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7月28日、僕の地元・熊本で大きな地震が起きました。10年前と同じくらいの規模の地震でした。僕はその時、東京にいました。家族と自宅は皆無事でしたが、祖母の家や親類の家は被災しました。
まずは、避難生活を余儀なくされている皆様に心よりお見舞い申し上げます。そして、この地震によって亡くなられた方々に、謹んで哀悼の意を捧げます。
時折襲う余震に警戒しつつ、この文章を認めておりますが、僕自身は気持ちも体も健やかにしておりますので、どうぞご安心ください。
今月からは、被害の大きかった地域のために、僕なりにできるアクションを始めようと考えています。その様子も、このエッセイでご報告していきますね。
海と祈りの島「五島」
それにしても、全国的に厳しい暑さですね。皆さん、お身体は大切になさっておられますでしょうか。とくに、暑さから身を遠ざける場所が冷房の効いた室内に限られがちな都心部にお住まいの方々、どうぞお気をつけくださいね。
僕は熊本市とはいえ郊外の農村地帯に住んでおりますゆえ、ほとんどエアコンを使うことはなく、日中も扇風機だけでやり過ごしております。広い庭には樹木やタープがつくる木陰があちらこちらにありますし、幸いにも水道は使えますので、即席で拵えたガーデンシャワーで時折水浴びなどをして、熱中症なるものを躱しています。
今日はそんな行水の合間に、7月の思い出について認めようと思います。
7月の上旬。田植えや、その後の田んぼの手入れが一区切りついたところで、僕はまた旅に出ました。長崎は五島列島へとね。
以前、このエッセイで一度、五島の旅について披露させていただきましたよね。うん。
五島列島。ビーパル読者のネイチャーハンターの皆様ならば、ご存じの方も多いかと思います。
長崎から西へおよそ100km。東シナ海に浮かぶ五島列島は、大小140あまりの島々からなる美しい群島です。どこまでも広がる青い海と豊かな自然、そしてキリスト教の歴史と祈りの文化が、今も人々の暮らしの中に静かに息づいています。
ゆっくりと流れる島の時間と、訪れる人をあたたかく迎えてくれる人々の温もり。それこそが、この場所ならではの大きな魅力です。
「海と祈りの島」。
それが僕にとっての五島の印象です。
五島列島において、僕がご縁をいただいているのは福江島と上五島。とくに上五島とのご縁は、もう10年の年月を数えるほどになりました。そして上五島には、サーフィンを愛してやまない友人たちが暮らしています。
今回の旅は、まず福江島から入りました。
長崎の港に車を停め、ギターとキャリーバッグを抱えてフェリーに乗り込みます。高速船も走っているのですが、僕はのんびりと横になってくつろげるフェリーを選びました。
悩ましくも恵みをもたらす台風

福江島を訪れるのは今年で3年目です。島に暮らすギタリスト、石田大介さんの計らいで、こうして福江島とのご縁をいただいています。
大介さんはね、本当にハートフルでエモーショナルなギタリストなのです。一緒に演奏するとね、何とも言えない心地よい「ゾーン」へと誘われる感覚が芽生えるから不思議です。
この感覚は、ミュージシャンに限ったことではないと思いますが、僕たちの場合、同じ音を共有していると、言葉を必要としない、それでいてお互いの気持ちが分かり合える世界へと突入することがあるのです。僕はそれを「ゾーン」と名付けています。はい。
とにかく、福江島でのライブはね、集まってくださった皆さんのおかげで、とてもあたたかな雰囲気になりました。

