
ポルトガルの首都リスボン郊外にある海辺の観光地、カスカイスの中心地になんと洞窟が! しかも「地獄の口」につながるという都市伝説も。さっそく探検してきました!
街中の洞窟内部へ
カスカイスは、リスボンのカイス・ド・ソドレ駅から電車で約40分。リゾート感あふれる美しい海辺の都市です。
噂のポソ・ヴェーリョ洞窟(Grutas do Poço Velho)があるのは、駅から徒歩4分というカスカイスの中心地。これまで全く気が付かなかったのですが、白い建物の入り口に「ポソ・ヴェーリョ洞窟」という看板が立っています。


洞窟の発見は1879年ですが、2020年に一般公開を目指してライトや通路の整備がスタートし、2022年に修復・再整備を経て定期的な一般公開が始まったそうです。
入り口に入ると、受付の方がヘルメットを渡してくれました。入場は無料です。
「内部を一度に見学できるのは5人までに制限されているから、しばらく待って」と言われ、待つこと数分。待っている人が他には誰もいなかったので、一人で、いざ入場です。

入り口と出口が別なので戻ってくる人もおらず、中にも人の姿はありません。
ガイドもなく、洞窟に独りきりなんて初めてです!

板の通路が巡らされていて、ライトアップもされているので、迷うことなく見学できます。とても歩きやすいですが、一部、しゃがんで進まなければならない天井の低い場所もありました。

それほど広くはないので、いろいろ写真を撮ったりしても20分ほどで出口に辿り着くかと思います。とはいえ、約160万年前に始まる第四紀に形成されたという洞窟。ロマンですよね。大満足です。
街中の洞窟の正体は……
さて、この洞窟。実は昔から人類に利用されてきたそうです。ただ、「ポソ・ヴェーリョ」は、日本語で「古井戸」という意味ですが、井戸として使われて来たわけではありません。
ヘルメットを返しに入り口へ戻った際に読んだ案内によりますと、「この場所の最も古い利用は後期旧石器時代のソリュトレ文化期(約2万2,000~1万8,000年前)。ただし、出土した遺物がごくわずかであるため、狩猟民が短期間の避難所として利用したにすぎなかった」と考えられるんだとか。
そして、「本格的な利用が確認されるのは、紀元前4千年後半から紀元前3千年にかけて(注:新石器時代および銅器時代)で、この時期には密集した墓地として利用され、多数の副葬品が伴っていました」とのこと!
ネクロポリス(古代墓地)だったなんて!

しかも、国立考古学博物館(Museu Nacional de Arqueologia)サイトによりますと、「これは町で最も重要な考古学的遺跡の一つです(中略)、この場所では 100体以上の埋葬遺構が確認されており、多くの副葬品や石器、陶器、粘板岩の板などの遺物が回収されました」とのこと。
100人以上埋葬されてた遺跡内で、ひとり、はしゃいでいたってことですね。霊感とかなくてよかったです。
ちなみに、ここで発掘された遺物は、近くのカスカイス市立博物館(Museu da Vila de Cascais) に展示されているそうです。

近くといえば、大人気の観光スポット「地獄の口(Boca do Inferno)」があります。ここは、海食洞と断崖絶壁の絶景スポットで、波が岩に激しく打ちつける音と、荒々しい地形が「地獄の口」を連想させる、と言われています。
年配の住民たちは、ポソ・ヴェーリョ洞窟が、この「地獄の口」へとつながっていると信じていたそうです。けれども、カスカイス市役所の考古学部門・歴史遺産課の責任者である考古学者がコメントしているように、「この洞窟に入れば、それが都市伝説に過ぎないことを確認できます」。
「墓場」から「地獄」に繋がっているなんて、ちょっと怖過ぎですもんね……。
なお、私がこちらを訪れたのは12月だったのですが、2025年は5月から9月までの営業へと変更されたようです。ご興味のある方は、あらかじめカスカイス市のサイトなどで営業日を確認してくださいね。