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    2025.08.20

    食パンのミミをアップサイクルしたクラフトビールって?老舗ベーカリー「栄屋製パン」の挑戦

    食パンのミミをアップサイクルしたクラフトビールって?老舗ベーカリー「栄屋製パン」の挑戦
    創業100年のベーカリー「栄屋製パン」が運営するクラフトビール「Better life with upcycle」では、食パンの製造過程で排出される食パンのミミを活用してビールを醸造しています。

    また、摘果や選別除外果実を活用したビールも季節限定で醸造販売しています。この夏、登場したのは、選別除外されたオーガニック伊予柑を活用した「Iyokan Juicy IPA」です。フルーティーでアルコール控えめ。BBQにもおすすめのクラフトビールです。

    パン屋さんがクラフトビールを醸造する理由とは

    食パンのミミと選別除外された伊予柑を使用して醸造したクラフトビール「Iyokan Juicy IPA」。

    Better life with upcycle」は、栄屋製パンが毎日のように排出される数百キロにも及ぶ食パンのミミを、飼料のほかに活用できる方法がないかと考え、2022年6月に誕生しました。

    ブリュワリーをスタートしようと考えた基本テーマは、フードロスの観点から。実は、パンのミミは、サンドイッチを作るときにカットし、家畜などの飼料にしていましたが、パンはミミも内側も同じ小麦でできています。なのに、ミミのほうは廃棄の対象になってしまいます。

    「ラスクにすればいいのになど、いろいろご意見はいただいていますが、1日300kgのミミが出ることから、ラスクにするだけではまったく追いつきません。

    しかも、パンのミミって軽いため、300㎏となると、2トントラック1台分になります。その状況を何十年も目の当たりにして、なにかしなくてはいけないと考えていました。」(Better life with upcycle代表の吉岡謙一さん)

    1日300kgもの食パンのミミが排出されます。

    ラスクは、二次加工品という認識があるため安価になるというのも気になっていたといいます。今回の取材で筆者は初めて知ったのですが、食パンのミミって、重量比で全体の4割も占めているとのこと。

    なおさら、有効活用したいですよね。そう考えていたときに、英国にはパンを原料にしたビールがあることを知ったそうです。原材料は、麦と水と酵母。発酵熟成など、メカニズムも理解できるし、ビールを造ればいいのではないかという考えに至ったといいます。

    「アップサイクルだからではなく、長年おいしいパンを作り続けていたからこそ、飲んでみておいしいビールにこだわっています。添加物なしのプレーンなパンを作っているのでビール造りにも向いていると思っています。」(吉岡さん)

    ちなみに、食パンでサンドイッチを作るときに、ミミを落とすのは日本特有の習慣で、欧州などではミミ付きのサンドイッチが一般的とのこと。日本でもミミ付きサンドイッチを見かけることもありますが、少数派という印象です。

    見向きもされなかったものから喜びを生み出したい

    Iyokan Juicy IPA 350mL 公式オンラインストア価格:627円(消費税込み)

    「Better life with upcycle」では、知り合った醸造家さんたちからのアドバイスをもらい、クラフトビールとしてのおいしさにこだわり、定番のクラフトビールに加え、シーズン限定フレーバーも展開しています。

    シーズン限定というのは、摘果されたり、形やサイズから選別除外されたりした果実などを使用するアップサイクルであることから、そのシーズンにしか醸造することができないからです。

    今年の夏は、「Iyokan Juicy IPA」が登場しました。使用しているのは、愛媛県で有機JAS認証を取得した伊予柑の選別除外品です。有機栽培される伊予柑は希少であるにもかかわらず、傷や形などで、選別除外されてしまいます。

    ヘタがとれているなど選別除外された伊予柑橘の果実を使用。

    そのまま廃棄するにはもったいないと、伊予柑のさわやかでジューシーな味わいを生かしたクラフトビールが誕生しました。第1弾として、2025年1月には、摘果果実を使用し、完熟する前の苦みを生かした「Iyokan Saison」を発売しました。

    そのときから、完熟の伊予柑でも造ってみたいと考えていた中で実現したのが、第2弾となる「Iyokan Juicy IPA」です。アルコール分を控えめの3.5%にし、暑い日にもゴクゴク飲みやすいフレーバーに仕上げています。

    泡が消えてくるとまるで柑橘ジュースのように見えます。

    見た目も、ビールというより、ジュースのような色合いです。一口飲んでみると、柑橘ジュースと思うほどのさわやかさで、とても飲みやすい。ビール特有の苦みがちょっと苦手という人も、これならおいしく飲めるのではないかと感じました。

    パッケージは、職人さんの手を表現したイラストで、「Iyokan Juicy IPA」では、伊予柑の果実を手にし、麦の穂や生地をこねるイメージが表現されています。基本のイラストは変わらず、伊予柑が描かれた部分が、そのときどきの原料によって変わるそうです。

    新たな可能性を形にしていきたい

    今後もさまざまな原料に挑戦するというBetter life with upcycle代表の吉岡謙一さん。

    クラフトビールに使用しているパンのミミは、現状排出量のわずか5%だとか。毎日排出されるパンのミミですが、ビールを醸造するには、約1か月半かかるため、その間にもミミは排出され続けるからです。

    この取り組みを続けていくには収入も必要なため、まずは、多くの人に知ってもらって、飲んでもらうことが大切です。おいしいにこだわることで、いくつかの企業から、この原料はアップサイクルできないだろうかなど、新たな話もきているそうです。

    「果実に限らず、いろいろな原料にも挑戦してみたいです。」(吉岡さん)

    おいしく食べられるのに廃棄されるパンのミミを活用することからスタートしただけに、選別除外されるおいしい食材を処分する辛い気持ちに共感できたことで、さまざまな原料を商品に反映する開発を行なっている「Better life with upcycle」の取り組みは、さらなる広がりを見せてくれそうです。

    お茶や木なども可能性があるとのことで、今後の新フレーバーも楽しみです。まずは、今年の夏、伊予柑のジューシーさたっぷりのクラフトビールを楽しもうと思います。

    Better life with upcycle
    https://upcycle-beer.com/

    林ゆりさん

    ロハスジャーナリスト。フリーアナウンサー。

    関西を中心にテレビ、ラジオ、舞台などで活動後、東京に拠点を移し、執筆も始める。幼いころからオーガニックに囲まれて育ち、MYLOHASに創刊から携わる。LOHASを実践しながら、食べ物、コスメ、ファッションなど、地球にやさしく、私たちにもやさしいものについてWeb媒体やブログで発信中。

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