カヤックで訪問!セルビア・アパティンの秘密結社「ハウスボート・リベルランド」 | 海・川・カヌー・釣り 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2022.08.27

    カヤックで訪問!セルビア・アパティンの秘密結社「ハウスボート・リベルランド」

    アパティンの秘密結社「ハウスボート・リベルランド」前で自撮り

    アパティンの秘密結社「ハウスボート・リベルランド」にて

    ジョアナ、実はゴールしちゃいました

    こんにちは!ドナウ川下りの旅のジョアナです。

    ここ数か月「BE-PAL.NET」で書くのをサボっているうちに、実はちゃっかり、旅を終えてしまいました…。ドナウ川源流域のドイツから、ルーマニアの河口まで約2,600km。2月頭から6月末までの5か月間、つまり半年近くもかかっちゃいました。てへ。

    ドナウ川下りの旅をするカヤッカーは、大抵、長くても3か月くらいで全行程を終わらせるのが一般的。だから、旅の終盤で立ち寄ったカヤッククラブでは、「君ほどのんびり旅する人は、見たことがない」と声をかけられてしまったり。

    カヤックは、漕いでんだか、漕いでないんだか、わからないくらいのスローペース。執筆の方はもはや、完全ストップ。

    そもそも、どうして私はそんなにダラけてしまったのか。

    振り返ってみると、そのきっかけはセルビアの町、アパティンにありました。

    アパティンの秘密結社

    「ちゃんと予定通りにゴールしなきゃ」と思って漕ぎ進めていたはずの私の旅が、ハンガリー国境を越えてアパティンに入ってから、急にダラダラした旅に変わったしまった理由はなぜか。

    一つ目に、旅の前半のドイツ、オーストリア、スロバキア、ハンガリーまではシュンゲン協定で結ばれていて全部合わせて3か月しか滞在できなかったのが、セルビア以降はシュンゲン協定を外れたおかげで、滞在期間のビザ的タイムリミットを意識する必要がなくなったこと。

    そして二つ目に、セルビア以降は、正直どんな国なのか、ほとんど事前知識なしで向かったため、見聞きすることがすべて新鮮で、発見の連続。だから毎日がただ楽しくて。つい、あちこちで長居をしてしまうのです。

    セルビアに入ってすぐの町、アパティンの港にあったのが、記事冒頭の写真にある船。ハウスボート・リベルランド。

    ハウスボート・リベルランド2階デッキ

    ハウスボート・リベルランドの2階デッキ。よくここで飲み会をやるらしい。

    「リベルランド」という言葉に聞き覚えがある方もいらっしゃるかもしれません。ドナウ川沿いに国境を隔てているセルビアとクロアチアの間に、どういうわけだか両国ともに国土として主張していない、いわば地図上の「空白地帯」があって、そこに生まれた新国家が「リベルランド」。

    世界で1番新しいかもしれない国としてネット記事にも取り上げられたことがあるリベルランドですが、実際にはいろいろな政治的な事情から独立国家としての活動が事実上不可能な状態にあり、代わりにリベルランドの活動の拠点として作られたのが、この「ハウスボート・リベルランド」らしいのです。

    ベッドスペース

    ベッドスペース。ちなみにベッドの向かいにはバスタブがある。

    ハウスボートにお泊まり

    「ハウスボート」という名前の通り、内装は「お家」そのもの。

    キッチン完備。
    あったかいお湯のバスタブも完備。

    家本体は船なので、時々動かすこともあるそうですが、大抵はリベルランド仲間の飲み会か、あるいはリベルランドに興味を持って訪ねてくる旅人を泊めるために使っているそうで。私も数泊、泊めさせていただけることに。ついつい長居してしまう心地の良さです。

    ハウスボート・リベルランドが浮かぶ港

    ハウスボート・リベルランドが浮かぶ港。奥のオレンジのビルは造船所。

    ちなみにアパティンの港にあるのは、地元の小さな釣り船ばかりで、ハウスボートはこの一隻のみ。外国船は見当たらなかったけれど、近くに造船所があるので、ドナウ川を旅するヨットなんかは、故障するとここに一旦逃げ込んでくるみたい。

    でもここだけの話、アパティンの造船所は、外国籍のヨットにはベラボーに高い修理代を請求することで知られているらしく…。港に停めるのだって、一泊50ユーロ。

    この港はさぞ儲かっているんだろうな、と思いきや、管理室でワンオペしているお兄さん曰く、月のお給料は3万円ほど。でもこの辺りでは、格段に安月給というわけでもないそうです。

