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神奈川出身の山岳ライターが教える初心者向けの山5選
神奈川県には、低山かつ駅近にも関わらず、絶景を楽しめる場所が多くあるんです。初心者でも楽しめるハイキングスポットを神奈川県出身の自然・山岳ライターの大寺岳まるさんに教えてもらいました。

浅間山

まずは、浅間山を登っていきます。標高は196mです。
山頂には高い木が多いため展望はありませんが、木々の間から見える富士山がこの先に待っている絶景の期待値を上げてくれます。
市街地を一望できる構図をうっすらと確認ができるため、ワクワクが止まりません。
ただし、入口から浅間山までの道のりは意外と傾斜が強いです。序盤から急登との闘いになりますので、ここで疲れすぎないように息の持つペースで登りましょう。山頂には休憩できるスペースもあります。
権現山

続いては、権現山。標高は243mで、弘法山公園の最高峰です。
富士山も市街地の景色も望める優れた山頂景色で、そこまでの道のりは「森林セラピーロード」なる生理学的に癒しの効果が実証された、山道となる非常に優れた山です。※秦野市公式ホームページより。

山頂には展望台、芝生やテーブルなどが整備されており、お弁当を食べたり料理をしたりなど非常に多くの楽しみ方ができます。

権現山の展望台から見える絶景は、富士山や秦野市内の市街地を見渡せる素晴らしいものです。
右手に西丹沢、左手に箱根の山々、中央に富士山を眺めることができます。
弘法山

次は弘法山です。標高は235mです。
平安時代、弘法大師がこの山で修行をしていたことから弘法山と呼ばれるようになったと言われています。
山頂には弘法大師像や大きな鐘が。

また、ここには「乳の井戸」と呼ばれる廃井戸が存在します。
この井戸から白く濁った水が汲まれ、その水を赤ちゃんを持った母親が飲むと母乳がよく出るようになったと伝えられ名づけられました。※秦野市公式ホームページより。

山頂の景色は申し分なく、相模湾にいたるまで市街地の景色を見渡すことができます。
晴れていれば中央右手に江ノ島、中央左手に小さく横浜ランドマークタワーも見ることができます。

浅間山から弘法山へ行く道のりはかなり整備されており、道中にはまっすぐ伸びた開けた道が存在します。その道は馬場道と呼ばれ、昔は現地の農民が草競馬を楽しむ場所でした。※秦野市発行「秦野市弘法山公園利活用方針(案)」より。

この道中にも富士山を眺める好スポットがあるなど、道のりも非常に楽しめる山です。
吾妻山

最後は、吾妻山です。標高は125m。
これまでの3つの山に比べて最も標高が低い山にも関わらず、相模湾まで見渡すことができます。

弘法山からの道のりでは善波という峠を1つ超えるため、アップダウンがそれまでよりも激しくなりますが、豊かな自然と山中の静けさを感じられることでしょう。

駅から駅まで歩けるこの縦走コースは、アクセスのよさや危険度の少なさから非常に人気です。
また、筆者的には縦走後の温泉も楽しみのひとつとなっています。疲れた身体にしみる縦走後の温泉はいつもと違う感覚です。
低山でも非常に楽しめる弘法山公園・吾妻山コース、ぜひとも足を運んでみてください。
金時山

神奈川県の温泉郷としても知られる箱根。そこには、日本三百名山に数えられる山が存在します。それは天下の秀峰、金時山です。
温泉のあるところに火山あり。金時山は、大昔に存在した火山の大噴火によって作られた外輪山のひとつ。大迫力のカルデラや、勇ましくそびえる富士山を真正面から眺められる山頂は、天下の秀峰に恥じない美しさです。
今回はそんな金時山を、初心者におすすめ最短ルートを含め紹介していきます。
金時山は神奈川県足柄下郡箱根町に位置し、標高は1,213mです。
箱根の外輪山のひとつで、神奈川県と静岡県の県境にそびえています。山頂景色のよさと山道の美しさが高い評価をされており、日本三百名山にも選ばれています。
登山口から山頂までの道も長くなく、危険箇所も山頂付近以外ほとんど無い初心者向けの山と言えます。

