BE-PALだからできた独占インタビュー!辰野勇会長が「モンベルの50年」を語る | アウトドアブランド 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル - Part 2
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    2023.05.13

    BE-PALだからできた独占インタビュー!辰野勇会長が「モンベルの50年」を語る

    僕も仲間も山ヤは貧乏だっただからこそ、いいモノを安く

    ――ユーザー目線だと、リーズナブルな価格設定も魅力です。

    辰野:根底にあるのは、僕が山ヤだったころの苦い思い出です。僕が若かったころは、山ヤは本当にお金がなかった(笑)。僕自身も仲間も高価なヨーロッパ製の道具にはなかなか手が出ませんでした。それが染みついていて、山ヤができるだけ買いやすい価格に設定したいという思いがあるんです。だから、いいモノであることは大前提ですが、それをリーズナブルに提供するのが創業以来の基本コンセプトになっています。

    価格設定については、創立20周年の1995年に定価を下げるという「価格リストラ」も断行しました。当時の登山用品店ではメーカー希望小売価格(定価)の2割引から3割引が常識だったのですが、それなら小売店への卸価格はそのままに定価1万円を最初から定価7000円にして、無用な値引き競争を終わらせようと考えたのです。

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    創業5年後 社員は12人に。

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    積み重ねてきたさまざまなコト

    辰野:この価格リストラと表裏一体となるのが’90年代に本格化した直営店の展開です。それまで、メーカーは製造に専念し、販売は問屋・小売が担うというのが日本の常識でした。しかし、アメリカをはじめ世界では製造直売が拡大しており、いいモノを安く提供するためには直販が必要でした。

    ――商品開発だけでなく、商品の消費者への届け方に関してもオリジナルな挑戦をしてきたわけですね。モンベルクラブもユニークですよね。

    辰野:’85年に始めたモンベルクラブは、年会費1500円の有料会員制度です。現在は入会すれば、ポイント加算や提携フレンドショップでの割引などさまざまな特典を受けられます。単なる顧客の囲い込みではなく、自然を愛しモンベルを支持してくれるユーザーと価値観の共有を目指した、いわばモンベルのファンクラブなんです。当初はわずかな特典しかありませんでしたが、創業30周年の2005年時点での会員数は6万5000人。2021年6月に100万人を超え、現在は110万人となりました。

    ――110万人! それだけ多くの方がモンベルのファンになったのは、第一に素材にこだわったモノ作りへの支持があったからなのだと思います。でもモノだけではなくて、コトへの共感もあるのではないでしょうか。たとえば、アウトドア義援隊の活動を見て、「モンベル、がんばれ!」みたいな。

    辰野:そうかもしれませんね。実際、海外市場に挑戦してきてわかったのは、モノがいいだけでは海外では売れないということです。モノの機能性・品質なら絶対に負けない自信があるのですが、海外では苦戦しているといわざるを得ません。アウトドアというビジネスは属地的な要素が大きくて、アメリカであればアメリカのブランドが圧倒的に強いんです。もちろん販売網の差もありますが、アウトドアグッズはそのブランドの歴史や背景といったコトも含めた上で買われるからです。

    50年後も社会から必要とされる会社であってほしい

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    ――日本国内では、モンベルはさまざまなコトを積み上げてきましたよね。

    辰野:ただ、振り返ってみたらいろいろなコトをやってきたというだけで、それを積み上げようと狙っていたわけではありません。「これをやったらモンベル製品がもっと売れるな」なんて一切考えていませんよ(笑)。やる理由は、おもしろいからであり、後で後悔したくないからです。

    アイガー北壁のパートナーである中谷三次と冬の鹿島槍ヶ岳北壁に向かったときもそうでした。カクネ里に雪崩がばんばん落ちる中、突っ込むか引き返すか迷ったんです。そこで基準になったのは、後で後悔しないかどうか。「死んでもいいからこのチャンスにかけよう」と覚悟を決め、挑み、初登攀に成功しました。人生の岐路に立ったときの判断基準が「後悔しない」なのは、僕が山ヤだったからでしょう。