    モノの金額がイビツなこういう土地で、言葉もわからず一人ぽつんと観光するのは心細かろう。ということで、今回はハウスボート・リベルランドの方があちこち案内してくださいました。

    アパティンの地元民が集まる市場

    アパティンの地元民が集まる市場。

    アパティンは、こんなとこ

    まず向かったのは、市場。セルビアで採れたお買い得な野菜や果物を買いに地元の方が集まる、地産地消の市場です。セルビアでは米よりパンをよく食べるそうで、煮詰めたパプリカの瓶詰めをパンに塗るのが定番だそう。私も一個買ってみたけれど、結構、辛い。これ、パプリカって呼んでるけど唐辛子なんじゃ。

    アパティンにあるニコラ・テスラの銅像

    アパティンにあるニコラ・テスラの銅像。

    セルビア人の誇りニコラ・テスラはエジソンより偉いらしい

    アパティンには、正直これといったセルビアを代表する観光名所はありません。強いていうならニコラ・テスラ像が、渋谷のハチ公的な存在でしょうか。

    「ニコラ・テスラなしには、あの車のテスラも存在していないかもしれないんだ!」。そう誇らしげに語る地元の方。なにやらテスラ社というのは、このニコラ・テスラの名前から命名されたのだそう。

    実は電気の歴史の中で、エジソンよりも偉大といわれているのがニコラ・テスラ。彼は、セルビア人の両親のもとに、現在クロアチアになっている小さな町に生まれ、そしてアメリカに帰化した。つまり、ややこしいのだけど、とにかくセルビア人にとってはヒーローみたいな人。

    私は電気にあまり詳しい方ではないので詳細は省くとして、エジソンとテスラを象徴する出来事として語られているのが「電流戦争」。

    発電所で作られた電気の送電方法について、直流を推し進めるエジソンと、交流を発明したテスラが対立。結果的に勝利したのは交流派で、現在に至るまで、電気の送電は交流が世界標準。

    だけど、正直、エジソンよりあんまり有名になれなかったニコラ・テスラ。

    無線通信を発明したのもテスラだし、私たちが毎日使っているエアコンや冷蔵庫を可能にした交流モーターもテスラの発明品。

    白熱電球や蓄音器なんて、現代ではほとんど使われていないのに、それでもエジソンより有名になれなかったニコラ・テスラ。

    病気になった晩年は、部屋に鳩を飼って息を引き取ったそう。この銅像の広場にも、毎日鳩が飛んできますように。

    アパティンに住むアメリカ人イサさんとご友人の娘さん

    アパティンに住むアメリカ人イサさんと、ご友人の娘さん

    アパティンに住むアメリカ人

    外国人なんかほとんど来ないアパティンですが、一人、アメリカ人が住んでいました。

    イサさんです。

    リベルランドの存在を聞きつけて、アパティンまでやってきて、そのまま住み着いてしまったそう。

    彼女と出会った日の日記を確認すると、「すごく心の優しい変人」と書いてありました。

    イサさんは、「他国に頼らず、自給自足で生活できる国」を求めて放浪しているそう。つまり、戦争や何かが起きて、食べ物が輸入できなくなっても、飢え死にしない国。

    まず目をつけたのがエクアドルで、9年住んでから、治安の悪さに嫌気がさしてしまったそう。

    「安全のために、高いコンクリート塀に囲まれた生活をするんだけど、なんだか牢獄にいるみたいに思えてきて」

    それから次に彼女が目をつけたのが、ここセルビア。はじめは単純にリベルランドへの興味からだったのが、今ではすっかり、セルビアが第二の故郷に。

    「経済的な水準は高くないかもしれないけれど、グーグルアースであちこち確認しても、エクアドルと違って民家の警備がやたら厳重って雰囲気じゃなかったから。つまりそれって、治安がそんなに悪くないってことでしょう?食べ物もよくとれるみたいだし。セルビアより安心して暮らせる国なんて、私にはほかに思いつかないわ」

    私にとっては、まだまだ知らないことだらけのセルビア。

    ドナウ川を下って出会うセルビアは、一体、私の目にはどんな国に映るのか。

    レポートの続編をお楽しみに!!

    私が書きました!
    剥製師
    佐藤ジョアナ玲子
    フォールディングカヤックで世界を旅する剥製師。著書『ホームレス女子大生川を下る』(報知新聞社刊)。じつは山登りも好きで、アメリカのロッキー山脈にあるフォーティナーズ全58座(標高4,367m以上)をいつか制覇したいと思っている。

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