1年ぶりの再挑戦のため、トレイルの入り口へ【プロハイカー斉藤のナショナルシーニックトレイル踏破レポ vol.26】 | 山・ハイキング・クライミング 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

山・ハイキング・クライミング

2025.05.11

1年ぶりの再挑戦のため、トレイルの入り口へ【プロハイカー斉藤のナショナルシーニックトレイル踏破レポ vol.26】

1年ぶりの再挑戦のため、トレイルの入り口へ【プロハイカー斉藤のナショナルシーニックトレイル踏破レポ vol.26】
トレイルの本場であるアメリカには、連邦政府によって認定されたトレイル(ルート)がいくつかあります。そのうち「シーニックトレイル」と呼ばれるものが全11ルートあり、総距離は約17,800マイル(約28,646km)におよびます。

日本で唯一のプロハイカー・斉藤正史さんは、そんなシーニックトレイル全11ルートの踏破に挑戦中です。2024年9月から10月にかけては、アメリカ東部の「ポトマックヘリテージトレイル」と「ニューイングランドトレイル」に挑みました。斉藤さんによるアメリカのトレイルの最新レポート第26回をお届けします。

トレイル踏破を前に移動問題でやきもき【プロハイカー斉藤のナショナルシーニックトレイル踏破レポ vol.25】 | 山・ハイキング・クライミング 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

[New England Trail Day 0-1]

道のりの険しさから呼び起こされるトレイルの記憶

前日、C&OCANAL TOWPATH(C&O運河トレイル)、GREAT ALLGHENY PASSAGE(GAPトレイル)、そしてLAUREL HIGHLAND HIKING TRAIL(LHHトレイル)の3つをつないだ合計約500kmのポトマックヘリテージトレイルを踏破しました。

でも、達成感や感慨にひたる間もなく、バタバタとバス移動してフィラデルフィアにやってきました。昨年(2023年)、コロナウイルスに感染したため中断を余儀なくされたニューイングランド・トレイルの残り半分を歩くためです。ニューイングランドトレイルの再開地点は、コネチカット州ウィンザーロックという街です。

ということで、ウィンザーロックに行く途中に1泊したフィラデルフィアを、まだ街が明るくなる前に出発します。駅に向かってフィラデルフィアを歩いているとホームレスを何人か見かけ、自分が都会にいることを実感しました。ここまで歩いてきたトレイル沿線の小さな街では見かけなかったので。

アムトラックのフィラデルフィア駅に着くと、早朝から多くの人で賑わっていました。今回予約していたのは、フィラデルフィアからニューヘブンまでの列車と、ニューヘブンからウィンザーロック駅までのバスのチケットです。調べた範囲では最安値だったので、このチケットにしました。

アムトラックは、通勤時間だったり大きな街への直通だったりすると、乗車券が倍以上の値段になることがあります。僕のルートはニューヘブンでの乗り換えが面倒ですが、超円安で節約必須なので仕方ありません。

ただ、たまたまですが、ニューヘブンからのバスは、これから僕が歩くトレイル沿線の街を通るのです。なので、予習や下見というわけではありませんが、GPSデータを起動させて窓外の景色を見ながらバスに揺られていました。

1年ぶりにウィンザーロック駅。

ウィンザーロックの中心部から、2023年にニューイングランド・トレイルを中断したトレイルヘッド(トレイルの入り口)に向かいます。まずは、途中にあるエアポート付近まで3.3マイル(約5.28km)の道のりを進みます。

バスで行こうと思ったのですが、バス用のアプリを削除してしまっていて、しかもどんなアプリだったか覚えておらず、さらに手持ちに細かい現金がありません。仕方なく、歩いていくことにしました。

1年前にも歩いた、空港までの道をとぼとぼと進みます。記憶にあったダラーショップ(日本の100均ショップのような店)に立ち寄りました。念のため、ある程度の食料を確保し、重くなった荷物を背負って空港近くのホテルに到着。チェックインの時間より1時間ほど早く着いたのですが、部屋に入れてくれました。

しかし、このホテルには洗濯機がなく、もっとも近いコインランドリーまで歩いて2時間(!)とのこと。(舌打ちしながら)部屋でウェアを手洗いしました。食事は、前日にフィラデルフィアのスーパーで買ったチキンの残りもので済ませます。翌日は、ホテルの朝食を食べてから出発しました。

宿泊したのは、空港の目の前のDAYS INN。

ホテルから、昨年も歩いた道をたどってトレイルヘッド(トレイルの入り口)に向かいます。ヒッチハイクという選択肢もあったのですが、距離も5.7マイル(約9km)だし、「これからトレイルをスタートする」という気分を高めるには歩いた方がいいかなと考えたのでした。

