ハシゴも楽しい広島のネイバリーなクラフトビール「HNB」
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    2023.02.06

    ハシゴも楽しい広島のネイバリーなクラフトビール「HNB」

    その土地だからできるビールがある。飲めるビールがある。ローカルを大事にするブルワリーのビールを飲みたい…。

    2020年、コロナ禍の最中に広島の繁華街の真ん中にオープンしたブルワリーがある。HIROSHIMA NEIGHBORLY BREWINGだ。20231月に訪ねてみた。

    左から「ニカラグア コーヒースタウト」「本通り ウエストサイドクラシックIPA」「広島日の出ラガー」「HIROSHIMAレモン スカッとセッションIPA」「レモブル GO HIROSHIMA」(ゴールデンエール)。

    繁華街のど真ん中にブルワリーを

    広島の繁華街。電鉄の駅、本通りを降りてアーケードを西の方に歩いて行くと、「HIROSHIMA NEIGHBORLY BREWING 」と「CRAFT BEERと炭火はればれ」がある。さらに進めば元安川に突き当たり、橋から右手に原爆ドームが見える。

    広島市の本通りアーケードに面した「CRAFT BEER と炭火はればれ」。1階はタップがズラッと並ぶカウンターがメインのブルーパブ。2階は和モダンの居酒屋。どちらからもブルワリーの醸造タンクが見える。(画像:HNB提供)

    観光客にとっても絶好のロケーションにHIROSHIMA NEIGHBORLY BREWING(ヒロシマネイバリーブリューイング/以下HNB)がオープンしたのは2020年の夏のこと。コロナ禍の真っ最中である。もともと、もっと前にオープンする予定だったのを延ばしていた。

    HNBのプロデューサー、福本成美さんにインタビューした。

    HNBプロデューサーの福本成美さん。大学卒業後、自動車メーカーの商品企画部、カラープランニング会社、シンクタンク等を経て独立。プランナーとして、デザイン・ブランディング・商品企画などの仕事もしている。

    HNBが生まれた背景は、2007年まで遡ることができる。

    HNBから歩いて10分ほど、やはり繁華街のど真ん中に、ビアバーGOLDEN GARDENがオープンした。福本さんの夫が経営している。

    2007年オープン、世界のビールを集めたGOLDEN GARDEN。広島の観光名所にもなっているお好み焼き村のすぐ近く。

    GOLDEN GARDENがオープンするまで、福本さんはそれほどビールを好んで飲んでいたわけではなかったという。GOLDEN GARDENの開店に先立ち、福本さん夫妻は1年ほど世界をビールを飲みながら旅して回った。多様なビールを知り、たくさんのブルワーと出会ううちに、クラフトビールの楽しさに引き込まれていったという。

    店をオープンした翌年の2008年に「地ビールフェスタinひろしま」の開催を企画した。全国からトップクラスのブルワリーを招き、話題を呼んだ。2014年から17年にかけては旧広島市民球場跡地で開催し、2万人以上が集まっている。

    2013年には、日本のクラフトビールを専門にしたビアバーRAKU BEERを、先のGOLDEN GARDENのすぐ近くにオープンしている。「地ビールフェスタinひろしま」を毎年開催するうちに日本各地のブルワリーとのつながりも深まっていく。自分たちもブルワリーを持ちたいとの夢が膨らんでいったという。

    「できるかぎりローカルにこだわりたい。地元の人に愛されるブルワリーでありたい」と福本さん。それがHIROSHIMA NEIGHBORLY BREWINGのネイバリーに込められた思いだ。ブルワリーの立地は街中しか考えていなかったという。

    地域の人も観光の人も飲みに来やすい店。アーケード街にブルワリーとブルーパブと和モダンの居酒屋をセットでオープンした。メニューにはHNBのビールだけでなく、レモンサワーもハイボールもワインも置いている。間口が広く、一見さんも入りやすい。

    生産者とブルワリーを結ぶ循環型のビール造りを

    HNBのビールの原料には広島県の産物が盛り込まれている。温暖な気候に恵まれた瀬戸内は柑橘や野菜などの農産物が豊か。レモンの生産量と、牡蠣の養殖生産量は日本一だ。山間部に行けばリンゴやブドウが栽培され、畜産も行われている。