    阪神・淡路大震災がきっかけで始まったアウトドア義援隊もそうでした。あのとき、「これは大変なことになった。一番大事なものは命。何をおいても助けなければいかん」と、現場に入りました。会社が潰れてもいいと思って、1か月ほぼ事業を停止しました。そうしなければ後悔すると、山の遭難救助の体験でわかっていたからです。その支援活動を通して災害にアウトドア用品が役立つとわかり、その後も災害支援を続けることにしたんです。

    ――トレッキングやカヌー、自然観察などのツアー・イベントを開催しているモンベル・アウトドア・チャレンジもコトのひとつですね。

    辰野:モンベル・アウトドア・チャレンジは、モンベルがガキ大将になって、「こんな楽しいことがあるぞ! この遊びをしようぜ! この指とまれ!」といっているような事業です。これは、モンベルを立ち上げる前、山岳ガイドにもなりたかった僕の夢の実現でもあります。だから、僕自身もガイドしますし、お客さんと共有する時間を楽しんでいます。そうやっておもしろいからやっていた結果、アウトドアには「子供たちの生きる力をはぐくむこと」や「健康の増進」といったミッションがあることに気づかされました。アウトドア義援隊もモンベル・アウトドア・チャレンジも〝狙って〟始めたコトではないんです。

    ――最後にモンベルの未来について伺います。もうすぐ創業50周年を迎えますが、50年後のモンベルはどんな姿をしているのでしょうか?

    辰野:そんなの知らんがな、ですよ(笑)。だって、50年後に僕はこの世にいないですから。でも、もし50年後もモンベルが存在し続けているとしたら、その条件はふたつあるということだけははっきりいえます。ひとつは、採算が取れていること。これはあたり前ですよね。事業として採算が取れていなければ、会社はいずれ潰れます。

    もうひとつの条件は、モンベルという会社が50年後も社会から必要とされていることです。モンベルはアウトドア用品のメーカーですから、モンベル製品を買ったユーザーがそれをフィールドで使って、「良かった」、「助かった」と気に入ってもらえるようなモノ作りを続けていなければなりません。その上で、モンベルがなくなったら寂しいと思ってもらえれば、社会から必要とされているといえるのではないでしょうか。これは、「モンベルは社会貢献をしているから必要だ」といった大上段に構えた話ではありません。「モンベルがあったほうが楽しいよね」と応援したくなる会社であることが、僕は大切だと思うんです。

    このふたつの条件が車の両輪です。いくら儲かっていても社会のためにならなければ消えていきますし、いくら社会のためになっていても採算が取れない会社は消えていきます。車の両輪がバランスよく機能していれば、モンベルは50年後も走り続けているでしょう。僕はそうなってほしいと願っています。

    これぞモンベルの原点!画期的な3つのギア

    40年以上のロングセラー

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    1979年に発売され、現在も販売されているムーンライトテント。「月明かりの下でも素早く設営できる」吊り下げ式。

    完全防水で耐久性も抜群

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    1976年発売で、大ヒットしたハイパロン・レインギア。コインで50回こすってもコーティングが剥がれなかった。

    創業翌年に発売された第1号製品

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    1976年に発売され、飛ぶように売れたダクロン・スリーピングバッグ。中空繊維を封入し、軽量コンパクトで暖かく、濡れにも強かった。

     

    成長を支えた7つの決断

    1  28歳で商社を辞め、資本金ゼロからの起業

    2  創業3年目で海外市場に進出

    3  売り上げの1/4を占めたパタゴニアと決別

    4  大阪駅構内に直営店1号店を出店

    5  定価を3割下げる価格リストラ

    6  有料会員組織「モンベルクラブ」の発足

    7  アウトドア義援隊の活動を開始

    ※構成/鍋田吉郎 撮影/奥田高文

    (BE-PAL 2023年4月号より)

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