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    2022.06.10

    あの有名絵画の風景が2050年になったら?6名の巨匠とAIがコラボした「“名画になった”海 展」

    5月30日の「ごみゼロの日」を機に、ITOCHU SDG STUDIOでは、横浜八景島が主催するプラスチックごみによる海洋汚染問題をアートで表現した展示「“名画になった”海 展」を開催しています。世界的に有名な海をモチーフにした絵画が、もし2050年に描かれたら。私たちの地球について、言葉ではなく視覚で考えさせられる展覧会です。

    2050年、海洋プラスチックごみは魚の量を超える

    海の中へ誘ってくれるようなブルーのカーテンをくぐって展示室へ。

    海洋プラスチックが問題になっていることは、すでに広く知られ202241日からプラスチックごみに関する新法案(プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案)も施行され、問題意識は高まってきています。産業活動により排出される年間数百万トンものプラスチック廃棄物の多くは、最終的に海にたどり着き、魚を始め、海全体の生態系に悪影響を及ぼしていることも周知の事実です。そこで、「生きものを通じて世界に笑顔と感動を」をスローガンに掲げる横浜八景島が、海や川を脅かすこの深刻な問題に警鐘を鳴らすため「“名画になった”海 展」をITOCHU SDGs STUDIOで開催することになりました。

    実は、この展覧会、2019年に仙台うみの杜水族館で発表され、2020年度グッドデザイン賞を受賞しています。「2050年には海洋プラスチックごみの量が世界の魚の総量を超える」という予測データに基づき、海を描いた世界中の名画に、その作者のタッチをAIで再現してプラスチックごみを描き足すことで2050年版の名画を完成させ、プラスチックゴミで海が汚染されている状況を可視化し、来場者に驚きと実感をもってもらうきっかけづくりが評価されています。これらの絵画は、海洋清掃活動で収集された実際のプラスチックごみの画像を、「スタイルトランスファー」というAI技術を用いて画家のタッチに変換し、シミュレーションにより算出された2050年の世界各地のごみの分布量に基づいて、元の絵画に描き加えられています。特別展では、10日間で3万人が来場したとのこと。

    今回、都内で開催されることで、自分にできることを考えるきっかけづくりになればという思いがあるそうです。私たちの生活に便利なプラスチックですが、ごみになって海に流れ出すと、なかなか自然分解されません。プラスチックレジ袋なら、1000年以上かかるという研究もあります。また、5ミリ以下の細かいプラスチック粒子であるマイクロプラスチックも世界中の海に存在しています。

    展示されているドームに使用したプラスチックごみが収集された海岸。そこでの清掃作業の様子。

    これらは、海岸に打ち寄せられたプラスチックごみが紫外線や波の影響で分解されたり、スクラブ洗顔料や一部の歯磨き粉などに含まれるマイクロビーズと呼ばれるプラスチック粒子が下水道を通じて海に放出されたりしたもの。小さいがゆえに、小魚たちが餌と間違えて食べてしまいます。その後、食物連鎖によって、大きな魚に食べられたころには、マイクロプラスチックは消化されないため、どんどん魚の体内にたまり続けます。食物連鎖の最後である我々人間は、マイクロプラスチックをたくさん食べた魚を食べることになるのです。自分たちが捨てたり、知らずに下水道へ流してしまったりしたプラスチックは、私たちの食卓に戻ってくることになります。その魚の量も、2050年にはごみより少なくなる予測がたてられている現実を見ることで、意識が変わるかもしれませんね。

    未来の海の絵画と現在のごみから作られたスノードームの2部構成の展示

    巨匠×AIの絵画が6作品展示されている。

    展示は、2部構成です。第一部では、「プラスチックの量が魚の量を超える」と言われている2050年の海をゴッホや葛飾北斎を含む、6名の巨匠が描いたらどうなるか、AI技術を用いて再現された絵画が鑑賞できます。

    フィンセント・ファン・ゴッホ×AI サント=マリー=ド=ラ=メールの海景2050。

    描き方のタッチが、AIで再現されているためある意味、違和感がありませんが、ゴミの量に驚かされます。

    実際に海から回収したプラスチックを使った5つのスノードーム。

    奥に進んで第二部の部屋では、スノードーム「Microplastic Globe」が5つ展示されていました。スノードームの中には愛らしい海の生き物がいて、かわいいと思ってしまいます。しかし、そのスノードームのフレークには、実際に海から回収したプラスチックが用いられています。センサーに近づくと、フレークが舞い上がるのですが、そのときに海の生き物の口にフレークが入るようにデザインされていて、海の中で起こっていることを可視化しています。すでに海洋プラスチックごみの影響が報告されているカクレクマノミ、ミズクラゲ、ザトウクジラ、アオウミガメ、マゼランペンギンの5つの生物で表現され、ひとつひとつにどのような影響があるのか説明もついているため、海の中で何が起こっているのかがわかります。

    一度飲みこんだものを吐き出すことができず、排出されるまで1か月以上エサが食べられなかった報告もあるウミガメ。

    今回のドームに使用されたプラスチックは、海洋プラスチックのアップサイクル事業をアート活動として行なう「リマーレ」の協力のもと収集されています。マイクロプラスチック問題を広く知らしめる役目を終えた後は、専門家の監修のもと適切に処分される予定です。

    海に流れついたプラスチックごみを海岸で見かけるだけでも、その量に驚きますが、マイクロプラスチックは目に見えないだけに、毎日の暮らしの中で意識する必要があります。「Imagine the Future Ocean with Art」と言葉で理解したつもりでいたものを、別の角度から改めて気づかせてくれる展示でした。海の日である718日まで開催中です。入館料無料なので、親子でほかの作品を見て、環境のことを考える機会にしてもいいですね。

    “名画になった”海 展
    開催期間:2022531日~718
    開館時間:11:0018:00
    休館日:毎週月曜日、月曜日が休日の場合、翌営業日が休館
    会場:ITOCHU SDGs STUDIO 東京都港区北青山2-3-1 Itochu Garden B1F
    料金:入館料無料
    主催:株式会社 横浜八景島
    https://www.itochu.co.jp/ja/corporatebranding/sdgs/20220516.html

     

    私が書きました!
    ロハスジャーナリスト。フリーアナウンサー。
    林ゆり
    関西を中心にテレビ、ラジオ、舞台などで活動後、東京に拠点を移し、執筆も始める。幼いころからオーガニックに囲まれて育ち、MYLOHASに創刊から携わる。LOHASを実践しながら、食べ物、コスメ、ファッションなど、地球にやさしく、私たちにもやさしいものについてWeb媒体やブログで発信中。

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