「安・近・短」で楽しめる!?「ロング・ディスタンス・トレイル」の世界を知ろう! | 山・ハイキング・クライミング 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2020.10.05 吉澤英晃

    私が書きました!
    山岳ライター
    吉澤英晃
    群馬県生まれ。登山用品を扱う会社の営業マンを経てフリーランスとして独立。幼少のころ家族で楽しんだキャンプでアウトドアが好きになり、大学で探検サークルに入ってから山に登り始めました。現在は山岳会に所属して、春から秋は沢登りとテンカラ釣り、冬は主にラッセル山行とアイスクライミングを楽しんでいます。 

    日常生活から飛び出して知らない土地を巡る旅は楽しいですよね。豊かな自然を楽しみ、地元の文化を知り、人々の優しさに心を揺さぶられることもあります。

    そんな旅の楽しみを体験できる一本の長い道が存在します。それがここで紹介する「ロング・ディスタンス・トレイル」です。今回は一般社団法人トレイルブレイズ ハイキング研究所の代表理事を務める長谷川晋さんに、その魅力について伺いました。

    歩くことを楽しむために造られた道

    「ロング・ディスタンス・トレイル」という言葉は欧米から輸入されたもの。人が歩くために造られた距離が長い遊歩道のことで、アメリカのカリフォルニア州にある約340kmに及ぶ「ジョン・ミューア・トレイル」や、同じくアメリカの東部に聳えるアパラチア山脈に沿って南北に伸びる全長3499kmの「アパラチアン・トレイル」などが有名です。

    北米には複数のロング・ディスタンス・トレイルが存在する

    そして国内にもロング・ディスタンス・トレイル(以後、長距離トレイルとする)があることをご存知でしょうか。新潟県と長野県の県境を巡る80kmの「信越トレイル」や、青森県八戸市から福島県相馬市を繋ぐ全長1025kmの「みちのく潮風トレイル」など、その土地固有の自然や文化と触れ合える個性的な道が実は20箇所以上も点在しています。

    2021年4月から販売開始予定で現在作成中の、みちのく潮風トレイルのデータブック(写真はβ版)

    そんな長距離トレイルは多くが自然の中に造られており、里山や丘などを歩くことから登山のスタイルのひとつである「縦走」と結びつけて、その延長として捉えている人もいるのではないでしょうか。しかし長距離トレイルには下界のアスファルト道も含まれます。いわゆる登山道とは違うようです。

    一般社団法人トレイルブレイズ ハイキング研究所代表理事で、Hiker’s Depotスタッフの、長谷川晋さん

    「登山は山頂に立つことが目的で、達成感を求める人が多いと思います。でも長距離トレイルは“歩く”という行為を楽しむために造られた道なんです。長距離トレイルにあるピークはひとつの通過点で、訪れる人のいちばんの目的は“歩くこと”にあります」

    普段、私たちの日常生活で歩くことは移動手段であることが多く、意識して“歩きたい”と思う機会は少ないはず。しかし、世界はもちろん国内にある長距離トレイルは人気があり、多くの人が訪れています。一体何が人々を引き付けるのでしょうか。

    「ちょっと目を閉じて想像してみてください。長距離トレイルと名付けられた道があって、これが何㎞先までも続いているというだけで、この道の先に何があるのか、なんだか興味が湧いてきませんか。長距離トレイルは“歩いてみたい”と思うきっかけを与えてくれる道でもあるんです」

    ゆっくり歩きながら自分だけの体験を探してみよう

    まだ知らない世界を見てみたいという探究心と、それを実際に確認することの面白さ。その感覚は、旅をしたことがあれば誰もが経験のあることでしょう。さらに一歩一歩自分の足で遠い場所まで歩いて行くことをイメージすると、どこかロマンすら感じます。そんな長距離トレイルが気になり始めたら、今度は「こんなにきれいな景色が待っている」など、もっと具体的な魅力が知りたいですよね。

    「長距離トレイルごとに違いがあるのはもちろん、ひとり一人感じる魅力は異なるはずです。たとえば同じ道を歩いて、同じ景色を同じ角度から見たとしても、時期や時間、天候など、さまざまな条件で目に映るものは変化しますよね。観光名所を巡るような感覚から意識を変えて、好みの絶景ポイントに出会ったり、道端できれいな花に気付いたり、地元の人々と会話をしてみたり、自分だけの体験を探すように歩いてみると、より長距離トレイルを楽しめると思います」

    もしこれが車や自転車で移動すると、スピードが速すぎて見過ごすものが多くなってしまいます。どんな些細なことにも感動したり、喜んだりできるのは、ゆっくり行動する「歩く」という行為だからこそできる体験なのです。

    長谷川氏の熱い話に耳を傾ける筆者

    とは言っても、長距離トレイルは自然を感じるために山の中も歩きます。登山の経験がないとちゃんと歩くことができるのか、遭難しないかなど不安ですよね。

    「もちろん基礎的な体力や登山の知識、装備はあるに越したことはありません。ただ国内にある長距離トレイルは街が近くにある里山を歩くことが多いため、体調不良などのトラブルに見舞われても助けを求めやすい。また多くの人が安心して歩けるように、要所要所に道標が設置されています」

    気になる区間を歩くだけで長距離トレイルは楽しめる

    長距離トレイルをワンシーズンの間に端から端まで踏破することを「スルーハイキング」といいます。もちろんそれを目標にしている人も大勢いるのですが、必ずしもスルーハイキングをしないといけない、といったルールはありません。それぞれのスケジュールに合った計画で気になる区間を自由に歩く「セクションハイキング」という楽しみ方も人気です。

    登山初級者も「安心」して歩くことができて、国内という「近場」にあって、「短い距離」でも楽しめる。そう考えると、長距離トレイルはまさに「安・近・短」。海外を舞台にした長期遠征だと思っていたものが、途端に身近な存在になりました。

    トレイルを歩くためのマナーなどが書かれたパンフレットやマップも各所で制作・配布されている

    今度の休日は自分だけの体験を探しに、ふらっと長距離トレイルを歩いてみませんか。どんな景色や出会いが待っているのか、出発前からワクワクできるのもまた、長距離トレイルの魅力です。

    次回から具体的に日本国内にある長距離トレイルを取り上げて、距離や歩き方、適したギアなどを紹介します!

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