ところで、僕が五島に上陸したあたりから、その海に変化が現れ始めました。
大型で非常に強い勢力の「台風9号」がもたらすうねりが、じわりじわりと届き始めたのです。天気図で確かめてみると、まだ沖縄の南海上。予想される進路もかなり離れてはいるのですが、パワフルな台風だからでしょうか、どうやらうねりばかりは、しっかりと東シナ海一面に届くようです。
当初は福江島、上五島と二つの島を股にかけてサーフィンをするイメージだったのですが、福江での波乗りは諦め、上五島一本に絞ることにしました。
波浪の影響でフェリーが出航できなくなる可能性がありましたのでね、予定より一日早く上五島入りを決断したのです。
しかし、この判断がドンピシャだった。
フェリーは無事に出航し、しかも「台風の波」が大きく手を広げて、上五島のサーフポイントで僕を待ち構えてくれていたのですから。
時に、台風は悩ましい存在でもあり、ありがたい存在でもあります。
お米作りをしている僕にとって、夏場の台風は恵みの雨をもたらしてくれる一方で、秋の収穫の時期に発生すれば、たわわに実った稲を薙ぎ倒してしまうこともありますから。
そして、サーファー目線で言うなら、台風はほど良き距離にいてくれる限り、最高にご機嫌なパートナーになります。だからね、日本の南の海上に台風が発生したと聞けば、僕らサーファーは、その後の進路を確かめずにはいられません。
世間が「また台風か……」とため息をつくころ、サーファーだけは胸の奥で、小さな子どもが飛び跳ねている。もちろん、被害が出ないことを願いながら。
そしてね、ついに上五島で、その日が訪れました。豪快な台風の波に乗る日が。
前回お話しした屋久島でのサーフィン。あれも台風の波ではありましたが、正確には「バックスウェル」と呼ばれるもので、台風が過ぎ去ったあとに残された波でした。しかし今回は違います。巨大な台風というエネルギー体から、ダイレクトにもたらされる波です。 まあまあ、いかついです。実際。
炸裂する“やばい波”、背中を押した友人の一言

上五島の奈良尾港では、島に住む二人の友人が、僕の到着を待ち構えてくれていました。
二人の車には、すでにサーフボードが積まれています。
ホテルで待機している、東京からサーフトリップに来たもう一人の仲間とも合流し、サーファーは四人になりました。こうなれば積もる話は後回しです。挨拶もそこそこに、僕らは意気揚々と海へ向かいました。
世間には、多くを語り合うことで確かめ合う友情もあるでしょう。でも僕には、同じ海に入る。ただそれだけで分かり合える仲間が、全国至るところにいます。すみません、ちょっと格好いいことを言ってしまいました。

そんなことはさておき、結論から申し上げますと──やばかったです、波。
到着したポイントでは、いわゆるひとつのビッグウェーブが、幾重にも重なりながら炸裂していました。そこは海水浴場でもありますが、その日は当然ながら遊泳禁止。僕ら以外に海へ入る人はいません。クローズ(海が荒れていてサーフィンができない状態)一歩手前、といったところでしょうか。
しかし、よく観察すると、セットの合間を狙えば何とか沖へパドルアウトできそうです。
少しも躊躇することなく海へエントリーする決心がついたのは、ローカルサーファーの友人、リョウスケくんの一言でした。
「やりましょ。」
満面の笑みでした。
長年この海と向き合ってきた彼の一言一言は、不思議と僕を安心させてくれます。もし一人だったら。僕はこの海で、この波で、サーフィンをしたでしょうか。波の大きさに圧倒されて、尻尾を巻いて逃げ帰っていたかもしれません。
でかい波とはいえ、まとまりは良く、とても綺麗にブレイクしています。
僕らはそれぞれウェットスーツに着替え、サーフボードへワックスを塗り込みました。さて、いよいよゲッティングアウトです。

