【SMALL TALK】 Vol.12 平賀さち枝インタビュー【前編】
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    2017.09.20

    【SMALL TALK】 Vol.12 平賀さち枝インタビュー【前編】

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    2011年にファーストアルバム『さっちゃん』をリリースして以降、ひとりギターを持って全国を旅歩くことも多かった平賀さち枝さん。今年いよいよ発表する2作目のアルバムでは、新たなバンドメンバーも迎えまた新しい気持ちで臨んだそう。作品タイトルは『まっしろな気持ちで会いに行くだけ』。

    平賀さんが胸に抱く、今の“まっしろな気持ち”とは。前編は、デビューまでの平賀さんと最近の彼女が感じ取っている情緒のお話です。

     

    四季の移ろいに感じる寂しさと喜びの繰り返し

    ——お久しぶりのアルバム、とても素直な感情が表現されていて素敵でした。しかも今回のアルバムは、四季すべてが曲名にも入っていますね。

    平賀:自然とそうなりました。私にとっては四季の移り変わりが生きがい。「春が来た〜!」って嬉しくなって、春が終わりそうになればすごく寂しくなるけど、でも次に夏のことを思えば「海がある、BBQがある!」と。夏の終わりはまた寂しくなるけれど、でも秋になったらお洋服も変わり、涼しくなって食べ物も美味しい…… という、もうずーーーっとその寂しさと喜びの繰り返し。季節の移り変わりに希望を感じるし「こうやって四季のある日本に生まれて本当によかったな」って喜びを噛み締めています。

    ——平賀さんは、岩手県の宮古という海のある街の出身でいらっしゃるけれど、学生時代から四季の移り変わりに思いを寄せていましたか?

    平賀:じつは、学生時代はそういう情緒を感じるようなタイプではほとんどなかったです。大人になり年齢を重ねるにつれ、四季のことを思うようになってきました。私が育った宮古は、海から本当にすぐのところに山もある。夏はもちろん海を見に行きたくなるけれど、冬は三陸のリアスの断崖のような厳しいところだし寒くて我慢、という感じでした。学校に行く道はいつも山でしたね。海も山もどっちも好きなんですけど。

    ——だんだん大人になるにつれて情緒が豊かになったし、それと同時に曲も作り始めていった、というような。

    平賀:そうですね。他の音楽家さんが、私が想像できないような世界も歌にして、ファンタジーや壮大な世界を描けるのは本当にすごいなあ、と思いつつ私自身はあまりそこまでできない、というか。ごくごく日々のこととか、春夏秋冬とかしか、できないんですよね。

    ——そういった日々の情緒のような部分を、平賀さんが歌にしてみようと思ったきっかけもお聞きしたいです。

    平賀:最初の歌への興味のきっかけは、小学校3年生くらいの頃に、テレビでSPEEDや鈴木あみさんや浜崎あゆみさんを見て歌手の世界に憧れたこと。歌って踊るアイドルにずっとなりたかった。そこから中学生くらいまでは結構“歌い上げる”タイプの歌手……たとえばMISIAさんとかみたいになりたくて、オーディションも受けてました。でも結果は全落ち。とはいえずっと歌が好きで、歌手というものにずっと憧れていたんです。

    ——多くの女の子がそういう歌手に憧れていた時代でもありましたよね。

    平賀:ね。その後、15〜16歳くらいからロックバンドを聴くようになり音楽雑誌を読み始めたりして。それまでと違う種類の音楽に触れるようになり、ライブハウスに行ってみたいと思うようにもなった。そうすると東京にはたくさんのライブハウスがあるので、好きなバンドを見るために東京へ通ったりしていました。

    ——その頃はどういったバンドを聞いていましたか?