金時山は周辺の温泉を含め、数えきれないほど魅力がありますが、特筆すべきは山頂からの景色です。
金時山が位置する場所や、箱根が歩んできた火山活動の歴史によって、以下の2つの絶景が山頂から見ることができます。
大昔から度重なる大爆発を起こしてきた箱根には、カルデラと呼ばれる地形が作られています。
カルデラとは、爆発が起きた火山に空洞ができ、その部分が陥没してできた凹んだ地形のことです。
現在その地域は仙石原と名付けられ、多くの温泉施設やゴルフ場など観光地として人気を博しています。

金時山は箱根の最北。神奈川県と静岡県の県境に位置していることから、富士山の姿を見るのに非常に適した山頂となっています。
そのため、晴れているときは富士山を麓から全て丸ごと見ることができるのです!

金時山の山頂へいたるまでの選択肢はいくつかありますが、今回私がおすすめしたいのは金時見晴パーキングから登るコース。
駐車場から山頂まで1時間と、コースタイムは非常に短いです。さらに危険箇所もほとんど無く、登山初心者や無理せず頂上まで登りたい方にはもってこいです。
※コースタイムは神奈川県公式ホームページを参考にしています。
情報を集めてしっかり計画を立てれば、誰でも登ることのできるコースとなっています。

笹の中を歩く幻想的な道をまずは歩きます。
空の青さと相まって、非常に美しく気持ちのいい山道です。
かなり整備が行き届いており、分岐には真新しい道標も立っています。

中盤からは背中に煙をもくもくとあげる大涌谷と、その隣には仙石原のカルデラも控えているため、振り返れば絶景という条件で登ることができます。
傾斜も高くなりきつくなってくると思いますので、立ち止まって絶景を見ながら息を整えましょう。
頑張って登り、山頂に到達すれば、先ほど紹介した絶景を拝むことができますよ。

注意点として、このコースでは登山口となる金時見晴駐車場から、山頂までの道中にトイレがありません。
一番近い場所でも仙石原まで下りないといけないので、駐車場に入る前に必ずどこかでトイレを済ませておくことが賢い選択です。
山頂にはトイレがありますが、維持管理のために使用者は100円を支払う必要があります。小銭の携帯を忘れないようにしましょう。
登山をするうえで、トイレ事情を調べておくことは重要ポイントの一つなので覚えておきましょう。
☆☆☆
金時山周辺には寄るべきスポットが点在しています。
温泉施設やススキだらけの高原、美術館やカフェなど観光名所がたくさん!
途方もなく長い火山の歴史が生んだ絶景と観光資源。金時山ではその両方を満喫することができます。
一度訪れてみてはいかがでしょうか。
1時間半でもエンジョイできる!日帰りハイキングコースを歩く
予定のない週末やふと思いついたときなど気軽な気分でできるのが、日帰りハイキング。1日でも大満足できるおすすめのコースを紹介します。
鎌倉の天園ハイキングコース

