- Text
- Source
WIND from ONTARIO~森の海、水の島~ #28 Traveling Trout 旅する鱒の森
by Tomoki Onishi
撮影・文/尾西知樹
トロント在住のフォトグラファー、マルチメディア・クリエイター、カヌーイストでサウナー。オンタリオ・ハイランド観光局、Ontario Outdoor Adventuresのクリエイティブ・ディレクターを務める。カナダの大自然の中での体験とクリエイティブを融合させたユニット magichours.caを主宰。

カヌーで湖に浮かび、ロッドに小魚を模した毛鉤をつけてフライフィッシング。アウトドア雑誌の編集者スティーブと釣行。
明確な重りを使わない、糸の重さだけの心許ないロッドでトローリング。お互いのフィールド活動について話していると、ググーッとロッドがしなった。湖の深みから縦横無尽に泳ぎ回り、勢いよく水面にジャンプする。虹鱒(Rainbow Trout)だ! 日本でスポーツフィッシングの対象魚として愛されるのも頷ける力強いファイト!!
虹鱒は、世界でいちばん旅をしている淡水魚といっても過言ではない。アメリカの西岸部が原産で、食料や釣りの対象としてさまざまな土地に移入され、今では五大陸から極東日本まで世界各地を制覇している。オンタリオへも遥か西の地より移入された虹鱒は、今では、清らかな小川から僻地の湖まで、広い範囲で分布している。
鮭と同じく降海型で、海に降り巨大化し、スティールヘッドと名を改め、生まれた川へ戻る。まさに旅する鱒だ。日本の食卓で人気のトラウトサーモンも、海面養殖された虹鱒とは意外だ。
何世代にもわたる生命の樹の枝先をたどれば、一本は日本へ、そしてもう一本はオンタリオの森へと続いている。深い森の海の片隅で、虹鱒と異国に根を下ろした人々の物語とが重なった。

スティーブの毛鉤ケース。さまざまな色や形のお手製毛鉤がぎっしり。毛鉤を巻く時間も至福。

この日は風が強く、流されないように交代でカヌーを漕ぎ、釣りとアウトドア談義は尽きない。

冷水を好む虹鱒。森を映す深緑の深みから、キラキラと虹色に輝く森の宝石が姿を現わす。

協力: Haliburton Forest & Wild Life Reserve
(BE-PAL 2026年10月号より)




