気温も次第に上がり、過ごしやすい気候になり、心が自然と弾む風景も見られます。
産卵に訪れるアオリイカを捕食する生き物とは

その頃、海の中でも水温がゆっくりと上がり、生き物たちの動きが活発になります。
鹿児島県・錦江湾では、アマモの草原が広がります。
海底から高いものでは2メートルほどまで成長し、見上げると、まるで海の中の森に迷い込んだかのような感覚に包まれます。
その美しい景色の中で、ふと目に入ったのは、海底に転がるひとつのプラスチック容器。
本来そこにあるはずのないものに違和感を覚えながらも、よく観察してみると、
そこにはイロミノウミウシが2匹寄り添い、白い卵を産みつけていました。
人が捨てたものが、思いがけず新たな命のゆりかごとなる。
海草の森の中で繰り広げられるその光景に、春という季節の力強さと、生き物たちのしたたかさ、そして自然の奥深さを改めて感じさせられます。

初夏になると、アオリイカの産卵が見られます。

木を束ねて作る「イカシバ」を、漁師さんと協力して海底へ沈め、産卵場所を整えます。
数日もすると、そこには白色のアオリイカの卵が確認できるようになります。
海底でじっと息を潜めていると、やがて遠くから、アオリイカたちが次々に姿を現します。
産卵はペアで行われ、メスはオスに守られながら、イカシバへ潜り込み、白い卵を産みつけます。
多い時には、50杯ほどのアオリイカがこの場所に集まります。
透き通るような美しい姿のイカたちが重なり合い、舞い踊るかのような光景は、まるで海の中の舞踏会のよう。思わず息をのむほどの美しさと迫力に包まれます。
しかし、産卵に訪れるアオリイカを捕食しようと、卵の奥にひっそりと身を潜める生き物がいます。

それは、ウツボです。
ウツボは、イカシバにメスのイカが体を突っ込んで産卵する、その一瞬を狙って捕食するのです。
なんとも賢く、したたかな生き方です。
美しく見える“命の舞踏会”の裏側では、こうした緊張感のある駆け引きが静かに繰り広げられています。
そんなウツボも、夏になると繁殖期を迎えます。

鋭い歯を持ち、「海のギャング」と怖がられる存在ですが、観察していると実は臆病な性格のように見えます。
求愛のときには、お互いを気遣うような穏やかで優しい姿が見られます。
その様子はどこか人間のようで、好きな相手に向ける表情が、ふとやわらかくなる瞬間に似ているようにも感じます。見ているこちらまで心がほどけるような、愛おしい時間です。
これから水温がさらに上がり、海の中はますます賑やかになっていきます。
今年も生き物たちのどんな恋模様に出会えるのか、今から楽しみでなりません。
陸編
初夏、葉も生き物もいきいきと息づくこの季節。
私にとって特別に好きな時期で、ふるさとの風景がより一層やさしく感じられます。

田んぼに水が張ると、水面に映り込む景色に魅了され、気づけば何か生き物がいないかと目を凝らしています。

初夏、水辺にはアカハライモリの姿も見られます。
この時期、アカハライモリを観察していると、2〜3匹で追いかけ合うような様子が見られることもあり、とても興味深い光景です。

この時期、カエルの声に心から癒されます。
玄関を出ると、その鳴き声に引き寄せられるように、気づけば田んぼの脇道へ。
ひときわ大きく響く声のする方へ行き、足元をそっと覗き込むと、まるで告白の瞬間のような、胸が温かくなる素敵なシーンに出合いました。


これからさらに生き物たちの活動が活発になり、躍動感あふれる季節がやってきます。
命はめぐり、生き物たちにもそれぞれの想いがあり、懸命に生き、闘い、そして恋をする時間が流れています。
そんな姿に出会えるこれからの季節は、生き物観察がより一層楽しくなります。
ぜひ外に出て、そのひとときを感じてみてください。





