WIND from ONTARIO~森の海、水の島~
#4 森と湖の原野で、ととのう
世界中がコロナ禍でカナダもロックダウンとなった2020年。カヌーにサウナテントを積んで森の中へ行けば、誰の目を憚ることなく「好きなだけサウナを楽しめる!」と、閃いた!
オンタリオ州は、カナディアンシールド(カナダ楯状地)と呼ばれる20億年ほど前に形成された広域の岩盤層の上にある。氷河期に削り取られた岩盤層が平地となり、無数に点在する湖が生まれた。
岩盤層の上の薄い土壌がフィルターとなり、湖に溜まる水は湧き水と同じく飲むことができる。だから、オンタリオのカヌーイストは、湖の水を汲み飲む。
カヌーでしか辿り着けないキャンプサイトで、サウナテントと薪ストーブを設営する。十分に熱せられたサウナストーンに水をかけ、蒸気を肌に感じながら森の気配に耳を澄ます。
そして火照った体でそのまま、天然の水風呂へダイブ! 森の滋養が溶け出している湖の優しい水が心地よい。その後は、もちろん外気浴。誰もいない原野に身を預け、全開放のディープ・リラックス。
水分補給に、湖の水を飲み、体の内と外から満たされる。サウナ浴を繰り返すと、やがて恍惚とした多幸感が全身を包み、風の音や遠くの水鳥の声、森がゆらめいて意識と溶け合う……。
ととのった〜〜〜っ!!!
カヌーの旅も水に焦点をあてると、全く違う世界が広がっていた。サウナで水への感度が上がった状態で水に入れば、同じエリアの湖水でも、地形、土壌や環境によって、水の色や温度、成分、味に至るまで違うのだ。
これは数多ある湖の個性を愛でるという、まさに水に逢いにゆく旅なのだった。
湖に浮かぶ小さな島で、貸し切りのカヌーサウナキャンプ。他の人の気配はなく、聞こえるのは風や森、水の音だけ……。
ととのうまでの最短距離の導線を考えて設営っ! ととのい椅子も準備万端っ!! 手作りしたサウナハットも持参っ!!!
サウナテントから飛び出し、そのまま湖へどぼ〜んっ! 湧水クオリティーの水が、火照った体に染み入る。全開放!
夕日に照らされて、最高のととのいへ。感覚の解像度があがり、森や遠くの鳥の声を感じながら、ただただ感謝な時間。
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Tomoki Onishi
撮影・文/尾西知樹
トロント在住のフォトグラファー、マルチメディア・クリエイター、カヌーイストでサウナー。オンタリオ・ハイランド観光局、Ontario Outdoor Adventuresのクリエイティブ・ディレクターを務める。カナダの大自然の中での体験とクリエイティブを融合させたユニット magichours.caを主宰。
(BE-PAL 2024年9月号より)