ニューイングランド・トレイルのおさらい

ニューイングランド・トレイルは、全米で11あるシーニックトレイルの1つで、2011年に連邦政府により指定されました。もともとあった「タコメットモナドノックトレイル」「マタベセットトレイル」「メタコメットトレイル」の3つのトレイルで構成されています。

(参考)https://newenglandtrail.org/interactive-map/

ニューハンプシャー州の州境からロングアイランド湾のビーチまでの道のりで、全行程は215マイル(約346 km)。僕は2023年、マサチューセッツ州・ニューハンプシャー州の州境から歩いたのですが、コロナウィルスに感染してしまいタイムアップ。およそ半分の地点、ブラットレー国際空港近くのイーストグランビーという街の周辺でトレイルを終了せざるを得ませんでした。

ということで、雪辱を果たすべく、ニューイングランド・トレイルの残り半分を歩きます。ただ、残り半分を歩くだけのために渡米するのはもったいないというか、そんな経済的余裕はありません。なので、今年はポトマックヘリテージトレイル約500kmを踏破し、ついでにニューイングランド・トレイルの歩き残した半分も片付けてしまおう、と考えたのです。

1年前も目にした「メタコメットトレイル」の看板から、再びトレイルへ。

今回歩くのは、マサチューセッツ州とコネチカット州の州境に近い、イーストグランビー周辺のニューイングランド地方の森から海岸線までのルート。紅葉の見どころとしても知られるエリアで、季節はちょうど秋。

ただ、去年(2023年)も同じ時期に歩いたのですが、微妙に紅葉が遅れていました。でも、今年(2024年)はペンシルバニアでの紅葉は最盛期を迎えるようで、期待値も高まります。

紅葉のピークに合わせて歩こうとしたのですが、場所にとってはすで散り始めていました…。

アメリカの主なトレイルは、それぞれネット上にコミュニティがあり、情報交換などが行われています。ニューイングランド・トレイルのコミュニティは、フェイスブックで活発に投稿されています。僕も、ポトマックヘリテージ・トレイルを歩いているときからチェックをしていました。

ポトマックヘリテージ・トレイルを歩き終えるころ、山火事のニュースが入ってきました。トレイルが閉鎖になっている、まだ延焼しているといった、先行きが不安になる情報もありました。

しかも、情報をきちんと確認すると、山火事は僕が今回歩くルート上で起きている様子です。心配なことに、日々更新される情報によると、今シーズンのニューイングランド・トレイルのコネチカット州エリアは乾燥していて、水がほとんど枯れているということでした。

地図やガイドブックに記されている給水スポットのほとんどで枯渇していて、事前に必要な水を確保してからトレイルをスタートしたというハイカーもいました。不確定な情報もありますが、どうやら2023年よりも2024年は厳しいトレイルになりそうな見通しです。

トレイル沿いには川があります。でも、上流に大きな集落がある影響で、たとえ浄水器を使っても川の水は飲めません。

ニューイングランド・トレイルの初日は、トレイルに合流して6.1マイル(約9.7㎞)地点の駐車場近くでテントを張ろうかと考えていました。そこは地図を見る限り、私有地ではなさそうでした。

1年前の記憶を思い起こしながらトレイルを進んでいくと、一気に里山の雰囲気になりました。落ち葉で埋もれてトレイルのルートが分かりにくく、両サイドには私有地が続います。分岐に着くたびに地図で方向を確認し、歩を進めていきます。

徐々にアップダウンが増え、道のりは急登に変わります。さらに標高を上げ、アップダウンを繰り返していきました。

そうだった!ニューイングランド・トレイルは、アパラチアン・トレイルと同じく、直登や急直下を繰り返す道のりだったなと思い出しました。

先述したように、給水設備に頼れないかもしれないという情報があったので、歩き始める前に入念に給水スポットをチェックしました。例えば、初日の宿泊予定地の数マイル手前にある給水場は、数週間前に水を汲んだという記録がありました。今日はそこで水が補給できる可能性が高いと考えていました。その上で、念のためホテルで4リットルの水を補給してから、出発しました。

食料だけでなく飲み水もあるので、いつもよりバックパックが重くなっています。せめて、水の分だけでも荷物が軽ければ…などと考えても仕方がないことを思いつつ、アップダウンの道のりを進んでいきます。

そして、どうにか初日のキャンプ予定地付近に着きました。でも、やはりというか、想像以上というか、2024年のニューイングランド・トレイルも、楽々と歩けるようなイージーな道のりではありませんでした…。

一歩森へ入ると落ち葉がびっしり。

|歩き始めて1日目
|残り104マイル(約166km)

ニューイングランド・トレイル公式サイト

ナショナルシーニックトレイル踏破レポのバックナンバーはこちら

斉藤正史さん

プロハイカー

2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。また、BE-PAL.netにて「TOKYO山頂ガイド」を連載。

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