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奥山ひさし植物珍百景
サイカチの英名はGleditsia japonica
山野や河原に自生。幹や枝に小枝の変形したトゲがある。葉は長楕円形の小葉からなる羽状複葉。夏に淡黄緑色の小花を穂状につけ、ややねじれた豆果を結ぶ。栽培され、豆果を石鹸の代用に、若葉を食用に、トゲ・さやは漢方薬にする。名は古名の西海子(さいかいし)からという。
トゲを持って身を守る草や木の外敵は、いったい何だろう……私?
サイカチはマメ科の落葉高木で、本州から九州まで分布する。川岸などに育つ木だが、数はとても少なく、実際に見たことがない人も多い。
花期は6月ごろで、枝先に淡い黄緑色の花を固めてつける。この花のかたまりには雄花と雌花、それに両性花の3種が入り交じる。
トゲのある木の代表はバラかもしれないが、サイカチの樹皮につくトゲは、複雑に枝分かれしたかたまりで、何とも恐ろしいカタチをしている。
私が幼かったころ、木登りが得意だったことから村の大人たちは「猿のようだ、木ネズミ(リス)のようにも見える」といってからかったが、その私でもサイカチの木には登れなかった。
現物を見ればわかるが、いったいこのトゲは何のためにあるのだろうか?
秋には30㎝ほどもある大きな実(豆果)をぶらさげるが、なぜかグネグネとよじれたカタチになる。
豆果でもっとも大きなものといえば、南方のモダマ(藻玉)だろう。モダマは何と、さやの長さが1mほどになり、6㎝ほどの黒く平べったい豆をつける。
サイカチのよじれた実のさやには、サポニンが含まれていて、水に入れてもむと泡立ち、昔は石鹸の代用にされた。
サイカチの若葉が食用になることは、つい最近になって知ったが、実は薬用にも利用されるという。
バラをはじめ、ジャケツイバラ、ノイバラ、カラスザンショウ、それにタラノキやハリギリなどもトゲのある木だが、何といっても横綱はサイカチだ。
そんなに恐ろしいかって? 川岸などを散策してぜひ現物を見つけてほしい。

樹皮につく鋭いトゲ。

若葉は食用になる。

3種の花が入り交じる。

さやをもむと泡立つ。
イラスト・写真・文 おくやまひさし
おくやまひさし プロフィール
画家・写真家・ナチュラリスト。
1937年、秋田県横手市生まれ。自然や植物に親しむ幼少期を過ごす。写真技術を独学で学んだのち、日本各地で撮影や自然の観察を開始。以降、イラストレーター、写真家として図鑑や写真集、書籍を数多く出版。
(BE-PAL 2026年3月号より)







