“間伐”と名付けられた話題のイベント「THINNING」って一体なに? | イベント 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2020.12.03

    “間伐”と名付けられた話題のイベント「THINNING」って一体なに?

    私が書きました!
    山岳ライター
    吉澤英晃
    群馬県生まれ。登山用品を扱う会社の営業マンを経てフリーランスとして独立。幼少のころ家族で楽しんだキャンプでアウトドアが好きになり、大学で探検サークルに入ってから山に登り始めました。現在は山岳会に所属して、春から秋は沢登りとテンカラ釣り、冬は主にラッセル山行とアイスクライミングを楽しんでいます。

    小さいテントが立ち並び、大勢の賑やかな声が聞こえてきそうなこちらの写真。「THINNING」というイベントの様子を切り取った一枚です。「THINNING」とは「間伐」のこと。カンバツなんて普段は耳にしない言葉ですが、一体どんなイベントなのでしょう? 実行委員を務める林博之さんに、立ち上げた経緯や内容について話を聞きました。

    荒廃する山の現状がすべてのはじまり

    「THINNING」の拠点があるのは福岡県糸島市。福岡市の西に位置する地方都市で、北には玄界灘が広がり、南には佐賀県との県境にまたがる脊振山地が連なる豊かな自然から、最近では「移住したい町」や観光地としても注目を浴びています。

    そんな糸島市に移り住んだ林さんは以前、大手アウドドア輸入商社で働いていた経緯の持ち主で、もともと“自然を大切にしたい”という考えが染み付いていたそう。そのような土壌がありつつ、糸島市で楽しく暮らしていた最中、とある会話がきっかけとなり山の問題について考えるようになったと言います。

    話を聞かせてくれた林博之さん。

    「知り合いになった地元セレクトショップの店主からある時、山が荒れ放題のまま放置されている、という話を聞いたんです。一見すると華やかに見える糸島市も、実は裏では山が大変なことになっている。この事実を知って、さらに大雨が増えて土砂崩れなどの災害が目立つようになり、民間レベルで少しでも力になれることはないかと思い始めたのが、すべてのきっかけでした」。

    いま日本の山で何が起きているのか?

    日本には、木材を効率的に生産するために天然林を伐採して、成長スピードが早い針葉樹を植えた人工林が数多く存在します。この人工林は木がまっすぐ育つようにあえて苗木を密集させて植えるため、健全に木を育てるためには、育成の過程で間隔を開けて木を伐採する「間伐」という作業が欠かせません。この間伐作業を怠ると太陽の光が地面まで届かなくなり、太い根を張るまで木々が育たず、地面の保水力が低下します。このような土地は、大雨によって引き起こされる土砂崩れの要因のひとつと言われています。

    等間隔で木が生えている林はすべて人の手が作った人工林。

    糸島市に限らず、いま日本全国で間伐されずに放置された人工林が増えています。この問題の根底にあるのは、国内の林業がお金にならないという現実です。海外から輸入される安い木材がシェアを占めるいまの国内市場では、日本の山で木を育てて、それを運搬して販売しても採算が合わないのです。

    問題に取り組む姿に地元の作家も動き出す

    この問題を解決するために林さんがとったある行動が、のちに「THINNING」を一緒に立ち上げるメンバーを集めることになります。

    「糸島市には間伐によって山から切り出された間伐材を貯めておく貯木場があるんですが、細い木が溜まる一方で、上手く循環してなかったんです。この間伐材をビジネスにしないと山の問題は解決しない。そう考えて僕がいちばん最初にやったのは、その間伐材を買うことでした。そして、買った間伐材を糸島市の製材所で板にして、協力を得ることができた工場でアルファベットの形に切り落としてもらい、雑貨屋に流通させることにしたんです」。

    林さんが間伐材を使って作った商品。「KINOKOTOBA」として現在も買うことができる。

    「そんな僕の姿を見ていた糸島市の木工家の人たちが、木でビジネスをしている自分たちも関わりたいと言ってくれて、そこで、いま山で起きている現状を発信できるような楽しい場を作って人を集めて、そのイベントでたまたま山の現状を知ることができたみたいな企画から始めたほうがいいよね、っていう話し合いからTHINNINGは生まれたんです」。

    2017年、ついに「THINNING」がスタート!

