おいしくなって保存もきく調理法
塩糖水と書いて、えんとうすい。あまり聞き慣れない言葉だが、塩と砂糖と水を混ぜた液体のこと。なんでも、この液体に漬けるだけで、肉や魚をふっくらジューシーに調理できるのだとか(!?)。そんな魔法の調理法を紹介してくれたのは、料理家の上田淳子さん。
「加熱することでパサつきがちな肉や魚を塩糖水に漬けると、水分を保ってしっとり柔らかく仕上がるんです。そのため、脂肪分が少なくてパサつきがちな、鶏のムネ肉やササミ、豚モモ肉の塊。魚ならタイやタラ、カジキなどがこの調理法に向いています。肉の中まで均一に味がつけられるのも特徴です」
燻製の下ごしらえに使うソミュール液と同じ考え方だが、もっとシンプルで、日々のご飯作りに手軽に取り入れられるようにと考えられた、上田さんの調理法だ。しかも、塩糖水に漬けておくと、表面の汚れや雑菌を落とすことができ、臭みを取ることができるのだとも。保存性も高まるので、漬けたまま冷蔵しておけば、肉は4、5日、魚も2、3日新鮮さをキープすることができる。ただし、魚なら2日、肉なら3日は漬けたままで大丈夫だが、それ以上になる場合は、塩糖水を捨てること。また、肉は塩糖水を捨てた状態で冷凍保存することも可能だ。
ということは……、この調理法、実にキャンプ料理に最適なのである! 前日から漬け込んでそのまま持っていけば、新鮮なまま食べられるうえ、下味がついているので、余分な調味料を持っていく手間も省ける。サッと調理できるので、時短にもなる。今回は、そんな塩糖水レシピを3回にわたってご紹介!
ソース要らずのポークグリル
1豚ロース肉を2枚、塩糖水に漬ける。塩糖水の分量は、肉や魚200〜300gに対して、塩小さじ2/3(約3g)、砂糖大さじ1/2(約5g)、水100mlが基本。空気を抜き、この状態で3時間以上おく。調理(焼く、炒める、揚げる)する際は、水気を切ってペーパータオルで水分をよく拭くこと。
2グリルにオリーブオイルを塗って中火にかけ、十分熱くなったら、両面筋切りしてコショウをふった肉を入れ、片面2〜2分半ずつ焼く。焼いている間は触らないこと! フライパンの面と肉が密着していると、蒸気がこもらず、表面にきれいな焼き色がつく。
完成! グリルで焼いただけとシンプルだが、塩味がしっかり染み込み、素材の味が引き立つので、これだけでも十分美味しくいただける。ふっくらジューシーな仕上がりで、冷めてもしっとりやわらかなので、BBQにも最適。お決まりの焼肉のタレも不要だ。
「比較的水分が失われにくい鶏モモ肉、豚肩ロース肉などは、漬けてもあまり変わらないので必要ないでしょう。牛肉も不向きです。ただ、豚モモのかたまり肉で作る手作りハムも絶品です。茹でハムなら長めに塩糖水に浸けて茹でるだけなので、キャンプでも手軽に作れますよ」
上田淳子さん
家庭でも再現しやすいフレンチレシピや、無理しない普段の食事をベースに料理家として幅広く活躍中。じつは学生時代ワンダーホーゲル部で、数々の山を闊歩。ひとり暮らしのときはコッヘルで料理を作っていたとか。「山の上でオイルサーディンの缶詰をそのままバーナーでぐつぐつ煮て、レモンを絞ってワインで乾杯、なんてのも結構いけますよ」かなりのワイン通でもある。『おいしくなって保存もきく!塩糖水漬けレシピ』(世界文化社刊)など著書多数。