日本初(または世界初?)魚を総合的に学ぶ「日本さかな専門学校」が開校! | サスティナブル&ローカル 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2023.04.25

    日本初(または世界初?)魚を総合的に学ぶ「日本さかな専門学校」が開校!

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    校舎が建つのは三崎漁港。まるで魚市場のような活気ある雰囲気が漂う。教室からは相模湾や漁港を行き来する漁船が望める絶好の魚環境といえる。

    神奈川県三浦市の三崎漁港にいまだかつてない専門学校が開校した。完成間もない学び舎に、ひと足早く訪れてきた!

    ※2023年BE-PAL3月号掲載時の情報です。

    育てる、食べる、愛でる「さかな学」とは?

    古くから遠洋漁業の基地として栄えた三崎港は、全国有数のマグロ類の水揚げ地。新鮮な魚を求めて多くの観光客でも賑わうその三浦半島の突端に、日本初、おそらく世界で珍しい魚を総合的に学ぶ学校が誕生する。その名も日本さかな専門学校。できたばかりの校舎は学校というより魚市場といった佇いだ。
     
    この専門学校を手がけるのは学校法人水野学園(東京都渋谷区)。近年は、東京サイクルデザイン専門学校や東京すし和食調理専門学校などを開校している。専門性が高く、就労までの筋道が一般にはわかりにくい分野の間口を広げてきた実績を持つ。さて、魚を総合的に学ぶとは一体どのような学校なのか。学校長の松山英一さんに聞く。

    育てる

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    校舎1階にある養殖水槽。授業では魚を獲る漁業に加えて、養殖についてもイチから学んでいく。ブランド魚の育成も!

    「魚を体系的に学べる唯一の学校となります。自分たちで獲った魚、育てた魚、それを調理して、魚屋まで運ばれる流通までを学びます。そして、釣りや水族館、観賞魚の分野も魚を取り巻く環境のひとつ。釣りも学問として捉えていきます。ただ楽しんで終わりということではなく、当校で学んだ学生がそういった分野に入っていけることが重要になると思います。

    また昨今はさまざまな要因(温暖化や海洋汚染など)から魚が獲れなくなっている状況もあり、自然環境についても理解を深めなければなりません。養殖の需要も伸びています。全てのカリキュラムが魚に関連する授業で、実習が全体の7割を占めます。どっぷり魚漬けの数年になりますね」
     
    食卓やレジャーといった、わたしたちの生活により密接した魚が学びの主軸となるようだ。従来の水産系の高校や大学と学ぶ内容は重なりつつも、一線を画す新たな存在といえる。

    食べる

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    魚種に合った調理法や市場のしくみ、流通、水産加工品も学ぶ。本格的な包丁技術、鮮度を保つ神経締めは必須スキルだ。

    魚どっぷりの学校生活には、どんな将来が待っている?

    日本さかな専門学校には、海洋生物学科(3年制)と海洋生物研究学科(4年制)のコースがある。週5日の授業の半分以上が実習。卒業後は、どんな職業に就くのだろうか。養殖業、漁師、釣り具メーカー、遊漁施設(釣り船や管理釣り場)、アクアリウムショップ、鮮魚店、水族館飼育員、海洋環境保全団体職員といった進路が描かれている。在学中は就職や仕事に役立つ潜水士や観賞魚飼育管理ベーシック、食品衛生責任者、釣りインストラクターなどの資格取得も目指す。
     
    魚に関して幅広くとらえたカリキュラムの中でも、漁業や水産ビジネスなど食に関する分野には多くの時間が割かれる。昨今は日本人の魚離れがニュースなるが、実際はどうなのだろう。そこで水産庁『水産白書 令和4年版』を開いてみると、日本国内の魚介類の消費量はやはり減り続けていた。ほぼ全世代で1人1年当たりの消費量は減少傾向だが、世界的に見れば国内の水産物需要はまだまだ高く、外国の食用魚介類の需要は増大が予測されている。だからこそ学校での「育てる漁業」養殖は、こうしたグローバルなニーズも視野に入れているというわけだ。
     

