お城と山を眺めながら楽しむオーストリアの人気スポット「ヴァッハウ渓谷」のカヤック寄り道旅
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    2022.04.10

    お城と山を眺めながら楽しむオーストリアの人気スポット「ヴァッハウ渓谷」のカヤック寄り道旅

    ヴァッハウ渓谷のシェーンビュールにある白いお城

    ヴァッハウ渓谷シェーンビュールのお城。両脇を山とお城に挟まれる、それがヴァッハウ渓谷です!

    「オーストリアで一番きれいな場所だよ」と言われて

    こんにちは!ドナウ川の源流地域ドイツから、エーゲ海沿いのトルコを目指して、カヤックの旅をしているジョアナです!ざっくり計算して半年で4,000kmくらい移動する計画で、今日もカヤックで旅を進めながら記事を投稿しています。

    今回紹介するのは、ドイツのウルムという町を漕ぎ出して3週間か、4週間くらい経ったころのエピソード。一人旅でカレンダーを気にしない生活をしているとつい、日付感覚がなくなってしまうのです。それは、この旅で初めて国境を超えてしばらく経ったオーストリアでの出来事でした。

    朝もやの中、「今日もそろそろ漕ぎ出すかー。でもまだテントでゴロゴロしてたいなー」とテントのそばでモジモジしていたら、遠くからこちらにやってくる一人のカヤッカーの姿が。聞けば私がテントをたてた土手の裏の小さな村に住んでいて、たまに時間があるとこうして川を漕いでいるそう。

    「これから黒海の方まで下るのかい?それは羨ましい!いいかい、オーストリアで一番きれいな場所っていったら、ヴァッハウ渓谷さ。これから通るはずだから、ゆっくり観光しながら下ると良い。俺も夏場には家族を連れてのんびり過ごしに行くんだ」

    どうやらヴァッハウ渓谷というのは、オーストリアのメルクという町からクレムスという町の間、30kmちょっとの区間のことだそう。一体どういったところが具体的にきれいなのかはあえて聞かずに、ちょっとしたお楽しみを残して向かった私。そこには、今まで通ったドナウ川沿いの地域でも、群を抜いて「ヨーロッパらしい」景色が広がっていました。

    ヴァッハウ渓谷のはじまりの町「メルク」

    ヴァッハウ渓谷を代表するメルク大聖堂。

    ヴァッハウ渓谷を代表するメルク大聖堂を前に、記念に一枚パシャリ。

    ドナウ川を下っている私にとって、ヴァッハウ渓谷の始まりの町がメルク。小さな町ですが、ヴァッハウ渓谷で一番の見どころといわれている修道院がある町でもあります。いきなりヴァッハウ渓谷のきれいさのクライマックスな場所に出会ってしまいそうですが、早速、観光です。

    大聖堂が見える対岸でのキャンプシーン

    メルクでキャンプしたのは、この大聖堂がある対岸の船着場の近く。夜になるとライトアップされるのですが、それがまさに遊園地のお城のよう。

    まずは大聖堂へ。いわれなければ、まず大聖堂には見えない造りでした。それもそのはず、この大聖堂、元々はお城として建築されたものだそう。それがあとになってローマカトリックの修道院に改築されていって、現在の姿に至ったるのだそう。修道院内部、および教会エリアは残念ながら写真撮影NG。ですが修道院内部の装飾は、豪華そのもの。大聖堂の中はどこへ目をやっても、アートがあるのです。きんきら金の装飾に、細かな彫刻。まっさらな隙間というものが、どこにもありません。この教会を訪れたあとでは、他のどの教会へ行っても見劣りするほど。

    実は、この修道院から歩いて10分ほどのところにも、教会があります。なぜ、小さな町の中で隣接するように2つの教会があるのか。隣国ドイツ出身でカトリック派だという方に聞くと、「その昔、メルクの修道院の豪華な教会は関係者だけが毎日祈りを捧げられる場所で、町に住む一般市民はごく限られた機会にしか入ることができなかったのではないか」という説があるそうです。普段は比較的質素な造りの町の教会に通い、特別な日にだけ、この豪華な教会に行くそうです。そんな修道院の教えは、「よく働き、よく祈りなさい」。

    よく働き、よく祈り、そうして特別な機会にあれだけ豪華な場所を訪れた町の人はきっと、まるで別世界に来たかのような衝撃と高揚感を感じたはず。

    ドナウ川をカヤックで下って見てきた町の風景の中で、群を抜いて豪華だったのがメルク修道院。町そのものは小さな田舎町なので、こうしてカヤック旅をしていなければ、訪れる機会もなかったかもしれません。

