BE-PALだからできた独占インタビュー!辰野勇会長が「モンベルの50年」を語る | アウトドアブランド 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2023.05.13

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    たつの・いさむ  1947年大阪府生まれ。高校卒業後、登山用具店、商社勤務を経て28歳で㈱モンベルを設立。アイガー北壁を登り、黒部川をカヌーで初下降した冒険家でもある。

    およそ50年前、7坪の事務所からスタートしたモンベルが、日本最大のアウトドアブランドに成長した理由、そして50年後の未来予想図を創業者・辰野会長が語り尽くす!!

    新素材に出合い、モノ作りにはまった

    「ここは繊維の街なんです」
     
    大阪市西区にあるモンベル本社。われわれを会長室に招き入れた辰野勇会長は、窓の外を指し示した。

    ――1975年に会社を設立したのもこの近所だそうですね。

    辰野:ユニチカ、帝人、繊維問屋……。ここは日本の繊維のキャピタルなんです。これこそ、モンベルがこの街にこだわる理由です。とはいえ、設立当初は雑居ビルの中の7坪の一室。机が3つと電話が1台あるだけでした。取引先がないから電話も鳴らず、ガラーンとした部屋がシーンとしていましたね(笑)。

    ――どうして起業しようと思ったのですか?

    辰野:寿司屋の息子に生まれ、両親が働く姿を見て育った僕は、大人になったらやりたい仕事を自分でやるものだと子供心に思っていたんです。高校1年の国語の教科書に載っていたハインリッヒ・ハラーの『白い蜘蛛』の一節を読んで、「俺もアイガー北壁を登るぞ」と決意し、山に打ち込むようになると、「28歳になったら山に関わる仕事で独立する」と決めました。16歳のときのことです。

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    1969年夏、アルプス三大北壁のひとつアイガー北壁の登攀に成功。すぐさまマッターホルン北壁に向かい、この登攀にも成功した。

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    高校1年の教科書『現代国語Ⅰ』に載っていた、アイガー北壁の初登攀記『白い蜘蛛』との出合いが辰野会長の人生を決定づけた。

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    ――28歳というのは?

    辰野:あまり若いと経験や信用が足りないでしょう。かといって、30歳を過ぎたらリタイアするまでの持ち時間が短くなります。綿密に計画したわけではありませんが、漠然と28歳がいいと考えたんです。

    ――なるほど。で、21歳の夏、まず「アイガー北壁を登る」という目標を達成しました。

    辰野:そのころは登山用品店に勤めていました。ところが、人間関係のトラブルで店を辞めることになってしまいました。なんと新婚旅行から帰ってきて3日目にです。途方に暮れていた僕を、「うちの会社にこないか」と拾ってくれたのは、登山用品店の常連のお客さんでした。そして、中堅の総合商社に入社し、繊維部門に配属されました。

    ――そこで繊維と出合ったんですね。

    辰野:防弾チョッキに使うケブラーや難燃繊維のノーメックスなど、それまで聞いたこともなかった特殊繊維を扱いました。「これを使って山道具を作ったらいいモノができるな」と想像しながら、徹底的に繊維の勉強をしました。もともと、「山に関わる仕事」としては登山用品店、あるいは山の喫茶店や山岳ガイドなどを考えていたのですが、繊維にのめり込むうちに、「店を開いて他人が作ったものを売っている場合じゃない。自分でモノ作りをしよう」と考えるようになりました。

    ――その繊維の知識を活かして起業したんですね。

    辰野:設立したのは1975年8月1日。28歳の誕生日の翌日です。資本金はゼロ。母親から200万円を借りて銀行に預け、その残高証明書を法務局に持っていき、設立登記しました。

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    このビルの1室から始まった

    ――最初に作ったアウトドア用品は何だったのですか?

