いつかはエベレストへ! 山とともに生きるかほさんの夢とは【YouTuberインタビュー】 | 山・ハイキング・クライミング 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
  • OUTDOOR
  • NEWS
  • SUSTAINABLE
  • CAR
  • CAMP
  • GEAR
  • COOKING
  • 山・ハイキング・クライミング

    2021.09.17

    いつかはエベレストへ! 山とともに生きるかほさんの夢とは【YouTuberインタビュー】

    山登りをはじめるきっかけはテレビの罰ゲーム!?

    数年前に「山ガール」という言葉が流行っていた。女性向けの雑誌が発売されたり、アウトドアウェアも女性が着たくなるようなデザインのものが登場した。そのブームも徐々に落ち着いてはきているが、山に登る女性たちは今もパワフルだ。You Tube「かほの登山日記」を運営するかほさんもそのひとり。登山歴は6年で、今年の夏はなんと週1で1泊〜2泊の登山に出かけほどの山ヤ。そんな山漬けの日々を過ごすかほさんが登山を始めたのは意外なきっかけだった。

    「大学を卒業して就職したのがテレビの制作会社でした。バラエティ番組のADをしていたのですが、その日は徹夜が続いていたこともあって番組中に居眠りをしてしまったんですね…。その罰として番組の企画で登山をすることに。八ヶ岳の根石岳に登って初日の出を撮影してくることがミッションでした。そのときに見た“八ヶ岳ブルー”と呼ばれる景色に魅了されてしまい、山登りを始めようと思ったんです」

    半年ほど経ってもその熱は冷めず、3シーズン用の登山靴を買い、道具も揃えた。最初に登った山は高尾山。周りに登山をしている友達もいなかったそうで、ひとりで登山を始めた。

    「最初はインターネットで初心者の装備を調べて揃えました。実際に山に行き始めたら今はコロナの影響で難しいのですが、山小屋に大部屋で泊まったりすると、同部屋の人がいろいろと教えてくれるんですね。生の意見なので、いちばん参考になりました」

    テレビの制作会社を退職後、IT会社に入社してからは低山を中心に山登りへ。手軽に行ける高尾山には何度も登っていたそうだ。

    「会社員時代は、年に1~2回アルプスに登山へ行ければいいほうで、それ以外は低山ばかり登っていました。今年、会社を辞めて3月からは専業YouTuberになったんですが、そのおかげで登山の回数はかなり増えましたね。7月は週1で1泊か2泊のテント泊登山へ。南アルプス、富士山、北海道の山と、いろんな山に登りました。徐々に山の体力はついていると思います。平地を走れと言われたら、無理ですけどね(笑)」

    登山を始めた当初から、ひとりで登ることが多いかほさんだが、最近はプライベートでガイドをつけて登ることもあるそう。その理由は、コロナ禍も影響している。

    「ルートによって価格の幅もあるので、個人でガイドをお願いするのは少しハードルが高いかもしれません。だけど、山のYouTuberとして正しい情報を発信したいというのもあるし、なにより山の楽しみ方を伝えたい気持ちが強くて。知らない土地にガイドさんと行くと、その山の歴史、気候、リスク回避など学ぶことが山ほどあります。危機管理を徹底してくれますし、知識豊富なガイドさんと一緒に行くからこそジャンプアップしたルートにチャレンジもできます。それにコロナ禍になってからは、ひとつの山行でどれくらい深く楽しめるのかも重要になってきていると思っていて。いろんな場所に自由に行くことが難しいから、一回の登山を充実したものにしたいんですよね」

    バズることより自分の興味があることを大事に

    専業YouTuberになると、これまで楽しく登るだけだった山登りが仕事のひとつにもなった。それでも山に対して向き合う姿勢は変わらないという。

    「今、YouTuberとしての仕事内容は動画の撮影、編集のほかにテレビやラジオなどの新しい仕事の依頼も自分ひとりで対応しています。そのせいで仕事量が増えて、正直休みはないに等しいです…。事務作業が溜まっているのに、それでも仕事で山に行かなくちゃいけないときには作業の時間に費やしたい! って思うこともありますよ(笑)。でも実際に山に行くと、やっぱりすっごく楽しい。これだけ登っていても、まだまだ山には新しい発見がある。触れたことのない体験ができるんですね。登山の楽しさはつきないなぁと思っています。