    平賀:『おとぎ話』が19歳くらいの頃とても好きでした。そこから、20歳の頃に音楽と近い環境に身を置きたくて東京へ出てきてひとり暮らしを始めるわけですが当時は、タワーレコードへ行っても岩手には無いようなPOPがあるのにとっても興奮しました。すごく音楽が身近な存在に感じられるようになって、うれしかった!
    そこから1年間ずっとアルバイトをしていたけれど、その間は特に何か音楽を作ったりはしていなかった。その後、21歳のときに友達からギターを貰うことになって、家にギターがやって来たんです。最初はもちろん、全然弾けない。
    でも、私も歌がずっと好きだったし、自分で作った歌を歌いたいなあって気持ちはあったから、最初は鼻歌で作りました。自分の書いた日記みたいなものに鼻歌でメロディをつけて、それをライブハウスで発表していましたね。

    ——鼻歌でメロディをつけてライブハウスに立つってかっこいいです。

    平賀:私みたいな変な…アカペラのライブもやらせてくれるような、ちょっと変わった見世物小屋的なものが高円寺にあったんですよ。続けていくうちに毎週月曜日の定例レギュラーになった。だんだんと、初期のアカペラみたいなのから、ライブハウスで知り合った友人にメロディをつけてもらったり。ギターも同時に練習していて、1年たたないうちにコードを3つくらい弾けるようになっていた。そうしたらいつの間にかギターを抱えて歌うようになって、ちょっとライブっぽくなってきました。最初はね“詩の朗読”みたいなことだったんです。でもそれが段々と、歌の形になっていったのが21〜22歳。

    ——そこからデビューまでは、早かったですね。

    平賀:当時の私がその見世物小屋的なところでライブをしていたのを、お客さんの誰かが映像で撮って、YouTubeにポンって載っけたんですね。
    そしたらたまたまその映像を、デビューアルバムを出させてもらうことになるレーベルの人が見ていらして、連絡をいただきました。そして23歳で初めてアルバム『さっちゃん』を作りました。

     

    ファーストアルバムの頃は、自分をミュージシャンだとは思っていなかった

    ——最初の作品をつくる時に考えていたことと今回の2枚目の違いってありますか?

    平賀:ファーストアルバムは、もう何も考えずに作った感じがします。今思えば、初期衝動みたいなもので出来上がったアルバムでしたから。一方、今は「自分はミュージシャンなんだ」と思うようになっている。なので、その違いかな……。ファーストの当時は、自分をミュージシャンだって思っていなかったです。
    でも私がデビューしてから聴いてくれた方をはじめ、いろんな人が関わってくれるようにもなり、お金が発生するようになって。それからはどんどんと、自分のためっていうだけじゃなくて、やっぱり、みんなのための歌を作らなきゃなって思うようになりました。

    ——人から期待されるようなものも混ざってきているわけですね。先ほどの話でも少し出ていた、自然に対する「情緒」みたいなものが細やかになっていったのもその頃からですか?

    平賀:私、段々と精神が幼くなっているような気がしているんです。すごく敏感に、ちょっとのことでも落ち込んだり、うれしくなったり、悲しくなったり。大人になるにつれてそうやって面倒くさい人になってきてると思います。歌を作っているからかもしれないですけど。自分の情緒が、色々感じ取って不安定になるというか。学生時代はそういう情緒を感じるようなタイプではなかったので本当に、これって大人になってからのこと。歳を重ねるにつれての変化ですね。

    2017.9.20発売
    平賀さち枝 『まっしろな気持ちで会いに行くだけ』
    ¥2,300+税

    <TRACK LIST>
    1. 春の嵐
    2. 10月のひと
    3. 帰っておいで
    4. ホリデイ
    5. My Boyfriend, see you
    6. あけましておめでとう
    7. 春一番の風が吹くってよ
    8. 虹
    9. 雨の日
    10. 青い車(album ver.)
    11. Lovin’you
    12. 夏の朝にはアセロラジュースを

    平賀さち枝
    岩手県出身。2011年kitiからファーストフルアルバム「さっちゃん」、2012年ファーストミニアルバム「23歳」をリリース。2013年には、ファースト両A面シングル「ギフト/いつもふたりで」を発表。2014年にHomecomingsとのコラボシングル「白い光の朝に」をリリースし、2017年、FUJIROCK FESTIVAL「平賀さち枝とホームカミングス」で出演。楽曲提供、こども向け楽曲製作、文章、声優など様々な活動を含め、全国津々浦々、弾き語り活動中。http://www.hiragasachie.info/

    文=鈴木絵美里 撮影=小倉雄一郎

    →平賀さち枝インタビュー【後編】はこちら!

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