    第3回目のTHINNINGの様子。多くの出店者と来場者が集う。

    こうして集結したメンバーのアイデアが結実し、2017年10月に記念すべき第1回目の「THINNING」が開かれます。さまざまな企業や作家に出店してもらい、来場者が物販などを楽しめるようにしたこのイベントは大盛況のうちに閉幕。初回の成功を機に、それから毎年春と秋に「THINNING」は開催されるようになります。

    「残念ながらコロナの影響で中止となってしまったんですが、2020年4月に計画していた第6回目には、飲食店も含めると過去最大となる45社に参加していただける予定でした。いまでは1日で約2000人を集客する規模のイベントに成長しています」。

    木工体験やトークショーなど、会場には楽しみが盛りだくさん

    物販のほかに「THINNING」ではどんなことが楽しめるのでしょうか? イベントに出店者として参加している企業や作家は、何らかの形で林業に関わっていると思われるかもしれませんが、そういったレギュレーションは一切ないそうです。

    物販や飲食以外に、木に直接触れる木工作業も体験できる。

    「僕たちはいま、人を集めて山の現状を知ってもらうきっかけを作るのがいちばんの役割だと思っているんです。だからあえて枠は設けずに、僕たちと想いを共有してくれる魅力的なメンバーが集まっています。

    たとえばA&F、スノーピーク、ザ・ノース・フェイスといった大手メーカーから、佐賀県の山奥で活動する和紙職人さん、福岡県久留米市の靴メーカーさん、大分県日田市を拠点に僕たちよりもずっと前から山や森の問題を発信している団体 “ヤブクグリ”さんなど、協力してくれているメンバーのジャンルはさまざまです」。

    ヤブクグリが開発した「きこりめし」。「THINNING」でも大人気のお弁当。ドンと横たわるごぼうを右上のノコギリで切って食べる。

    「山の現状を知るきっかけ作りについては、最初はなるべくハードルを作りたくなかったので、糸島市にある木工館や福岡県庁から間伐や森の仕組みについて書かれた資料を借りてきて、掲示するだけにしていたんです」。

    間伐や森の仕組みについて発信するパネルを設置。つい来場者も足を止める。

    「そうすることでTHINNINGに興味を持ってくれる人をまずは増やして、ようやく第3回目からトークショーで喋りはじめました。登壇してくれたのは、糸島市の山側に実際に住まわれている山林業従事者さんや、山の麓で活動している農家さんなど。どういう山の恩恵を受けて、どういう山の大変さを経験し、これから山をどうしないといけないと思っているかなどを語ってもらいました」。

    第4回目のトークショーの様子。和やかな雰囲気で山について語り合う。

    問題に気付く第一歩のプラットフォームをめざして

    第1回目は糸島市にある公園からスタートした「THINNING」は、活動が徐々に周囲の目に留まるようになり、大手百貨店とコラボしたり、北海道の自治体から呼ばれて地元のイベントに参加したりと、少しずつ広がりをみせています。来場者の中にはなんと、林業に興味を持ちました、という高校生もいたそうです。

    そして実は、この記事を書いている私も、記事を読まれた読者の皆様も、「THINNING」の思惑通り、なんだか楽しそうなイベントから山の問題について知ることになったひとりだったりするのです。

    「山や森の話をすると、それが川の話から海の話になって、最後には雨となって山に戻ってくる循環の話になる。これって、とどの詰まりは僕たちの暮らし全体を考えることになるんです。でも環境問題の話ってちょっと重たいじゃないですか。だから楽しみを軸にして、大事なことは無理せず活動を続けていくこと。それぞれができることをやろうっていうスタンスで、問題に気付く第一歩として、THINNINGがいちばん誰でも入りやすいプラットフォームになれればいいなと思っています」。

    残念ながら第6回目は中止となってしまった「THINNING」ですが、11月には福岡県福岡市にある六本松蔦屋書店で規模を縮小して開催。そして、2021年4月には、JR博多シティの屋外スペースでの催しが決まっています。 さらに今後は九州以外の地域での主催も視野に入れているのだとか。「THINNING」のように、楽しみながら山について知ることができる機会がますます増えていくといいですね!

    Thinning
    https://thinning.jp/

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