- Text
- Source
第88回 井ノ原快彦のつくりびと
中:井ノ原快彦さん
数々のテレビドラマ、バラエティ番組、舞台などで活躍中。20th Century(トニセン)のメンバー。テレビ東京『出没!アド街ック天国』の宣伝部長も務めている。
左:クラフト作家 真島辰也さん
レザーや木などで、なんでも手作りしてしまうDIYの達人。
右:アウトドアプロデューサー 長谷部雅一さん
アウトドアイベントなどを企画運営する株式会社ビーコン代表。

真「昔の物出すのちょっと照れる」
ないなら作るが物作りの原点!
真島さん(以下、真)―そもそもイノッチが物作りに興味を持ったきっかけは、なんだったの?
井ノ原さん(以下、イ)―「買ってもらえない」っていうのが原点かも。なんでも買ってくれるような家じゃなかったんで「欲しいものは作る」というのが身についたと思う。「タイガーマスクのお面が欲しい」ってなっても買ってもらえないから作るしかない。紙粘土で頑張って作ったんだけど、黄色がぜんぜんのらなくて、ブラックタイガーになっちゃったっていう(笑)。
長谷部さん(以下、長)―悪役だ(笑)。でも教育方針としては素晴らしいですね!
イ―それが原点で、その後は欲しかったら自分で作ってみようっていうマインドになりましたね。長谷部くんはどうなの?
長―本格的な物作りの原点というと、このランタンですね。20代のころ、世界一周しているときにジンバブエで見つけたものなんですが、空き缶とか空き瓶とか、ゴミになってしまうようなもので上手に作っていることに感動しました。
真―これ、すごいね! ちゃんと芯も出し入れできる。
長―もともとは市販品を村でお金を集めて買ってきて、それを全部分解して、廃材で作ったみたいです。
イ―買えないから作る。僕とマインド的には一緒ですね。
真―分解できるから、掃除もしやすい。よく考えられてるね。
イ―これを最初に完成させた人、村の英雄になっただろうなあ。
長―マジさんの原点は?
真―子供のころの原点っていうと、小刀でいろいろ削ったりしてたかな。鉛筆の書くほうと逆の部分に飾り彫りしてみたり。
長―あー、それ僕もやってました。モアイ像彫ってましたね。
イ―その発想なかったなあ。鉛筆削りの授業はあったけど、綺麗に書けるようにするのが目的だったじゃない? でもマジさんや長谷部くんは、その反対側で何か面白いことできないかなって考えたわけだよね。そういう“はみ出しちゃう感覚”を持った人が、物作りを進化させていったのかもしれない。
長―しかも、無意識にはみ出しちゃう(笑)。
イ―昔、聞いた話なんだけど、ある画家の人が子供のころ、写生大会でみんなは花を描いてるのに、ひとりだけ象を描いちゃったんだって。でも先生は怒らずに「お前はそれでいい」っていってくれたらしくて、それが原点だっていってた。
長―趣味の物作りって別に売るわけじゃないし、何作ったって良いわけですからね。そういう自由さみたいなものは物作りをしていると感じますよね。マジさんが持ってきたものは?
真―革細工をはじめたころに作った財布なんだけど、ほぼ半世紀前に作ったものだから、正直恥ずかしいんだよね(笑)。
イ―唐草模様! 流行ったよねえ。
長―マジさんといったら、それこそ自由な発想の物作りが特徴ですけど、こういうのもちゃんと通ってるんですね。
真―ある日ふと「自分がこういう財布使うか?」って思ってやめた(笑)。いま見ると、なんの工夫もないよね。
イ―でも、みんなそうだと思うんだけど、覚えたてっていろんなことに挑戦したくなるんですよね。
長―イノッチもレザークラフトハマってましたよね?
イ―東急ハンズでキットを買って作ってみたら結構良い出来映えで。じゃあ次はイチから作ってみようってことで浅草橋に行って。そうしたら革の種類も驚くほどあって。それこそ象の革とかね。そうやって物作りが広がっていく感じは楽しいよね。
真―オレも最初は木工から入ったけど、レザークラフトもやるようになり、そのうち金属も扱うようになった。その都度、世界が広がる感覚があるね。
イ―買ってもらえない、持ってない、売ってない。普通だったらネガティブに捉えがちなことが、物作りの世界ではむしろ原動力になる。面白いですね!

それぞれが作ったものを持ち寄ってのピクニック。共通の趣味で大盛り上がり。

赤いのがバックパッカー時代に長谷部さんがジンバブエで発見したランタン。本体は缶詰の空き缶、ホヤはジャムの瓶。青いほうはそれを見て作った自作!
つくりびとたちの手製コレクション

イノッチが「つくりびと」連載で作ってきたものたち。手作りだからこそ、愛着もひとしお。

イノッチみずから叩いて鍛えたお手製ナイフ。柄の部分にはパラコードを巻いてある。レザーで作った鞘はベルトに装着できる仕様。


思えない出来。
真島さんがレザークラフトを始めたころに作った財布。当時は唐草模様全盛期。「縫製とかも下手で、出すのが恥ずかしい」らしい。


奥が深い!
物作りの話をするときのイノッチは本当に楽しそう。この連載でも、布、革、木、金属とさまざまな素材の物作りに挑戦しつづけている。

イノッチ印!
連載でカスタムしたZIPPO。組紐のストラップを付けて使い勝手を向上。イノッチマークを彫り込んだオリジナリティある一品。
※構成/櫻井 卓 撮影/小倉雄一郎 ヘア&メイク/浅野有紀
(BE-PAL 2026年9月号より)




