- Text
- Source
ビーパル小僧の「野遊び」自由研究
第4回 先入観なしで秋に鳴く虫の声を聴く
ズィ〜……チョッ

初秋の夕暮れどき、河原や雑木林を埋めるのは鳴く虫の声。
チンチロリンならマツムシ、ガチャガチャならクツワムシのはず……と、本物を知らなくても思えるのは、唱歌の『虫のこえ』を知っているから。それではと耳を澄ませてみると、あれ、該当する声はいない???
それもそのはず。『虫のこえ』の歌詞や図鑑に表記される鳴き声は誇張されているので、たとえ目の前で鳴いていても初めて聞く人には一致させることが難しい。「チンチロリン」と表現されるマツムシは実際には「ピッ、ピリリ」と聞こえるし、クツワムシは「ジャジャジャジャ……」と表現したほうが近い。
また虫の声は気温や時期で音の高低やテンポが変わるのでパターン違いにも悩まされる。
面白いのは同じ声を聞いても人によって聞こえ方(あるいは聞こえた音の表現)に差があること。ある人には「ビーン!」と聞こえるものが別の人には「ジー!」と聞こえたりする。さらには、人によっては聞こえない音域で鳴く虫も……。
そんな虫の声を聞き分ける達人への早道は……なし! 姿と音を同時に記録して、音声情報付きの図鑑や動画サイトと地道に突き合わせるほかない。
はてさて、みなさんの耳には、秋の虫の声はどのように聞こえるでしょうか?
夜の原っぱは虫たちのリサイタル会場

一度にたくさんの虫に出会いたいなら、環境の変化に富んだ場所がおすすめ。草地、灌木、樹林が連続する谷戸や、草原と草やぶにつながる河畔林に出かけると、多種多様な虫たちが夕方から鳴きだす。明るいうちに下見しよう。
草やぶ

鳴く虫の多くは草食もしくは草食寄りの雑食性。種ごとに好む草は異なるものの、イネ科とクズは多くの種に好まれる。
林縁

林内より環境の変化に富む林縁は、観察の好適地。草陰を好む虫から低木を好む虫、樹上で鳴く虫まで幅広く観察できる。
積み草

草を積んだ山はコオロギ類に人気の物件。しかし、その特性上姿を見つけることは難しい。録音して正体をつきとめたい。
ヘッデンで探し、スマホで録り、図鑑で検索!

「ヘッドランプ」「スマホ」「鳴き声も収録した図鑑」が鳴く虫を楽しむ三種の神器。姿を見つけられなくても鳴き声だけでも録音しておけば、後から声を参照して正体を確かめられる。
見つからない音源は左右からチェック!


頭を上下して左から聞き……

頭を上下して右からも聞く!

虫の声は発信源をつかみにくい。耳を両手で覆って前方にだけ開くと、正面からの音だけを拾いやすくなる。音源の主がいると思われる場所を中心に上下左右にずれて位置を確かめると、居場所が定まる。
あなたにはどう聞こえる? 近所で出会える虫の声
クビキリギス
盛んに鳴くのは初夏。秋に羽化し成虫で越冬。新成虫が秋に鳴くことも。

カヤキリ
7〜9月、イネ科の茂みから金属音を帯びた大音量の声を響かせる。

アオマツムシ
明治時代に上陸した外来種。8〜11月に集団で樹上から大音量を響かせる。

リーリー
リーリー……
ハヤシノウマオイ
7〜10月に活動。よく似たハタケノウマオイとは鳴き声で区別できる。

チョッ
ササキリ
8〜11月に林床の下草で鳴く。人によっては鳴き声が超高音で聞こえない。

ジィジィ
ジィジィ……
クツワムシ
8〜9月にクズの茂みで鳴く。名前は馬の口にはめる轡の音に由来する。

ジャジャ……
スズムシ
7〜10月、明るい林床や河原の草原で鳴く。1匹ではリー、リーと鳴く。

リィ──ン
リィ──ン
ヒガシキリギリス
7〜9月、明るい草地で昼夜を問わずに鳴く。チョンの音はたまに入る。

チョン
マツムシ
8〜10月に河川敷や海岸の開けた草地でグラスをはじいたような声で鳴く。

ピッ!ピリリ
ミツカドコオロギ
8〜10月に発声。乾いた草地に多い。オスの顔面は頰と頭頂部が尖る。

ピッピッピッピ……
ツヅレサセコオロギ
8〜10月に鳴き「綴れ刺せ(衣を繕え)」と、冬支度の繕い物の合図にされた。

リーリー……
エンマコオロギ
7〜10月に鳴く。抑揚のある鳴き声は、コロコロリーと表現されることも。

リーリー……
※構成/藤原祥弘 撮影/矢島慎一
(BE-PAL 2026年10月号より)