    たとえば、霧の町と呼ばれる山間部の三次市の農家「農緑たねまき」が栽培する「霧里しょうが」を使った「ミスティジンジャーペールエール」。三原市の久井町産のハーブを使った「ミントホワイトエール」。尾道市の瀬戸田産の無農薬レモンを使った「HIROSHIMA レモンスカッとセッションIPA」などなど。地域の特産物がビールの素材としても存在感を示す。

    ビアバー時代からつながりのある生産者とのコラボもあれば、知り合いから「これビールに使えないか」と話が持ち込まれることもある。「地域の農産品を使って仕込み、出来上がったビールをその地域で販売する。地元の方も喜んで飲んでくれます。もっと生産者とブルワリーを結んでいきたい」と福本さんは話す。

    一方、醸造過程で出る麦芽カスは、農家や畜産農家などに引き取ってもらい、肥料や飼料に利用してもらっている。農家とビールの循環型経済に取り組む地域・ブルワリーが増えている。クラフトブルワリーならではの取り組みにも注目したい。

    酒処、広島のクラフト酒メーカーが力を合わせてバレルをリレー

    HNBでは、地の利を活かした「バレルリレープロジェクト」企画が進行中だ。

    広島は三大酒処といわれ、日本酒で有名だが、日本酒のほか、ビール、ワイン、ウイスキーのメーカーがそろっている。先の三次市はブドウの産地であり、ヴィノブルヴィンヤードというワイナリーがある。廿日市市には1918年から蒸留酒を製造し、今は「桜尾」の銘柄でウイスキーを造るサクラオブルワリーアンドディスティラリーがある。

    サクラオブルワリーアンドディスティラリーのウイスキー樽や、ヴィノブルヴィンヤードのワイン樽に、HNBのビールや、広島の日本酒を貯蔵してみる。その後、さらにまた別の酒を貯蔵してみる。ひとつの樽を使って異なる酒類を熟成してみようというのが「バレルリレープロジェクト」だ。

    ウイスキー樽でビールやワインを熟成させたり、逆にビールやワインの貯蔵に使った樽でウイスキーを熟成させる。そうすることでより複雑な風味、奥行きが生まれるのだという。

    2つの樽でバレルエイジドビールが熟成中。この先、この樽に何の酒が詰められ、どんな味わいが生まれるのか。楽しみだ。

    ビールには「バレルエイジド」というスタイルがある。バーボンやシェリー、ワインなどの樽で長期間、熟成させたビールだ。樽によって個性が異なり、どんなビールになるかは開けてみないとわからない。時間もコストもかかるが、そんなバレルエイジドに憧れるブルワーは多い。ただ、ウイスキーやワインの樽が、そうは簡単には手に入らない。ブルワリーの近くにウイスキー蒸溜所とワイナリーがあるのは大きなアドバンテージなのだ。

    町に活気がなければビールを飲んでもらえない

    広島の街の中心部に位置するアリスガーデン、袋町、並木通り。飲食店が連なる3地区による「並木コンソーシアム」という街づくりチームがある。福本さんも参加している。いずれの地区も、コロナ禍によって打撃を受けている。昨年は、人が密にならずとも集まれるマーケットを開催した。街に活気を取り戻そうとイベントに工夫を凝らす。

    「おいしいビールをつくっているだけでは足りないんです。街が元気でなければ、クラフトビールも飲んでもらえないですからね」と福本さん。

    店から歩いてすぐの所に平和記念公園がある。平和であればこそおいしいクラフトビールを飲めるのだということも意識できるだろう。特に観光で訪れる人にとっては。

    もうひとつ、広島ならではの、気になることがある。

    広島市内からはちょっと離れているが、酒処で知られる西条に日本で唯一の酒の研究機関である酒類総合研究所がある。ここではビール造りの研修も行われおり、腕を磨きたいブルワーが全国から集まってくる。コロナ禍でいろいろ制限されるまでは、彼らがよくRAKU BEERに飲みに来ていたそうだ。今後、行動制限が本格的に解除されれば、HNBにこうしたブルワーたちが飲みに来るだろうことは想像に難くない。広島の街のど真ん中にあるブルワリーのこれからが楽しみだ。

    HIROSHIMA NEIGHBORLY BREWING https://hnb.beer
    広島市中区大手町1-5-10 

     

    私が書きました!
    ライター
    佐藤恵菜
    ビール好きライター。日本全国ブルワリー巡りをするのが夢。ビーパルネットでは天文記事にも関わる。@ダイムでも仕事中。

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