カナダのロングトレイルで出会ったハイカーの名は「カナダ」…! | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2017.03.21

    カナダのロングトレイルで出会ったハイカーの名は「カナダ」…!

    【その先のアパラチアン・トレイルへVol.11】

    プラスターロックの有料キャンプ場に身を寄せた僕は、残りの区間にハイウエイ歩きが無いかチェックしました。
    少なくても、ここからアメリカン・ボーダーまではない様子。

    なんとも納得のいかない状況でしたが、アメリカ国境が近いせいかようやく英語が通じる環境に少しホットしていました。

    朝目覚め、少し離れたトイレへ行くと、同じようにテントを張るハイカーの姿を発見。

    年配のハイカーで、彼の名は「カナダ」でした。
    彼は、カナダのブリティッシュコロンビア州に住んでいるそうで、2009年にアパラチアン・トレイルを踏破したハイカーでした。仕事をリタイヤしたハイカーで、宿に泊まり続ける歩き方をしているそう。

    彼はニューブラウンズウィック州から歩きはじめ、マウントカタディンを目指しているそうで、同じ方向へ向かうセクション・ハイカーとの出会いは初めてでした。そして、カナダと僕との2人旅の始まりでした。

    カナダもやはりハイウエイ歩きに危険を感じ、回避するために町に滞在。ヒッチハイクで歩いたポイントに戻り、夕方ヒッチハイクをして、宿に戻り翌日またヒッチハイクしたポイントに戻り、夕方に宿に戻るを繰り返して歩いていたそうでした。

    〇アメリカンボーダーエリア
    舗装路・ダートロードのミックスしたルート。カナダからの入国でしたが、今回は手続きに2時間ほど要しました。
    インターナショナル・アパラチアン・トレイルのハイカーが少ないのか、ボーダーサービスの人もトレイルのルートがどこにあるか分らない様子。国境線はATVのルートのようでしたが、すでに藪。いくつかの湿地帯を通過し、川を渡り、またダートロード舗装路を繰り返す道のり。

    アメリカンボーダーへ

    カナダ・アメリカの国境線を歩く

    カナダ、アメリカの国境ライン。

    OLYMPUS DIGITAL CAMERA

    入り組んだ国境線。

     

    〇マーズヒルエリア
    舗装路歩きから、ATVルートをホールトン近くまで歩く道のり。このATVルートに唯一のシェルターがありました。

    〇ホールトンエリア
    ホールトンまでは、ダートロードですが、ホールトン以降、バスクター州立公園の入り口までの約100kmは舗装路でした。

     

    僕らは、キャンプを共にし、プラスターロック、マーズヒル、ホールトンと3つの町でルームシェアをしました。
    資金があまりない僕にカナダとルームシェアをすることでキャンプ場ではなく、フカフカのベットに寝られるいい機会を作ってくれたのでした。

    カナダとは、常に一緒に歩き、休憩も一緒。足を痛めていた僕にとっては丁度いいペースだったのかもしれません。
    多くの時間を共に過ごす中で、ハイウエイからほど近いATVルートでのキャンプ、シェルターでの宿泊では、夜中に酔っぱらいの若者からの奇声を浴びたり、瓶や缶を投げつけられる事にも遭遇しました。
    アクセスの良すぎる民家に近いルートだからなのか・・・・。僕らは、テントの中でこの状況をただやり過ごすしかありませんでした。

    そして、ホールトンから続く長いハイウエイと舗装路が続くエリアを前に、僕とカナダは随分話し合いを重ねました。

    僕は、もうこの長いハイウエイを歩くつもりはありませんでした。ニューブラウンズウィック州・メイン州を歩き、文明社会の中を歩く事についていろいろ考え、悩みました。
    夜間の若者の奇行、ハイウエイの水場のなさ、私有地の多さ、路肩の少なさ、やはり車道は人間が歩くようにはできていないのです。

    トレイルを伝える人間としてこのハイウエイを歩き、今後日本からトレイルを歩きにくる人を危険にさらしていいのだろうか? と考えていました。
    僕が歩けば、きっと後から歩きに来るハイカーはハイウエイを歩かなくてはならないと考えると思います。また、ハイウエイ脇でテントを張りながら歩けば、きっと後から来る人達もそうするに違いありません。

    だから、僕は今回ハイウエイを歩かない。カナダにはそう伝えました。

    カナダは、ニューブラウンズウィック州を歩いたように、宿に泊まりながら同じように歩く予定を立てていたようでした。

    この計画は、私の計画より1週間長くなり、さらに毎日宿泊所に泊まらなくてはいけません。なにより、そこまでして歩く意味があるとは思えませんでした。

    カナダは、僕に歩くように強くすすめました。トレイルがこの道をコーストしているのだからハイウエイだって歩かなくてはいけないのではないか?

    僕は、トレイルを伝える人間として危険を発信したくないと、つたない英語を駆使しながら説明しました。
    お互いが譲らないまま、シェアした部屋では気まずい雰囲気が漂っていました。

    翌朝、お互いに出発時間を話し、分かれて歩くことを受け入れると、僕より先に出発するカナダとハグして別れました。

    後悔はない。人それぞれトレイルに対する考え方は違っていいと思う。

    カナダの考えも分かる。でもきっと日本でこんな行為は許されないだろうし、後から続くハイカーを危険にさらすわけにはいきません。

    ようやく自分の中でハイカーがハイウエイを歩くことについての考えがまとまったような気がしました。僕は、今、自然の中を歩いているのではなく、銃社会のアメリカの町中を歩いているのです。

    この橋もATVロード

    この橋もATVロード

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    メイン州のATVロード。

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    パースアンドバーへ。

    OLYMPUS DIGITAL CAMERA

    ビールを差し入れてくれたおじさんたち。

    コロンビアさんに送っていただいた2足目のブーツ

    コロンビアの2足目のブーツ

     

    つづく

     プロフィール

     

     

     

    Profile 斉藤正史 

    山形県在住
    LONG TRAIL HIKER
    NPO法人山形ロングトレイル理事
    トレイルカルチャー普及のため国内外のトレイルを歩き、山形にトレイルを作る活動を行う。

    ブログ http://longtrailhikermasa.blog.fc2.com/
    山形ロングトレイル https://www.facebook.com/yamagatalongtrail

     

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