    愛でる

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    釣りや水族館などの観光レジャーも魚を取り巻く重要な要素。在学中はひとりひとつの水槽を管理し、魚を飼育するという。

    そして育てた魚、獲った魚を美味しく調理して食べる方法を身に付けるのも学ぶべき大切な要素。校舎内には、調理実習室が備えられており、プロの料理人から基本的な包丁の技術を学ぶ。天然魚と養殖魚はどう味が違うのか? 飼料による養殖魚の違いは? 魚の美味しさを自分自身の舌で覚え、調理で魚の価値を高める。ただ売るだけではなく、食品学の基礎からしっかりと魚食全般を身に付けていく。
     
    また、さかな学の中にある釣りの授業もユニーク。教室の目の前は海、釣りをやらない理由がない! 生きた魚との貴重なコンタクトの場だ。釣りとひと口にいっても狙う魚や釣る場所、釣り方、道具も色々で奥が深い。ここでは釣りも学問のひとつ。
     
    理系だけでもない文系だけでもない、魚中心の学校。「魚のことならこの人に聞いてみよう」そんな魚の伝道師ような人材が、この専門学校から多く輩出されることが期待される。

    これがフィールドユニフォーム

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    実習がカリキュラムの大半を占める当学校は、水辺での制服がある。実習でも趣味の釣りでも、多くの学生で水辺が活気づきそうだ。

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    窓の外には相模湾が広がる。海に面した教室は、魚がいるフィールドとは目と鼻の先だ。図鑑を見るより、本物を見たほうが早い、かも。

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    釣りは魚についての学び多き時間。ルアーなど疑似餌の制作も授業の一環である。海釣りだけでなく渓流釣りも体験し、総合的に学んでいく。

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    校舎内の様子。津波を想定した構造で、吹き抜けを囲むように上階に教室があり、1階は各種の水槽が並ぶ。幅4mの大きな水槽は、まだ主がいない。飼育や管理は学生が担っていく予定。

    1~2年次のおもなカリキュラム(例)

    ◉さかな飼育実習
    海水・淡水魚陸上養殖実習、観賞魚飼育・レイアウト実習、水槽製作・メンテナンス
    ◉漁業学実習
    地引網実習、漁具製作・メンテナンス、国際海洋法講義
    ◉水産ビジネス学基礎
    魚市場体験、流通販売学
    ◉魚類学実習
    魚類学図鑑制作、解剖実習、魚病学
    ◉環境学実習
    三崎エリア生物植物リサーチ、城ヶ島潮だまり水生生物採集、ジオラマ製作
    ◉水質学実習
    三崎港・城ヶ島水質現地調査、生息地水質調査
    ◉観光レジャー学基礎
    集中学外研修(釣り、カヤック、ダイビング体験)、水中写真・動画制作演習
    ◉調理加工基礎実習
    活〆実習、様々なさかなの卸し方、調理基礎五法実習
    ◉食品学基礎
    食品の安全と衛生、食品の栄養分析

    3年次は1~2年次のカリキュラムの応用を学び、業界での即戦力を目指す。さらに海洋生物研究学科の4年次では、専門ジャンルを深く研究し、企業連携課題やプロジェクトに取り組む。

    ※カリキュラムは変更される場合があります。

    日本さかな専門学校

    〒238-0243 神奈川県三浦市三崎5-255-10
    https://sakana-n.jp/

    案内してくれた人

    日本さかな専門学校 学校長 松山英一さん

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    鹿児島県出身。長年ファッション関連に従事し、その後学校運営に携わるようになる。本校開校にあたり、講師の交渉スカウトなど東奔西走した。釣り歴は20年!「18歳以上であれば どなたでも学べますよ!」

     

    ※構成/須藤ナオミ 撮影/山本会里

    (BE-PAL 2023年3月号より)

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