も「電気が足りない…」と悩まされ、作業ができず仕事に支障が出たり、バッテリー節約のために暖房を我慢したり、充電のために予定していたルートを変えることもありました。
そんなとき、頼りになるのが発電機です。発電機とは、ガソリンなどの燃料を使って、電力をつくり出せる装置で、スイッチ一つでしっかり発電してくれるので、ソーラーパネルや外部電源が使えない場面で大活用します。天候に左右されずに電気が使えるようになり、旅の自由度やルートがぐんとアップ。
もちろん、使用時の騒音や排気、取り扱いの安全面には注意が必要ですが、正しく管理すれば、まさに「いざというときの救世主」。長旅を続けるなら、一台持っていて損はない装備だと実感しています。
6. ダブルドアロック

車中泊旅で気になるのがセキュリティ面です。とくに都市部や人通りの多い場所では、外部からの侵入リスクがゼロとは言いきれません。キャンピングカーは「移動する家」でもあり、車内には貴重品や生活用品など盗られたくない大事なものがいっぱいです。
そこで取り入れたのが、ドアに後付けするダブルロック。ヨーロッパでは、多くのキャンピングカーが追加のセキュリティロックを付けており、そうした光景も参考にしつつ、「自分たちもやっておこう」と安全面を重視して設置を決意しました。
取り付けには車体に穴を開ける必要があり、最初はかなりドキドキしましたが、DIYで慎重に作業し、素人の私たちでも無事に取り付けることができました。このロックのおかげで、就寝中や車を離れるときの安心感が格段にアップ。安全面の対策はやっぱり重要なので、「防犯は気にしすぎなくらいがちょうどいい」と実感するようになりました。
旅を続けながら、少しずつ整えていけばいい
もちろん、車中泊のスタイルは人それぞれ。感じる不便や必要とする装備も、旅の形によって大きく異なります。車のサイズやタイプ(バンなのかキャンピングカーなのか)、旅をしている地域や気候、そして季節や旅の期間によっても、「本当に必要なもの」はまったく変わってくるのです。だからこそ、誰かの装備がそのまま自分に合うとは限りません。
今回ご紹介した装備は、私たちが実際に旅をしてみて、必要に迫られたり、他の旅人との交流の中でヒントをもらったりしながら、少しずつアップグレードしてきたものばかりです。
装備の見直しは、単なる快適性の向上だけでなく、「自分たちの旅や暮らしのスタイルを見つめ直すいい機会」でもあります。無理に最初から揃えずに、必要が生まれたときに、少しずつ自分たちにフィットする旅の形で整えていくのも大切だと感じました。