大きなイチョウの木に守られている「地蔵寺」は、勝負の仏様が眠る寺。奥の院に五百羅漢があることから「羅漢さん」とも呼ばれる。本尊は勝軍地蔵菩薩で、本堂にある延命地蔵像の胎内にある秘仏。源平合戦のとき、源義経が戦勝を祈願したと言われるほか、古来多くの武将が戦いの前に勝利を祈願して立ち寄ったといわれる。戦に勝つ、または戦いから無事に生還すると信仰されてきた。

弘法大師が自ら植えた樹齢800年の「たらちね銀杏」。この日は白装束のお遍路さんたちが一斉にお経をあげていた。お遍路のためのバスツアーもあり、バスで88か所をまわれば1週間ほどで結願できる。

地蔵寺の奥の院「五百羅漢堂」(拝観料200円)。コの字型をした羅漢堂には木製の羅漢像が並んでいる。自分の知り合いに似ている像が一つはあるといわれる。

本堂の脇にある「おびんづる様」。釈迦の弟子にあたる賓頭盧尊(びんずるそん)の像で、自分の体の悪いところを撫でると治ると言われる。頭と顔をなでておいた。

お遍路さんをおもてなししてくれるカフェ「ブリッサ」の店主。地蔵寺から南へ10分ほどで着く。歩き遍路で何度もまわっている経験から、「お遍路に効率的を求めると、ご利益がなくなる」などいろんなアドバイスをくれる。

カフェ「ブリッサ」のお接待のお菓子。格安で泊まれる善根宿などの情報もくれる。カフェのある撫養街道沿いには「溝渕工務店」があり、こちらのプレハブ小屋は300円で泊まれる。
煩悩⑤
ただ歩きたい
朝から晩までデスクの前に座っている日々が続くと、無性に体を動かしたくなる。パソコンを打つ指や席を立ってトイレに行くなど、一日の運動量は知れている。お給料のためにじっと同じ場所にいなければいけないのか……という葛藤は日に日に大きくなり、会社員の仕事はやめた。贅沢は言わない。一日中好きなだけ歩きたい。この思いが根本にあるから、お遍路を始めたのだった。
(つづく)
☆プロフィール☆
重野友紀 (しげの ゆき)
フォトグラファー。ハンで押したような日常生活が苦手で、常に変化を求めている。安住の地はいずこ……。