
そもそも車内スペースの限られるバンコンや軽キャンパーでは、設備はあっても実際は車内で調理をしない、マルチルームがないのでトイレやシャワーをしない、というユーザーも少なくないため、ベンチレーターをわざわざ設ける理由もないかもしれません。私も車内ではほぼ加熱調理はしませんし、ペットも同伴せず、ポータブルトイレを使うのは夜間の数回だけ。
しかし夏の車中泊ではベンチレーターが大活躍。これなしでは車中泊の機会が半分になるのではないかというほど愛用しています。その用途は、実は「暑さ対策」です。
家庭用エアコンやクーラーなしでの車中泊

近年では比較的コンパクトなバンコンでも家庭用エアコンやDC12Vクーラーが標準装備、または簡単にオプション装備ができるモデルが多く見られます。私が現在乗っているナローハイエース・バンコンを契約した平成の終わりには、そもそもオプションとしての用意もなかったので隔世の感があります。いかに暑さ対策が求められているか、そして冷房技術が進歩しているか実感します。
家庭用エアコンもクーラーもない私のクルマでは、エンジンを停めた状態で車内を冷やす方法がありません。そのため盛夏の1か月間ほどは車中泊はお休み、完全なオフシーズンとなるのが恒例です。とはいえ、今年も7月後半までは「エアコンなし車中泊」をしていました。
旅先は東北地方が多いため関東以南よりはだいぶ涼しいかと思いますが、それでも夜の車内は30℃超え。何も対策をしないと黙っていても汗が流れ、寝ることはおろか、くつろぐことも難しいです。そんなときに実践している方法です。
夏の夜のルーフベンチレーターの活用法

必須アイテムは①ベンチレーター、②網戸、③クリップファンの3つです。使用ベンチレーターはMAXXFAN(マックスファン)リモコンタイプで、ルーフベントとベントカバーが一体化したモデルです。詳細は過去記事でレポートしていますが、日本でも手に入りやすい定番ブランドです。

まず、ベンチレーターは「排気(OUT)」にします。過去のクルマでベンチレーターが就寝スペースの直上にあったときは、「吸気(IN)」にして扇風機代わりに使っていました。
それもある程度は効果的なのですが、2ルーム仕様の現在のクルマではベンチレーターが別室にあります。私と同じくベンチレーターがマルチルームにある、ソーラーパネルと干渉しないようルーフの端にある、といったクルマでも使える方法になります。

ベンチレーターをOUTにしたら、続いてクルマのどこかの窓を開けます。一般の住宅では換気扇の「対角線上の窓」がよいとされますが、狭い車内では理想通りにはいきませんから、人の着席場所などがよいでしょう。このとき網戸は必須です。夏の夜には蚊や羽虫が多くいますし、空気と一緒に車内に流れ込んできてしまうためです。

私が使っているのはアイズの「ロールインバグネット」。過去記事でもご紹介しましたが、簡単に後付けできて、使わないときは面ファスナーだけ残して取り外せるアイテムです。車外に干渉しないことから愛用しています。

このとき、窓はごく細く開けることがポイント。暑いとついつい全開にして外気を入れたくなりますが、細く開けたほうが風圧が増して涼しさを感じやすくなります。ベンチレーターの出力60%ほどでも、ティッシュがなびくほどの風が生まれます。防犯面でも窓はあまり大きく開けたくないので、駐車場などでの仮眠にも適しています。
もし窓がちょうどよい位置にあれば、これだけでも扇風機のようになり、かなり涼しいです。ただし、風の通り道になっていない場所は暑いまま。そこで家電量販店などで買えるクリップファン(小型扇風機)をプラス。
車内にはアシストグリップや家具など、クリップできるところがたくさんあるので適宜配置します。ファンの向きはなるべく風上から風下へ、流れを邪魔しない方向にしつつ、身体に風が当たるようにします。

私が使っているファンは安価なものですが、首振り機能があればもっとよいなと感じているところなので、近々バージョンアップするかもしれません。

せっかくの風もカーテンにあたると勢いが減じてしまうので、生地を折りたたんで通り道を作っておくなど工夫して就寝します。夜半になって冷えるようなら、クリップファンをタイマーにしておく、カーテンを閉じる、窓を閉じるなどで段階的に風量を減らせます。
ベンチレーターもクリップファンもそれほど電力を使うものではないので、私の105Ah×2台のサブバッテリー体制では、一晩中使っても問題ありません。
無理せずホテル泊も

なお私が試した限り、この方法では室温自体は下がりません。あくまで体感温度が下がる、というイメージです。
カーエアコンで寒いほど車内が冷えたと思っても、エンジンを切った瞬間からむわっと暑くなる感覚と似ています。停止したばかりのエンジンや、太陽の熱をため込んだボディなど熱源があるためでしょう。全体の室温を下げるには、時間をかけてボディそのものが冷えないといけません。
また、「車内よりも外気が涼しい」ときにもっとも効果を発揮するので、車外にいても息苦しいほど暑い、いわゆる熱帯夜には使えません。サウナのような熱風が車内に入ってくることになります。そんな日には私も無理せずホテル泊とします。

逆にいうと秋口から翌年の初夏まで「外のほうが涼しい」気候なら、かなり長いシーズン使える方法です。RVパークには温泉併設のところも多いですが、汗が引かずクルマに入りたくない、けれどアイドリングは避けたい、といったシーンでもよく活用しています。寝るときに暑いと感じても、夜半には寒いくらい車内が冷えることもあります。
連日のように「危険な暑さ」が報道される今年の夏。車中泊で熱中症というのも決して非現実的な話ではありませんから、暑さ対策をしっかりすることと、適切な判断でホテルなどに避難すること、併用して上手く対処していきたいです。