【インタビュー】パピエラボ(前編)活版印刷は手段に過ぎない。

  • 家型の封筒とハガキのセット。メールでなく、手書きの手紙やメッセージは、気持ちが伝わるはず

活版印刷は手段に過ぎない。

 

 

最近ではさまざまなお店が出来ている千駄ケ谷エリア。

まだアパレルの事務所などが点在しているに過ぎなかったこのエリアに、
2007年にオープンしたのが〈パピエラボ〉だ。
角地にあって、なんだか気になるお店。

 

店主の江藤公昭さんは、もともと家具やインテリア、内装などを手がける
〈ランドスケープ プロダクツ〉に所属し、
主にグラフィックデザインを担当していた。

 

当時、ある活版をテーマにした展覧会に参加したという。

 

「一度、ニューヨークで活版印刷の印刷物を見たことがあって、
興味を持ったんです。
でも、そのときは活版印刷だとは知らず、日本で調べてみて、
初めて活版印刷だと知りました。
日本でも探してみたのですが、扱っているところはあまりないし、
あったとしても職人さんがひとりでやっているような小さな工場ばかりでした」

 

こうして展覧会での準備のため、
活版印刷の工場をいくつか回ってみた江藤さん。

そこに面白さを感じると同時に、入り口の狭さも感じた。

 

「ちゃんとした発注がない軽い気持ちでは、工場には行きづらいですよね。
誰もが飛び込みできるわけではないと思ったので、
もっと活版のことを知ってもらうためにも、
そこから職人さんにつなげられる窓口のようなお店を
つくりたいと思ったんです」

 

こうしてスタートしたのがパピエラボ。
活版印刷の商品を中心に取り扱いながらも、
ノートやペンなど、独自の文房具を展開している。
本人に活版印刷屋さんというつもりはない。

 

「実際に活版印刷の職人さんたちに会って、
おもしろいと思ってやり始めたのは事実ですが、
たとえば、自分たちが活版印刷屋さんだと決めてしまうと、
他の技術に出会ったときにすぐに動きづらくなってしまいます。
基本的には、出会いの流れに身を任せて、
新しいことをやっていきたいと思っているんです。
出会いというのは不思議ですよね」

 

最近では、活版印刷も人気が復活している。
たしかにあたたかみがあって、いい風合いだ。
しかしただ“活版ならいい”というのでは、本末転倒になってしまう。

 

「もちろん活版は大好きです。が、手段のひとつに過ぎません。
“とにかく活版ならいい”という考えは、ものづくりの本質ではありません。
“このようなものをつくりたいので、それに適した手段が活版だった”
というロジックが正解だと思うんです。
箔押しやオフセット印刷のほうがすぐれている場合もありますし。
さまざまな技術があるので、自分の目で見て、
より良いものを選び取ってほしいですね」

 

たとえば華雪さんに書いてもらったカード。
「昨日」、「今日」、「明日」という文字が印刷されている。
これは強く濃い文字だからシルクスクリーンを使った。
活版だと細かい筆の動きが表現しにくい。

 

また、〈HOUSE ENVELOPE〉という家形の封筒は、
アーティストの平山昌尚さんによる一本線ドローイング。

 

「線が1本というシンプルなデザインですが、
あえて活版印刷で力強さを出しました」という。
仕様によって技術を使いわける。
それはプロダクトの特性をきちんと考えてものづくりをするという、
ごくごく当たり前のこと。
そんな基本を江藤さんは忘れない。

 

【パピエラボ】
住所:東京都渋谷区千駄ケ谷3-52-5 原宿ニュースカイハイツアネックス104
TEL:03-5411-1696
http://papierlabo.com/

 

◎文=大草朋宏

 

»後編「ものづくりにおける作家、職人、それをつなぐディレクターの役割」に続く。

 

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文=大草朋宏