    ヴァッハウ渓谷人気の秘密は「お城と教会」

    デュルンシュタインの水色の塔。

    デュルンシュタインの水色の塔は、まるで絵本の中の世界のよう。

    ズバリ、ヴァッハウ渓谷の人気の秘密は、渓谷沿いにたくさんのお城や教会が並んでいること。渓谷沿いにいくつもの村や町が点在していて、そのどこにもお城や教会があり、町を代表するシンボルとして親しまれています。たとえばこれ、デュルンシュタインの町のシンボルは水色の塔。絵本から出てきたような、優しいブルーが印象的です。

    まるで要塞みたいなヴァイセンキルヒェンの教会

    要塞みたいなヴァイセンキルヒェンの教会。

    対照的に、ヴァイセンキルヒェンの町の教会は、なんだか要塞のような雰囲気。

    だけど私はあえて、こういう「いかにも」な観光名所的な建物を見に行くよりも、ちょっとボロい建物の方がそそられる体質で。

    ヴァッハウ渓谷の小さな教会

    ヴァッハウ渓谷の小さな教会。

    外壁の手入れがあまり行き届いていない建物や、文字盤や針がなくなってしまった跡がある塔を見つけると、つい上陸してしまいます。

    夏の観光シーズンにはクルーズ船がたくさん出ているヴァッハウ渓谷。カヤック旅で行くメリットといえば、船の時間を気にせずに自由に町に寄り道ができることでしょうか。

    夏場のヴァッハウ観光は「ワイン」も人気

    夏場は一面に茂るワイン畑も、冬場は寒々しいハゲ山状態

    夏場は一面緑色に茂るワイン畑も、冬場は茶色いハゲ山状態。

    ヴァッハウ渓谷を勧めてくれたカヤッカーが言っていた、「夏場には家族を連れてのんびりしに行くんだ」という言葉。あの真意は、そう「夏場には」というセリフがキーワードだったようで。

    ヴァッハウ渓谷が観光で人気な理由のひとつは、ワイナリーが点在しているから。山の斜面にワインを作るための葡萄が段々畑になって植えられています。夏場は、緑に茂った段々畑に囲まれて、古いお城や教会が見えるのです。それはそれは、きれいでしょう。が、残念ながら今回私が行ったのは、冬です。段々畑には何も生えておらず、山の木も葉っぱが完全に落ちています。茶色い山に、ハゲた段々畑。おしゃれに言い換えると「セピア色の世界」です。残念!

    観光産業が盛んなヴァッハウ渓谷、だけど冬場は…

    国内外から観光客が集まるヴァッハウ渓谷ですが、冬場はほとんど誰も訪れないので、お店や観光施設が軒並み閉まっています。残念!

    しかも、冬はまだ雪解け水が入っていないせいか、水位が少し低いようで。上陸するのにやたら遠浅になっている場所や、ボートランプや階段を使うにも、位置が高すぎて上陸困難な場所が多数。

    ちなみにヴァッハウ渓谷は、ヨーロッパを旅するサイクリングロードがある場所でもあります。私もいつか、夏に自転車旅行をしに再訪しようかな…。

    ヴァッハウ渓谷のおわりの町「クレムス」

    クレムスの町の船着場

    クレムスの町の船着場。

    ヴァッハウ渓谷の最後の町、クレムスではこんな場所に上陸しました。ボートクラブのための小さな湾です。夏場はモーターボートが多く通って危険なため、カヌーやカヤックは通行禁止なのですが、冬場は船が一隻もなく、安全に通行することができました。

    ドナウ川を下っている私にとっては、地理的にメルクから始まってクレムスで終わるヴァッハウ渓谷。そして、観光客が少ない冬場は全体的に静かな雰囲気の渓谷ですが、クレムスには大学があって人口も比較的多いのか、地元民で賑わっているのが印象的でした。

    ケバブの中身を箱に詰めたケバブボックス

    ケバブの中身を箱に詰めたケバブボックス。

    私もオーストリアの定番B級グルメ、ケバブボックスを食べました。ケバブ自体はオーストリア料理ではないはずだけど、どの町に行ってもあちこちにケバブ屋さんがあって、ケバブの中身を箱に詰めたこのケバブボックスを手に歩いている人がいるんです。それからデザートにはケーキを食べて、町を歩いて、何も買わないけどウィンドウショッピング。

    今回のカヤック旅はどうしても、その移動手段と距離的に「ちょっと過酷な冒険」という雰囲気が先に立ってしまいがち。だけどヴァッハウ渓谷では、完全にただの観光客になってしまいました。

    私が書きました!
    剥製師
    佐藤ジョアナ玲子
    フォールディングカヤックで世界を旅する剥製師。著書『ホームレス女子大生川を下る』(報知新聞社刊)。じつは山登りも好きで、アメリカのロッキー山脈にあるフォーティナーズ全58座(標高4,367m以上)をいつか制覇したいと思っている。

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