本格的なアウトドアシーズンが到来。しっかりと計画を立てて出かけるのもいいですが、思いついたときに気の向くまま出かけるような、手軽なアウトドアも魅力ですよね。
そこで今回は、神奈川を代表する観光地、鎌倉でのハイキングを紹介します。
鎌倉の北側から東側に連なる、鎌倉アルプスにある、天園(てんえん)ハイキングコースが舞台です。
実際に筆者も歩いてみましたが、自然豊かで距離が程よく、下山後の楽しみもあり、鎌倉を丸ごと堪能できる魅力満載のコースでした。首都圏にお住まいの方は、ぜひ散策してみてください。
天園ハイキングコースは全長約5.5km。1時間半~2時間ほどで楽しめる、手軽なコースです。しかしながら、歩きごたえは十分。
今回は、実際に筆者が歩いたコースをお伝えしますが、天園ハイキングコースには複数の入り口およびルートがあるので、その日の気分やプランに合わせてチョイスすることもできます。
なお、天園とはハイキングコースの途中にあるビューポイントのことを指します。
そこでははるか昔から、鎌倉の街並みや太平洋のほか、相模・武蔵・伊豆・上総・下総・安房の六国を見渡すことができたといい、六国峠と呼ばれて親しまれてきました。
明治~大正時代の軍人・東郷平八郎もこの地を愛でており、「天国の園に遊ぶよう」と例えたことが、天園と呼ばれる由来になったそう。地名の由来を知ると、その地でのハイキングがより楽しく感じられるようになります。

まず筆者が降り立ったのは、JR横須賀線の北鎌倉駅。駅からしばらく歩くと、明月院通りに出ます。
今回は、明月院通りからハイキングコース入口を目指して進みます。
道中ではおしゃれな建築物や、この時期ならではの深い緑をまとった木々が出迎えてくれます。

しばらく行くと、明月院側のハイキングコース入口が見えてきました。ここから天園ハイキングの始まりです。
ハイキングコースの入口から、まずは勝上献展望台を目指します。
道はしっかりと整備されており、案内板もあるので迷うことはないでしょう。

進んでいくと、別の入口からの道との合流地点に到着しました。
ここまで来たら、勝上献展望台まであと少し。足元には大きな石などもあったので、注意しながら進みましょう。

最初の目的地である勝上献展望台に到着しました。
天気がいい時は、富士山や相模湾を一望できる絶景ポイント。今回はやや雲が多く、富士山までは見えませんでしたが、それでも開放感のある景色を楽しめました。
案内板に従い、さらに天園方向へ歩みを進めます。
勝上献から大平山まではおよそ2.1km。時間にして30分程度です。

大平山へ行く道はアップダウンも激しく、変化に富んだハイキングを楽しめます。
手軽とは言いつつも、なかなかの運動量で汗ばむほどでした。

また、途中には鎌倉のパワースポットのひとつである十王岩があります。
コースよりも一段高台にある大きな岩が目印で、3体の仏像が彫られており、一見の価値があります。
そのまましばらく歩くと大平山に到着しました。

大平山から下りてすぐのところが、このハイキングコースの名前となっている天園のビューポイント。開けた広場のようになっています。
見晴らしもよく、近くには公衆便所があるため、休憩スポットとして利用するのもおすすめ。筆者が行ったときにも、他のハイカーたちがこちらで休憩していました。
天園ビューポイントでの休憩が終わったら、瑞泉寺を目指して再び山道を歩きます。
途中に分岐がありますが、案内板に従って瑞泉寺入口へ進みましょう。

自然を満喫しながら歩くこと約30分。瑞泉寺入口に到着しました。天園ハイキングコースはここで終了です。
今回は下山した後、さらに鎌倉駅方面を目指しました。
近くからバスも出ていますが、あえて鎌倉の街並みを眺めながら歩くのがおすすめ。
鎌倉には随所に観光名所や歴史を感じられるスポットがあるので、ハイキングとは違った楽しみがありますよ。

カフェやレストランも豊富にあり、休憩場所に困ることはありません。

筆者はとあるカフェに入り、ハイキング後のビールを楽しみました。このエリアでは、お店に入るほか、食べ歩きを楽しむこともできます。

また、鎌倉駅を中心に、おしゃれな洋服や小物などを扱うショップもたくさんあります。
センス抜群なアウトドアショップもあり、行くだけでも楽しめること間違いなし。ハイキング後に散策がてら、ちょっと寄ってみるのもおすすめです。
首都圏からアクセスしやすい鎌倉。そこにある天園ハイキングコースを紹介しました。
手軽に楽しむことができる一方で、しっかりと登山の要素もある、非常に魅力的なコースでした。下山後には、お店めぐりの楽しみも待っています。
休日の計画がまだの方。天園ハイキングコースを通って鎌倉をまるごと楽しむプランを選択肢に入れてみてはいかがでしょうか?
市や地域の尽力のおかげで安全に楽しめることに感謝し、ごみは必ず持ち帰るなど、マナーを守って出かけましょう。
「塔ノ岳」表尾根コース