    辰野:ダクロン・スリーピングバッグ――中綿にデュポン社製の中空ポリエステル繊維ダクロン・ホロフィルを世界で初めて採用した寝袋です。濡れるとペチャンコになってなかなか乾かないダウン製か重くてかさ張る化繊製しかない時代に、軽くて、濡れてもペチャンコにならずに暖かく、かつ乾きやすいという画期的な寝袋を作ることができました。これがモンベルの原点です。

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    創業当初の社員は山仲間ばかり

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    創業当時のロゴマーク。

    ――ダクロン・スリーピングバッグは輸出もしていますよね。

    辰野:まだ国内のビジネス基盤も固まっていませんでしたが、国内市場が頭打ちになるリスクに備えておこうと海外進出を考えました。創業3年目、ダッフルバッグにダクロン・スリーピングバッグを詰め込んで、ドイツ・ミュンヘンのスポーツ・シュースターにひとりで飛び込み営業をしました。

    スポーツ・シュースターはヨーロッパ最大の老舗登山用品専門店で、僕がアイガー北壁を登ったときに道具を買いそろえた店です。最初、「Ich kam aus Japan.(私は日本から来ました)」、「Ich mochte Schlafsack verkaufen.(私は寝袋を売りたい)」とつたないドイツ語で必死に訴える僕を、初老の仕入れ責任者は訝し気な目で見ていました。ところが、「私はアルピニストで、1969年にアイガー北壁を登りました」と自己紹介したとたんに、「おおそうか。それなら聞いてやるよ」と雰囲気が一変。彼は、伝説の登山家・ヘルマン=ブールとともにヒマラヤのナンガパルバット登山隊に参加したアルピニストだったんです。アイガーを登っていてよかったです(笑)。

    その年のクリスマス前、スポーツ・シュースターから100個のオーダーがきました。モンベルの技術力が世界で認められた――うれしかったですね。それが最初の輸出でした。ちなみに、その数年後、スポーツ・シュースターの店舗拡張パーティーでイヴォン=シュイナードと出会いました。

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    30歳のころ。

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    ドイツ・ミュンヘンのスポーツ・シュースター。欧州最大の登山専門店に飛び込み営業をした。上の写真はそのときの辰野会長。

    ――パタゴニアの創設者ですね。

    辰野:初対面でしたが意気投合し、日本国内でのパタゴニア製品の販売をモンベルが引き受け、モンベルの素材や技術をパタゴニアに提供することになりました。でも、3年ほどたったとき、僕は契約解消を決断しました。そのころ、モンベルの売り上げ5億円のうち4分の1をパタゴニアの売り上げが占めるようになっていましたが、他社ブランドに依存するのはリスクがありますし、僕がやりたいのは、素材にこだわった自社製品の開発・販売だったからです。

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    パタゴニア創業者イヴォン=シュイナードと。1984年ごろから約3年間、モンベルは日本国内でパタゴニア製品を販売した。

    Function is beauty
    Light and Fast

    ――素材にこだわった数々の製品を作り続けてきましたが、その中でとくに思い入れのあるものは何ですか?

    辰野:やはりダクロン・スリーピングバッグですね。それから、ハイパロン・レインギアとムーンライトテント。ハイパロンは、生地への密着性能に優れ、油分や紫外線で劣化しないという特長を持つコーティング樹脂で、優れた防水性と耐久性を併せ持った雨具を世に出せました。ムーンライトテントは月明かりの下でも張れるテントで、40年以上経ついまでも販売しています。

    この3つが表わしているのは、モンベルがモノ作りで追求しているのは機能性だということです。ファッションではないんです。デザインやブランドイメージなどは、極論すれば好みの問題なので、それほど執着していません。ただ、一貫してやりたいことは「Function is Beauty」――機能美の追求です。機能を追求していくと、シンプルな美に到達すると僕は思っています。

    同時に追求しているのが「Light & Fast」。軽量コンパクトにすれば、より速く行動できるようになります。結果、行動範囲が広がり、安全にもつながります。これは、アイガー北壁での「1gでも軽くしたい」という思いから始まっています。モンベルの成長は、「素材へのこだわり」、「Function is Beauty」、「Light & Fast」という哲学を多くのユーザーに認められた証だと思っています。

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