![美しく燃える森の海を見た~カナダ・オンタリオの紅葉~](https://www.bepal.net/wp-content/uploads/2024/09/85569983366d941fd883069_39029765.png)
WIND from ONTARIO~森の海、水の島~
#5 美しく燃える森の海
Tomoki Onishi
撮影・文/尾西知樹
トロント在住のフォトグラファー、マルチメディア・クリエイター、カヌーイストでサウナー。オンタリオ・ハイランド観光局、Ontario Outdoor Adventuresのクリエイティブ・ディレクターを務める。カナダの大自然の中での体験とクリエイティブを融合させたユニット magichours.caを主宰。
見渡す限り、地平線の彼方まで続く紅葉の大地。高い山の全くないオンタリオ州独特の森と湖が織りなす絶景。まさに、植物たちがうねる大海原だ。
この紅く染まる広大な森は、人々の営みの歴史とも深く結びついている。多くの開拓者が入ってきた交易の時代、ここは松科のホワイトパインが林立する原始の森だった。ホワイトパインはまっすぐに生長し、船のマストや建材に最適なので大量に伐採され、イギリスへ運ばれた。
大規模伐採を憂慮した人たちによって自然環境保護運動が行なわれ、1893年にカナダ最古の州立自然保護区としてアルゴンキン州立公園が制定された。伐採後は、早く育つ植生の木々、ポプラやアスペン、シラカバやブナ、オーク。そしてシュガーメープルやレッドメープルなどのカエデの木々が混成する色彩豊かな森が誕生した。この森は、甦った再生の森なのだ。
カナダ西部で見られる、ポプラやアスペン、タマラックなどの「黄葉」とは違い、シュガーメープルの濃いオレンジやレッドメープルの赤などが鮮やかに色づく「紅葉」の森だ。そして、カナダ名産のメープルシロップは、シュガーメープルの樹液から作られる。この森は、人々に甘ーい笑顔ももたらす、人と自然の共生のシンボルだ。
紅葉の森の中を歩いているとき、木々の下層はまだ色付いていないのに、見上げると上層の林冠はよく色付いているのを目にする。木々と太陽のコミュニケーションが見えてくる。
そこでドローンを飛ばしてみると、想像を絶する光景が広がっていた。フォトグラファーの特権、秋には鳥になった気分で、美しく燃える森の海を浮遊する。
アルゴンキンのルックアウトからの眺望、空と湖と森、色鮮やかなコントラスト。
シュガーメープルの大樹。土壌の質によって、オレンジや黄色の葉に変化する。
森の散策中、足元に紅一点。色鮮やかなシュガーメープル、カナダの国旗の葉。
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動画で見られます!
(BE-PAL 2024年10月号より)