続いては、神奈川県が全国の登山者に誇る山、丹沢大山国定公園に属する塔ノ岳。
関東屈指の人気で知られるこの山は、豊かな自然と壮大な景色で多くの登山者を魅了してきました。
そんな塔ノ岳を、絶景を見ることができるおすすめコースと一緒に紹介します。

丹沢山を主峰とした神奈川県の山岳地帯である丹沢大山国定公園で、最も人気のある山がこの塔ノ岳。標高は1,491mです。
日本百名山のひとつでもある丹沢山まで登るには、少なくとも1泊する必要があるため、経由地点である塔ノ岳まで来て下山する日帰り登山者が多いです。
ちなみに塔ノ岳は日帰りできる、といっても往復にはかなり時間を要します。
しっかりとした計画を立てなければならない、中級者向けの山といえるでしょう。

塔ノ岳を訪れる場合、主峰の丹沢山まで行かず満足できるのかと、心配になるかもしれません。しかし塔ノ岳は息を呑むほど美しい、素晴らしい山頂景色を持つことでも有名です。
晴れた日には、富士山を正面にして広がる山岳地帯を見渡すことができます。
日本が山岳の国だとわかる壮大な風景に、心打たれること間違いなし。人生に一度は見るべき絶景です!
まるで映画のような風景が、あなたの心を包み込んでくれるでしょう。
塔ノ岳に登るには様々なコースがありますが、筆者がおすすめしたいのは表尾根コースです。
ヤビツ峠バス停から始まるこのコース最大の特徴は、複数の頂上を経由する縦走コースだという点。
縦走を行なうことからアップダウンも激しく、神奈川県秦野市観光協会によるマップでは往復で8時間程度とされており、相応の体力が必要です。
ただ、そんな険しい道のりなのですが、挑むだけの見返りがこのコースには存在するのです。

都内から日帰りで登ることができ、かつ美しい稜線を見ることができる山は多くないです。
塔ノ岳の表尾根コースはそれを実現している、数少ないコースです。
二ノ塔・三ノ塔・烏尾山・行者岳・政次郎ノ頭・新大日・木ノ大日・塔ノ岳と複数のピークを越え、ところどころで美しい稜線を横目に、絶景を堪能しながら登ることができます。
きついアップダウンの道のりと対照的に、目の前には癒される絶景が広がる、登山の醍醐味を凝縮した魅力あるコースです!

毎年多くの登山者が訪れることから、登山道はかなり整備の行き届いた状態です。
ところどころで現われる木道は足の負担をやわらげ、安心感を与えてくれます。
木道は被写体としても大活躍!塔ノ岳の絶景と木道のセットアップは映えること間違いないです。

塔ノ岳や丹沢山をはじめとする周辺の山塊は、人間が生まれるはるか昔に日本列島に誕生しています。
神奈川県自然環境保全センターによれば、一帯は1700万年前に海底火山として生まれ、プレートの移動に伴って伊豆半島と衝突し隆起していってつくられたそうです。
丹沢の各所でオウムガイやサンゴの化石が発見されているのが、その証拠。
そのため、途方もない年月での風化は激しく、所々で崩落の現場を見ることもできます。
これもまた塔ノ岳の魅力として紹介したい要素の一つです。