    再生数とか、そういうものも気にしないようにしていて。2年ほどYouTuberをやっていると、なんとなくこの動画はそんなに再生数がいかないだろうなぁとか予測はつくんですよ。でも、数字を気にして動画を作っていると、おもしろくない。私は目先の利益じゃなくて、後々その動画がどんな意味をもっていくのかとか、今後の自分にとってどういう利益になるとか考えて動画を作っているので、あんまり再生数が伸びないから…と気にしないように心がけていますね。山選びも、自分の興味関心がいちばん向いているところに行くようにしています」

    高尾山からアルプスまで、さまざまな山を登ってきたかほさんが、この6年でいちばん印象に残っている山行は、北アルプスの表銀座から東鎌尾根を経て槍ヶ岳に向かうルートだ。

    「槍ヶ岳にはそれぞれ別のルートで3回登ったことがあります。なかでも燕岳から大天井岳、東鎌尾根、槍ヶ岳と続く表銀座ルートは忘れがたいですね。燕岳までの急登を抜けると、稜線沿いを歩くのですが、進んでいくうちにジワジワと槍ヶ岳が近づいてくるんですよ。その臨場感がたまりません! 東鎌尾根を行く動画は、再生回数もかなり伸びましたね。

    辛かった思い出でいうと、冬に西黒尾根から谷川岳に行くルート。ここは日本三大急登のひとつといわれてて、かなり急。とはいってもけっこう山登りはしているので、冬山だけどガイドさんもいるし体力的にはいけるだろうと思っていたら、全然大丈夫じゃなくて(笑)。もう動画が撮れなくなるぐらい気力がなくなって、泣いちゃいました…。あのときは、もっとがんばらないといけないなと思いましたね」

    私にとって山登りは人生だといえる

    山に登る体力だけでなく、心の体力もパワフルなかほさん。その仕事に対する熱い想いは、祖父と父親から受け継いだものが大きいと話す。

    「古い考え方だとも思うのですが、私の中でいちばん大切にしたいことは仕事なんです。私の父親は朝の6時半に仕事に出てから、1日ほぼ会社で過ごすような勤勉な人。祖父も定年してからも仕事を続けていたんですね。そういう家庭環境で育ったこともあって、社会人になってからとくに仕事の大切さを感じています。世の中的には仕事よりもライフワークバランスを大事にという流れがあると思うんですけど、今の私は仕事をがんばりたい想いのほうが強いです。

    登山が仕事ですっていうと楽しくなくなっちゃってこと? とか義務的になったと思われそうだけど、好きなことが仕事になったんだから逆に楽しく働けていると思っていて。私にとって仕事は人生そのもの。今は仕事が登山なので、それイコール人生かなとも思うんです。

    私の動画を見たどれだけの人が楽しい気持ちになるかはわからないけど、ひとつでも山に登って動画を作って、それを見て心が明るくなったとか、ポジティブな気持ちになる人がいてくれたらうれしいです。体力が続く限りは、動画を配信し続けていきたいですね」

    強い意思で山と向き合うかほさんの次なる目標は、なんとエベレスト!

    「コロナがおさまったら、海外の山に挑戦したい。いちばん行きたいのはエベレスト。世界でいちばん高い山はどんな景色なのか確かめたいです。高い山に登るたびに、もうちょっと高い山はどんな景色なんだろうって思うんですね。だから、エベレストに登るしかないなって! 日本の山とエベレストはまったく別ものだとも思いますが、チャレンジしたいです!」

    かほさん

    岐阜県出身の登山YouTuber。会社に勤めながらYouTubeチャンネル「かほの登山日記」をスタート。ソロで自撮りした山行の様子や山ごはん、道具の紹介などを配信する。2020年3月からは専業YouTuberに。

     

    構成・文=中山夏美

    NEW ARTICLES

    『 山・ハイキング・クライミング 』新着編集部記事

    キツいといわれるけど…蓼科山に登ってわかった得難い魅力とは?

    2024.04.11

    シェルパ斉藤の“はじめの一歩”「東海自然歩道」を未来につなぐ旅

    2024.04.09

    那須岳で美しすぎる山体を見よう!登山初心者向けや中級者向けのコースを紹介

    2024.04.07

    東京・高田馬場にある山頂まで登れる富士塚【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.44 】

    2024.04.06

    福島県「安達太良山」の絶景を見てほしい!初心者でも登りやすい登山のポイントを解説

    2024.04.04

    オーストリア公認ハイキングガイドが教えてくれた「チロル地方」のハイキングが魅力的すぎたっ

    2024.04.03

    高田馬場にあるという「おとめ山」どこにある?【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.43】

    2024.04.02

    高田馬場にあるらしい高田富士を探して歩く【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.42 】

    2024.03.28