車窓から絶景を求めての旅は、面白い。せっかくなら好きなアクティビティと組み合わせてプランを練ろう。今回は川下り旅に熱中する記者が挑戦!
錦川清流線(川西〜錦町/約32km)を行く
川下りで一番苦労するのが実はアクセス。当然のように川は一方通行。だから通常は、あらかじめスタートorゴール地点にクルマをデポ。川下り後はクルマをデポした所まで、何かしらの移動手段で戻る必要がある。
今回の旅で使うパックラフトは、空気で膨らませる小型ボート。収納時にはバックパックに収まるサイズだから、鉄道をはじめ、公共交通機関を利用して、川下り旅を完結できる。
旅した人/ライター・櫻井 卓さん

日本各地はもちろん、ハワイ島やテキサスなど海外にもパックラフトを持ち込み、ちょっと変わったアプローチの川下り旅を模索中。スキルは初心者レベル。
日本各地に鉄道を利用して下れる川はいくつかあるけど、人間というのは実に欲深い生き物。その要求はみるみる上昇。
「川の近くを絶景の楽しめる鉄道が走ってて、キャンプ適地がいっぱいあって、ダムや堰などはなくて、そして何より水が綺麗で…」などという妄想をいだき始めてしまうのだ。でも、鉄道大国といえどもそんな都合の良い川が…あったんです!
それが今回訪れた山口県岩国市の錦川沿いを走る錦川清流線。岩国駅から絶景の中を単線電車に揺られること小一時間。あっというまに清流の元へ誘ってくれる。ちなみに山陽新幹線が停まる新岩国駅からも錦川清流線に乗り換えが可能。川旅的アクセスが完璧すぎるのだ。
旅道具

パックラフト本体とライフジャケット、4分割式のパドル、ヘルメット。これらはすべて65ℓのバックパックに収納。それプラス、完全防水のドライバッグを持参。
錦川清流線が走っているエリアには、ダムや堰などもないので、この鉄道を使えば、サクッと日帰りから、30㎞ほどの1泊2日ツーリングまで、ストレスフリーで楽しめてしまう。
川自体は大きな瀬もなくいたってのんびり系。途中には何か所か線路の真下を川が通っているエリアもあって、時刻表をチェックして狙いすませば、鉄道とパックラフトの並走という、撮り鉄でなくても鼻血もののスペシャルな写真を撮ることも可能。
釣り人含め地元の人がフレンドリーなのも旅人にとってはありがたい。しかもめちゃめちゃ水が綺麗ときたもんだ。「錦川清流線」の名前はダテじゃない。まさにニッポンの川旅界のミスターパーフェクト。
装備一式を背負って出発!

岩国駅から錦川清流線方面へは、まさかの0番線から出発。立派な岩国駅から、可愛らしい1両の列車でいざ錦川へ!
根笠駅から錦川へ

川下りのスタート地点である根笠駅までは岩国駅から52分。駅から徒歩5分で河原へアクセスできるという、川旅には夢のような好立地。
正直こんな川、見たことない! というか他にもあるんならぜひ教えてほしい!
各駅近くには簡単に河原にアクセスできる場所も多数。適当に下って、疲れたら駅の近くに上陸して、そのまま電車で岩国市街までビューッと戻る、なんていう、僕の大好物である自堕落的川旅をぞんぶんに楽しめる。
終点のさらに奥地へ……観光列車も運行中

終点である錦町駅からは、「とことこトレイン」という観光列車も運行。鉄道が走る予定だった跡地を通り抜けて、約6㎞先の雙津峡温泉駅まで片道約40分の秘境旅を楽しめる。
余談になるけど、この岩国駅近辺、夜の町の充実っぷりも素晴らしく、地の物グルメからスタンド(スナックのことをこの地方ではこういうらしい)まで、ナイトライフもバッチリ決められるという点もシティ派アウトドア好きにはタマらない。
日本のいろんな川を下ってきたけど、ついにホームリバーを見つけちゃったかもなぁ。
鼻血モノの美しい川で鉄道とパックラフトの競演!
錦川清流線は数か所、限りなく川ベタを走る区間がある。上下線ともに1〜1時間半ごとに電車が来るので、通過時間を見定めれば、こんなミラクルな景色を眺めることも可能!

鉄道と 競争じゃあ!!

水の透明度 ヤバすぎ!
写真上に写っているのが「清流みはらし駅」。イベント列車のみ停車する駅で、自動車や徒歩などでのアクセスは不可。

紅葉のころも 良さそう!
山間をゆっくりと流れていく極上マッタリ系川下りを楽しめる。途中には沈下橋などもあり、目を飽きさせない。

楽しみすぎて すみません!
この区間には沈の可能性があるような大きな瀬は特になく、たまに小さな瀬が現われるのが良いスパイス。根笠駅からすぐのところの瀬が最大。
川下り中に現われたオアシス
自販機でまさかの熱々うどん!
椋野駅から少し下った河原に上陸して、国道187号線まで行くと、突如オアシス出現。各種ジュースは当たり前、なんと熱々のラーメンとうどんも自動でドン! 近辺にはコンビニなどがないため、大人気。
観音茶屋 自販機コーナー
山口県岩国市美川町南桑1286
うどん・ラーメンともに350円
無休・24時間営業
※構成/櫻井 卓
(BE-PAL 2022年10月号より)