表尾根コースには鎖場と呼ばれる、鎖を用いて厳しい傾斜を登る箇所が存在します。
登るには体力と集中力が必要です。滑らないよう、手袋を事前に準備しておきましょう。
丹沢はツキノワグマの生息域として有名な土地であり、彼らに鉢合わせないようにする準備が必要です。
神奈川県のホームページでは遭遇を避けるため、熊鈴やラジオの装備を推奨しています。
またツキノワグマの出没情報を収集し、目撃情報などがある地域には近寄らない判断や、ツキノワグマの行動が活発になる朝夕や霧が出ている時の登山を避ける判断も必要です。
一般的に臆病な性格で、自ら人を襲いに来ることは考えにくいツキノワグマ。
出会わないための工夫や準備をして、鉢合わせてしまう状況を作らないことが大切です。
また、表尾根コース上にはいくつかのトイレが存在するため、おなかの緩い筆者も安心して登っています。
水洗ではなく微生物の力を借りて分解していくタイプのトイレなので、ペーパーは便器に捨てられません。
これらのトイレは全て有料で100円かかります。
絶対にペーパーとそれを入れるためのビニール袋、小銭を忘れないようにしましょう!

いかがでしたか?
長い道のりでアップダウンも激しい塔ノ岳までの道のりですが、壮大な絶景や豊かな自然の面白みを感じることができます。
山頂での山岳風景は、あなたの心を癒してくれるはずです。
さぁ事前準備を万全に、ぜひとも神奈川県が誇る塔ノ岳にトライしてみましょう!
アオバトも見られる!山登り愛好家激押しの夏に登りたい山
四季でそれぞれ違った楽しみ方をできるのもハイキングの魅力です。山登り愛好家が勧める夏に歩きたい山とは――。
高麗山

高麗山山頂から湘南平という景勝地までプチ縦走でき、湘南平からは富士山を望むことができます。道中に現われる県指定史跡の横穴墓地も見応えあり。夏になると照ヶ崎にアオバトが飛来するので、ぜひ海岸にも寄ってみてください。
冬キャンプも登山も楽しめる贅沢ハイキングコース
冬のハイキングには、一面に広がる銀世界に魅入ったり雪上を歩く音に聞き入ったりと、さまざまな楽しみ方ができます。冬にピッタリのハイキングコースを紹介します。
山北町と高松山を巡る旅

こんにちは、里山トラベラーの宮本です。登山やキャンプをする前日(当日)の移動って億劫ではありませんか?
特に登山では朝早くから山に登り昼過ぎには下山、もしくは宿泊地に到着していないと危険を伴うリスクがあります。そのため前泊をして登山計画を立てることがよくあります。
しかし、仕事帰りの夜中に移動することが年々辛くなってきている自分がいるのです。
今回はそんな前泊についてのお話と週末の限られた期間でも十分楽しむことができる里山トラベルをご紹介します。神奈川県山北町を巡る1泊2日の山旅です。

登山の前泊はみなさんどうされていますか?「車中泊をする」「山の近くのホテル(民宿)に泊まる」など夜中に出発して次の日アクセスしやすい場所で寝るのが一般的ですね。
筆者も遠い山に行く時は、夜に出発して登山口周辺の駐車場で車内泊(仮眠)をしてから山に登るケースが多いです。
ただ、これを毎回繰り返すと結構しんどいものです。
例えば金曜日。仕事が終わった後、ご飯を食べて、パッキングして出発となると夜の22~23時ぐらいになってしまい、そこから3~4時間かけて目的の登山口へ向かいます。途中の休憩を入れると到着するのが朝3時近くになるのです。
そのあと2~3時間ぐらい仮眠して登山を開始するのですが、昼過ぎぐらいになるとぐったりしてしまう…なんてことも。たまに大掛かりな登山をする分にはいいのですが、登山に行く度にこの計画は少し億劫になってしまいます。
そこで里山好きな筆者は、ほとんどが日帰り登山になるので、無理して予定を詰め込む必要がないことに気づきました。土曜日は移動とキャンプを楽しみ、日曜日は山歩きと里巡りをするようになっていったのです。
これが筆者のスタイルにフィットし、キャンプを繰り返すうちに道具も揃ってきたので、前泊だけど本格的なキャンプも楽しみたいと今の形になりました。

