日本とはキャンピングカーの仕様もだいぶ違うので「給水タンクはどれほど持つの?」「給水や排水作業はどこでどのようにするの?」「トイレは臭くならないの?」「トイレの処理はどうするの?」などと気になる人もいるかと思います。そこで今回はヨーロッパで一般的な仕様のキャンピングカーを例に、水回り装備、給排水、トイレ事情を紹介します。
ヨーロッパでは、手洗い、食器洗い、シャワーまで室内で完結できるキャンピングカーが人気
私は旦那と2人でヨーロッパを周遊中で、イタリア製の中古キャンピングカーで暮らし始めて1年8カ月が経過しました。最初は普通の家とは違うキャンピングカーライフに不慣れだったものの、今ではだいぶ慣れ、いわば「移動するマイホーム」で快適な毎日を送っています。
なに不自由なく快適な車中泊ができる最大の理由が、キャンピングカーに搭載された水回りの設備によるものです。ヨーロッパのキャンピングカーはサイズも大きめで、多くの車種に給水設備が備わり、自炊や食器洗い、手洗い、歯磨きだけでなく、シャワーも浴びられます。
キャンプ場やRVパークの設備を利用する必要もなく、キャンピングカーのなかだけで水回りの作業が一通りできるので大変便利です。車外に出る必要がないので、とくに雨の日や寒い日などは、とてもありがたいです。
キャンピングカーのなかで使う水はどこからくるの?
キャンピングカーの水まわりは、いつでも好きなだけ使える自宅の水道と違い、給水タンクにためた水を使うため限りがあります。給水タンクは車の床下に設置されており、容量はキャンピングカーによって異なりますが、100〜150Lが標準的です。電動ポンプを使って、給水タンクから水を汲み上げる仕組みになっています。
私たちの車の給水タンクは150Lあります。毎日、節水を心がけながらも、シャワー、自炊、歯磨き、トイレなどで水を使用しても、2人で5日ほどもちます。1人あたり1日15L使用している計算です。東京都水道局の調査による平均的な1日の水の使用量は、1人あたり約214L。そう考えると、けっこう節水に貢献できていると思いました(ただし飲料水は別)。
給水作業は5日に1回
5日に1度、給水タンクに水を入れるために、給水のできる場所へ行く必要があります。給水場所は、RVパークやキャンプ場、キャンピングカー施設など。そこにある水道から給水します。国によって異なりますが、ヨーロッパの水道水の多くは飲用できます。
給水は、水道施設と、車の給水口に専用のホースをつないで行ないます。その施設の水圧にもよりますが、150Lタンクを満たすのに5~10分ほどかかります。
排水は「ダンプステーション」で処理できます
キッチンのシンクやシャワーから流れる使用済みの汚水はキャンピングカー下にある「グレータンク」と呼ばれる排水タンクに貯められます。こちらも給水と同じく5日に1回、専用の排水処理場へ行き、そこで処理する必要があります。排水をそのまま車外に流し出したり、道路の側溝に流すような行為は絶対にしないでください。
多くの排水処理場には、地面に大きな排水溝があり、そこに排水を流します。処理方法は、まずキャンピングカーの床下にある排水口が、排水溝の真上にくる位置に車を動かします。そこで排水レバーを引けば、汚水が出て処理できます。
キャンピングカーのトイレ事情
ヨーロッパでは、日本のように公衆トイレが多くないので、キャンピングカーのトイレ設備は必須です。主に「カセット式」と呼ばれるトイレが一般的で、日本のキャンピングカーでも使われているタイプです。車両に便座などのトイレ本体が固定されていて、排泄物は「カセット」と呼ばれるタンク内に収められ、処理する際はこのタンクを車の外から取り出す仕組みなので車内を清潔に保てます。
使用方法は、開閉レバーを開き、用を足したあとは、洗浄ボタンを押して、洗浄してから開閉レバーを閉じるだけ。自宅のトイレに近い使い勝手です。
気になるトイレの臭いは?
一番気になるのが臭い問題だと思いますが、トイレのタンク内に専用の消臭剤を入れるのでほとんど臭いは気になりません。この消臭剤は消臭効果に加えて、固体を分解してから青色の液体に着色してくれるので見た目もよく、カセットトイレを衛生的に保てます。
いろいろなメーカーから消臭剤が発売されていますが、日本でも購入できる「セットフォード/アクアケムシリーズ」は消臭効果も高いのでおすすめです。
カセットトイレの処理方法
カセットトイレの容量は17Lあり、2人で2〜3日ほど使えます。汚水処理は、RVパークなどにある専用の処理場(ダンプステーション)で行ないます。
車の外側にある扉を開いて汚水タンクを取り出し、黄色いキャップを開けて汚水をダンプステーションへ流します。汚水を流し終えたら排出口から水を入れ、カセットを揺らしてタンク内を洗浄。洗浄し終わったら消臭剤を入れて元の場所へ戻せば完了です。はじめは少し抵抗のある作業ですが、消臭剤のおかげであまり臭いもなく、慣れれば5分ほどでできる作業です。
給水・排水・トイレ処理はすべて「ダンプステーション」で
今回紹介したキャンピングカーの給水や排水、トイレ処理作業はすべて「ダンプステーション」と呼ばれるキャンピングカー専用施設で行なうことができます。このような設備がヨーロッパのいたる所にあるので、快適なキャンピングカー旅ができます。
国によって「キャンピングカーステーション」「キャンピングカーサービスエリア」など、名称は異なりますが、「キャンピングカー」と「下に向いた矢印」がある標識が目印です。
このようなダンプステーションや車中泊スポットは「Park4night」というアプリで見つけています。マップ上でその施設の詳しい情報を写真やレビュー付きで紹介してくれるので、ヨーロッパの車中泊旅には欠かせない”神アプリ”です。
車内とは思えないほど快適な水回りが整っているヨーロッパのキャンピングカー
ヨーロッパでは日本とは異なり、公衆トイレや有料の入浴施設もそこまで多くないので、キャンピングカー内に水回りの設備を整える必要がでてきます。ですが、車内の水回り設備が整っているおかげで、旅のルートも広まり、どこでも好きな場所で車中泊できることが最大のメリットとなります。また、ヨーロッパで車中泊を楽しむ人の多くは、なにもない大自然のなかでアウトドア体験を楽しむことを好むので、キャンピングカー内で完結できる生活インフラが不可欠なのです。