
今回は、春から夏までお花見が楽しめる山小屋について。
春から夏まで様々な花が楽しめる
お花見ハイクをさらに楽しみたいなら、春から夏にかけて花々が眼前に咲き誇る、絶景の山小屋への宿泊がおすすめ。普段とは違う花咲く山の絶景を、のんびりと満喫しよう。
春から夏にかけて、山はもっとも華やぐ
待ちに待った麗らかな春は意外と短いもの。3月から4月にかけてあっという間に桜前線が北上し、1週間でも遅れると葉桜のお花見になってしまう。
しかし、春の息吹を満喫したいなら、桜に限らず山野草にも目を向けてみると世界が一段と鮮やかに。平地から少し目線を上げて山へ足を運べば、そこには多彩な春の表情が広がっている。
たとえば1000m以下の低山なら、麓に咲く桜やツツジ、カタクリなどが満開になる様子を山頂から眺めるのも一興だ。一方で雪解けが遅い高山では、平地が初夏を迎えるころに高山植物が開花。
立木に咲く花を見上げる代わりに、足元に一輪ずつ凛と咲いている小さな花たちの姿に視線を向けたい。普段目にするのとは、まったく異なる春の世界に出会えるはずだ。
そんな“山の春”を十二分に楽しむひとつの方法として、お花見が楽しめる山小屋をピックアップ。宿泊すれば、夕日や早朝の光に照らされた花畑を独り占めできる。日帰りでは味わえない、大自然の静寂と山ならではの開放感を堪能できるのは大きな魅力だ。
春から夏にかけて、山はもっとも華やぐ。いつもとは違うお花見を、各地の山小屋で楽しんでみてはいかがだろうか?
雪解けが進む初夏、高山植物が咲き始める
富山県|立山
立山室堂山荘
素泊まり 9000円~
所在地:富山県中新川郡立山町芦峅寺室堂平/標高2450m
2025年営業期間:4月15日~11月23日
予約:https://www.yamatan.net/hut/tateyamamurodosanso
登山や観光の拠点として賑わう立山室堂山荘は、アルペンルートの室堂ターミナルから徒歩10分。過酷な登山をせずとも絶景の立山連峰や足元の花畑を楽しめる、夢のような山小屋だ。
地面を覆っていた雪が姿を消すころには、あたりはミヤマキンバイやハクサンイチゲ、イワカガミなど、色とりどりの高山植物に彩られる。中でも、室堂から天狗平に広がる「チングルマロード」は圧巻。可憐な白い花が並ぶ天然の花畑が、訪れる人々を魅了する。
室堂では例年7月中旬以降がチングルマの最盛期。白ではなく、淡いピンクの花弁のタテヤマチングルマにも出会える。
雄大な景色の中で愛でる小さな花々
長野県|白馬大池
白馬大池山荘
素泊まり 1万1000円~
テント泊 1張り1名 4000円
所在地:長野県北安曇郡小谷村千国/標高2380m
2025年営業期間:6月中旬~10月中旬
予約:https://www.hakuba-sanso.co.jp/
TEL:0261(72)2002(9:00~16:30)
栂池自然園から徒歩約4時間の白馬大池山荘は、白馬岳や雪倉岳への縦走拠点として人気の小屋。青く澄んだ白馬大池の湖畔には、7月上旬ごろからハクサンコザクラなどの色鮮やかな高山植物の花々が咲き誇り、天空の花園のような絶景が広がる。
午後の早い時間に到着して、大池でのんびりと花を愛でれば、登山の疲れも和らぐこと間違いなしだ。
乗鞍岳と白馬岳の間に広がる、自然が生んだ箱庭。白馬大池の西畔の、赤い屋根が目印だ。
宿泊者の夕食に提供されるカツカレーは山荘の名物。ご飯とカレーはなんとおかわり自由。
尾瀬ヶ原に咲くミズバショウを小屋の窓から楽しむ
群馬県|尾瀬
弥四郎小屋
1泊2食付 1万2000円~
所在地:福島県南会津郡檜枝岐村燧ケ岳/標高1400m
2025年営業期間:5月中旬~10月下旬
予約TEL:027(221)4122(8:00~18:00)
尾瀬ハイキングの中心部、尾瀬ヶ原の東端に佇む弥四郎小屋は、建物内から湿原と至仏山を拝むことができる最高のロケーション。標高1400mの湿原では季節ごとにさまざまな花が目を喜ばせてくれるが、尾瀬といえばなんといっても水芭蕉。
5月下旬から6月にかけて、雪解け後の湿原に白いキャンドルのように群生する姿は比類のない美しさを見せてくれる。湿原ならではのお花見を、老舗の小屋に宿泊しながらじっくり堪能したい。
客室やお風呂からも尾瀬ヶ原の美しい風景が楽しめる弥四郎小屋。名物となっている湧き水で淹れたコーヒーや手作りパンを片手に、ぜいたくな時間を過ごしたい。
丹沢のミツバツツジをハイキングで眺める
神奈川県|丹沢山
みやま山荘
素泊まり 6000円~
所在地:神奈川県愛甲郡清川村宮ヶ瀬/標高1567m
2025年営業期間:通年営業
予約TEL:090-2624-7229(9:00~19:00)※宿泊日の2か月前より予約可能
丹沢山頂付近に建つみやま山荘は、富士山を望みながら丹沢山塊を縦走する登山客に人気。小屋の前にはマメザクラが自生し、例年4月中旬から5月上旬ごろ、小ぶりで可憐な花が登山者の目を楽しませてくれる。
新緑の山裾を歩き始めると、関東の山地に多いことから名付けられたトウゴクミツバツツジやイワウチワが姿を現わす。標高が上がるにつれ移り変わる景色は、まさに自然が生み出したグラデーションだ。
四季折々の景色を楽しみたいとやってくる登山客のために、通年営業を行なっている。
春の訪れを告げるキクザキイチゲ。キンポウゲ科の小さな花で、キクのような華やかさが魅力。
一目百万本のツツジ大群落
奈良県|葛城山
葛城高原ロッジ
1泊2食付 1万1000円~
テント泊 1張り1名 500円+入場料300円
所在地:奈良県御所市櫛羅2569/標高959m
2025年営業期間:通年営業
予約:https://www.katsuragikogen.co.jp/
金剛山の北に連なる大和葛城山のロープウェイ山頂駅から徒歩約15分。登山客だけでなく観光客にも人気の山小屋だ。合宿などにも利用できる国民宿舎で、リーズナブルな宿泊料金も魅力。
葛城山では春になると、「一目百万本」と称されるツツジの大群落が山頂を真紅に染め、圧巻の景色が広がる。ハイキングで花々を間近に楽しむのはもちろん、ロッジから山裾を眺め、ゆったりと山時間を過ごせる。
1階の個室は板張りでロッジのような雰囲気。大浴場もあり、山登りの疲れをいやしてくれる。
入浴施設や食事処は、宿泊者以外に日帰り客も利用可能。名物のかも鍋もぜひ味わいたい。
※構成/鈴木純平
(BE-PAL 2025年4月号より)
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※一部地域では発売日が異なります。
※電子版には特別付録が付きません。