キャンプといっても次の日は山に登るため、大きなテントや道具はこの計画に合いません。それでも登山用テントだけでは少し物足りなさを感じてしまうので、筆者は「ZANE ARTS」のテントを愛用しています。
寝るときだけコンパクトな登山用テントを使用するカンガルースタイルです。
ごはんを作る道具も基本的には山で使うバーナーやコッフェルです。バーナーはひとつでは時間がかかるため、2つ用意しています。
テーブルとイスは居心地のよさを優先してキャンプ仕様のものを選んでいます。キャンプに欠かせない焚き火台は、まだ小さいものしかないためこれから揃える予定です。何かおすすめがありましたら教えてください。

神奈川県西部に位置するこの山北町は、山梨県と静岡県の2つの県に隣接する自然豊かな町です。丹沢大山国定公園と県立自然公園などの山岳地帯が地域の9割を占めており、登山やハイキングはもちろん、丹沢湖やユーシン渓谷などの観光地として親しまれています。
一日目の泊まり場となるキャンプ場は、丹沢湖近くにある通年営業している「ひだまりの里オートキャンプ場」を利用しました。ほとんどのキャンプ場が11月で営業休止してしまうので通年営業はありがたいですね。(12月1日~3月31日は金土日祝日のみ営業になります)
キャンプ場は山北町が管理していて、テントサイトは電源サイト、芝サイト、茶畑サイトと大きく3つに分かれています。近辺には野菜園やテニスコートがあり、管理棟には売店やシャワー室など充実した設備が整っています。

東京都品川区と提携しており山北町と品川区に住所がある方は料金割引があります。品川区の会社に勤めている方も対象になるそうですよ。
「トイレがすごく綺麗」
同行した妻のこの一言が印象的で、不便さを楽しむのもまた一興ですが、トイレがきれいに超したことはないですね。トイレは管理棟の中と離れに1つあり、どちらも水洗でとてもきれいでした。
詳しい情報や予約の際は下記ホームページにてご確認ください。
営業時間:4月1日~11月31日 8:30~17:00(時間外は留守電)、12月1日~3月31日 金土日祝日のみ営業

キャンプと言えばカレーということで、今回の夜ごはんはカレーにしました。といっても具材を切ってグツグツ煮込んだものではなく、お湯で温めるレトルトカレーです。
ご飯はメスティンとバーナーを使って炊き、カレーだけでは味気ないのでスーパーで買ったカニクリームコロッケをトッピング。並行してもう一つのバーナーでカット野菜にコンソメの素を入れるだけの「あったかほかほか野菜スープ」を作りました。
お酒も少し飲み、まだ寒すぎない秋の夜に、ひとときの幸せを感じながら眠りにつきます。空は曇りでしたが、切れ間から見える星がすごく綺麗でした。

5時に起床して朝食を作り始めます。まだ誰も起きていない静けさと霧がかった朝のキャンプ場が個人的に好きです。
朝食は、食パン、目玉焼き、ウインナー、サラダの「THE・朝食」というメニュー。目玉焼きはアルミのコッフェルでは上手く焼けないなと反省しつつ、清々しい朝を過ごします。
のんびりした後、早々にテントを片づけてこの日のメインになる高松山へ向かいます。

