【インタビュー】「waltz」(前編) Amazonやめてカセットテープの店はじめました。

  • 角田さんオススメのカセットテープ。左から『Bizarro』The Wedding Present、『New York』Lou Reed、『Chronic Town』R.E.M.。

純粋アナログな
カセットテープショップ。

»後編「音楽業界に一石を投じるカセットテープショップというカタチ。」はこちら。

 

中目黒の駅からブラブラ歩くこと10分程度。

裏通りのちょっと開けた三差路に「waltz」がある。
大きなガラスの扉が4枚あって、明るい店内。
より広さを感じられて心地良さそうだ。
といっても、ここはカフェではない。
店内に入ると最初に目に飛び込んでくるのは、
正面に陳列されている古めかしい、いわゆるラジカセ。
手前には、そのデッキにおさまるべきカセットテープたち。
ここはカセットテープ店なのだ。

 

音楽好きの間では、ここ最近、カセットテープが再評価されている。
カセットテープでリリースするアーティストが登場したり、
さらにはカセットテープリリース専門のレーベルが設立されたり。
確かにマーケット的には過去のものではあるのだが、
ある場所では脈々と受け継がれていて、それが表面化してきているのだろう。

 

waltzは昨年8月にオープン。
カセットテープとレコード、そして雑誌などの古書を販売している。
ネット通販もしていない、ある意味で“純アナログ”な店。
どんなこだわりのガンコオヤジが登場するのかと思いきや、
予想にはまったく反する、カルチャーを愛するさっぱりした店主だった。

 

店主の角田太郎さんは、地元・中目黒出身。
もちろん多感な時期をナカメで過ごした。

 

「小・中学生のころは、貸しレコード屋さんの走りみたいなお店が
2店もあったんですよ。そのころから音楽が大好きで、自転車で通っていましたね。
音楽的なバックボーンはそこに育てられたといってもいい。
あと情報源はラジオでした。番組を録音したテープが数百本はありましたね」

 

40代以上の人ならば、「テープに録音する」という作業を一度は経験しているだろう。
角田さんのテープには、多くのジャンルが録られることになった。

 

「小学生のときは、ビルボードなどのヒットチャートを一生懸命聴いていました。
チャートを聴いていると、ロックも、ブラックミュージックも入ってきて、
いろいろな音楽に接するきっかけになりました」

 

そのなかで角田“少年”が一番ハマったのは、ニューウェーブ。
現在の40代中盤から後半の人は、本当にニューウェーブの影響を受けた人が多い。
それだけ魅力的なカルチャーだった。

 

「80年代初期のインディレーベルから派生したようなカルチャーで、
ラフトレード、4AD、ファクトリーなど、個性的なレーベルがたくさんありました」

 

こうした早熟な音楽遍歴を経て、どっぷりと音の世界に浸っていた角田さんが、
レコードショップを展開する「WAVE」に就職したのはある意味、必然。
自身も客として、六本木WAVEや渋谷WAVEに足繁く通っていたという。
80年代後半から90年代にかけてのWAVEは、
“WAVE以降”しか知らない者にとっては、伝説的だ。
現在、ミュージシャンだったりDJだったり、
音楽カルチャーのなかで個性的な活動をしている人たちの多くが、
「WAVE出身者」であったりするのも、それを象徴している。

 

4年後、WAVEを退社し、明響社に入社。CD販売などの業務に携わった。
「そこに入ったのはすごく大きくて、
はじめてちゃんとしたビジネスマンになれたというか。
当時パソコンが1人1台与えられたり、いろいろと勉強することができました」

 

その後、海を越えてやってきた黒船=アマゾンに立ち上げから乗船。
しかし、黒船認定されるのはまだ先の話である。
当時は、仲間に転職の話をしても「やめたほうがいい」といわれるくらい、
日本でのビジネスが成功するか眉唾ものだった。

 

「2000年代前半から、音楽を売るということに関して、
日本では難しい状況になっていました。
当時の自分の仕事も効率が悪く、
マイナスなものばかり生産しているようで面白くなかったんです。
潮目が変わるきっかけがあるとしたら、インターネット関連しかないだろうと。
会社の将来性などは、大して考えていませんでした」

 

しかしアマゾンはご存知の通り、大きく成長した。
そのアマゾンに勤めて14年後。
大手を辞め、個人でお店を立ち上げることにした。
「Eコマースの巨人から、大好きなアナログの世界へ」。
こんなキャッチフレーズが角田さんにはつきまとうだろう。
間違いではないが、“ITに疲れた世捨て人”的な単純な話ではなかった。

 

【waltz】
住所:東京都目黒区中目黒4-15-5
TEL:03-5734-1017
営業時間:13:00〜20:00 月曜定休
http://waltz-store.co.jp/

 

»後編「音楽業界に一石を投じるカセットテープショップというカタチ。」はこちら。

 

文=大草朋宏