丹沢大山国定公園に属する高松山は山北町と松田町にある標高801mの山です。
歩きやすいコースと頂上の見晴らしのよさから、多くのハイカーに親しまれています。
同じ山域にある大野山には過去2回登ったことがありますが、高松山は今回が初めてでしたので、前日から胸を高鳴らせていました。
キャンプ場から高松山へは車で移動して、登山口よりもう少し先にある「尺里峠」に車を停めました。ほんの数台しか停められない小さな駐車場です。混雑時にはご注意ください。
駐車場に着くとスーツを着た方が複数人いらっしゃいました。
「式典が終わったところだよ」
何やらイベントがあったようです。後日知ったのですが「第六天」再建の経緯を記した案内板の除幕式が訪れた際に行われたそうです。
尺里峠は通称「第六天」と呼ばれており、旧来第六天を司る御堂がこの地に建てられていたことが由来だそう。
「第六天」と聞くとどうしても第六天魔王の織田信長を想像しますが、怖いイメージではなく、「第六天」とは火災、盗難等を除き、さらに家内安全、五穀豊穣の功徳を招来する神霊である…と案内板に記されていました。
こうした歴的背景を知ることは山歩きに深みが増し面白く感じます。

尺里峠から高松山への道は歩きやすく迷うところも危険な箇所もありません。登りにくい所に階段が整備されているのをみると、その地域の有志の方への感謝が溢れてきます。
約40分ぐらいで頂上に辿りつくと思わず「うおー!」と叫びました。広々した頂上からは美しい丹沢の山々を見渡すことができ、その奥にドーンとそびえ立つ日本一の霊峰「富士山」がくっきり見えたのです。

感無量とはこのことを言うのだろうと心に刻み、スーパーで調達したカップ麺とおにぎりを食して高松山を後にしました。

高松山の下山後に車で山北町巡りを開始します。リサーチのときに気になっていた河村城跡に行くことにしました。
神奈川県の城といえば北条家、そのほとんどが豊臣秀吉の小田原征伐で廃城になっているので恐らく河村城もそうだろうと思い調べてみるとやはりそのとおりで、予測が当たって嬉しく思う反面、どこか寂しい気持ちも沸いてきます。
河村城跡は平安時代末期に当時このあたりを治めていた河村氏の居城として建てられ、数々の戦の舞台になった山城です。
河村城跡はハイキングコースとしても親しまれ「美しい日本の歩きたくなるみち500選」に「河村城址と洒水の滝へのみち」が選定されています。

駐車場から15分ぐらいにある本丸跡地まで歩きました。跡地周辺は風が気持ち良い広場になっており、山北の町並を眺めることができます。
時間に余裕があれば「洒水の滝」に足を運びたかったのですが、今回は本丸跡地までとしました。

この旅の最後は山北駅近くにある「やまきたさくらカフェ」のソフトクリームで締めることにしました。ここのソフトクリームは大野山山頂付近にある「薫る牧場」の牛の生乳で作っているそう。濃厚な味わいの中にある甘みが本日の旅の疲れを癒してくれます。

古民家風なお店は居心地も良く、飲食だけではなく雑貨も販売しており、女性客や大野山登山の帰りらしきハイカーで賑わっていました。
■やまきたさくらカフェ
住所:神奈川県足柄上郡山北町山北2597-10
TEL:0465-25-0016
営業時間:11:00~17:00
定休日:毎週水曜日

山北町には過去2回大野山を登ったことがあるため、訪れたのは今回で3回目です。大野山の登山帰りは駅までの道を歩いた程度でしたので、今回のように他の場所を巡ったのは初めてです。
本来なら3~4日かけて山と地域を歩きたいところですが、週末しか時間がないとなかなか難しいですね。それでも旅を小分けにして何度も訪れることで、知識や体験が蓄積され旅そのものがアップデートされていき、味わい深いものになっていきます。
丹沢湖周辺にはキャンプ場も多数あり、洒水の滝や中川温泉などまだまだ巡りたいスポットがたくさんありますので、また訪れたいです。登山される方も前泊はキャンプ場でのんびり過ごし、次の日山歩きをするという計画を立ててみてはいかがでしょうか。
<今回のコース>
【1日目】ひだまりの里オートキャンプ場【2日目】尺里峠→高松山→尺里峠(往復約1時間40分※休憩除く)→河村城跡→やまきたさくらカフェ