サーフィンにおいて、目に見える「波」と同じくらい意識しなければならないものがあります。それが、なかなか目に見えない「カレント」です。海における水の流れですね。時と場合によっては、まるで川のように流れるカレントさえあります。
岸から沖へ向かうカレントをうまく捕まえられれば、あまり苦労せずに沖へ出られることがあります。いわゆる離岸流です。
どなたも海へ入る前には、ローカルサーファーや経験豊富な人たちが、どのコースから入水しているかをじっくり観察されるといいかもしれません。彼らは概ね、その海の流れを熟知していて、理にかなった動きをしていますから。
リョウスケくんのアドバイスどおり、左端の堤防寄りのカレントに乗ると、僕らは皆、とてもスムーズにゲッティングアウトすることができました。
そして実際にアウトまで出てみると、やはり台風の波は大きかった。ビーチから眺めていた時よりも、さらに迫力があります。しかしね、空はよく晴れ、何より海の水が本当に美しい。風も比較的穏やかだったので、不思議とそれほど恐ろしさは感じませんでした。
何本かの波にアプローチしましたが、なかなかうまくキャッチできません。海の上で、どれくらいの時間が過ぎたでしょうか。一時間ほど経った頃だったと思います。
一本ね、僕が波を待っているところへ、来たのです。豪快で、そして美しい形の波がね。

僕はその波と目が合った瞬間、すぐに向き直ってパドリングを始めました。じわじわと背中に感じます。あの波が迫ってくる気配を。
ふわっと、その波のエネルギーがサーフボードへ伝わった瞬間、さらにひとかきだけパドルを入れ、反らしていた胸を少しだけボードへ預けました。
そして、思い切りテイクオフ。僕は、その波にグンと乗りました。現時点で、今年一番大きな波に乗ったかも知れません。
ロングライドこそできませんでしたが、ボトムまで降り、リップへ駆け上がり、ワンターン。それはそれは、何ものにも代えがたい心地よさでした。
次にブレイクしてきた波にもみくちゃにされながら、僕はそのままあっさりビーチへ上がりました。十分すぎるほどの手応えと、満ち足りた気持ちをもらえたからです。
ふと訪れる瞬間、ゾーンへの誘い
波乗りに没頭するとね、興味深い自分自身を発見することがあります。もちろん、波に乗れた喜びだけで満たされる自分もいます。
でも、それだけじゃない。
仲間と同じ海に浮かんでいる時間そのものを幸せだと感じたり。透き通る海の美しさに、心が満たされたり。空を見上げ、山々を眺め、太陽の光や雲の流れを感じているだけで、穏やかな自分が現れたり。そうなのです。

サーフィンも音楽も、僕をそんな「ゾーン」へと誘ってくれるのです。仲間とともに美しい上五島の海へ入り、強烈なエネルギーを孕んだ、たった一本の波に乗る。それだけで僕は、「ゾーン」へとトリップしていました。
やがて、みんな海から上がってきました。うまく乗れた者、乗れなかった者、そんなことは関係ありません。
僕らは同じ海で声を掛け合い、励まし合い、そして台風の波が暴れる海から、笑顔で帰ってきた最高の仲間です。
台風のうねりというものは、体の芯にジンジンと響くものがあるのでしょうか。僕らはどうにも祝杯を上げずにはいられなくなりましてね。
上五島の街へ移動し、一緒に海へ入った仲間の一人、ゴウくんのお店「メアリーモーガン」で、小さな宴を開くことになりました。この流れこそ、まさに心地よいカレントです。翌日のメアリーモーガンでのライブがうまくいったことは、言うまでもありません。

上五島での最終日。
帰りのフェリーへ乗る直前まで、僕は海の上にいました。台風の波が、まだ少し残っていたからです。
初日の波よりは幾分サイズダウンしていましたが、それでも時折、力強い波がブレイクします。
海にいるだけで、誰もが満たされているようでした。
五島列島は、今年もまた僕に特別な贈り物をくれたようです。


今月のアウトドアおすすめの一曲♪
The xx 「VCR」
フジロックフェスティバル’26での落ち着いた雰囲気のパフォーマンスは圧巻でした。
東田トモヒロNEWS
現在、東田トモヒロが代表を務める一般社団法人Change The Worldでは、令和8年熊本地震の被災地への支援活動を計画しています。
募金の窓口は設けておりませんが、Change The Worldのオリジナルグッズをご購入いただくことで、その収益が活動の継続と支援の力になります。



ご購入をご希望の方は、こちらよりお願いいたします。
【2026.11.07~ camp in (sat-sun) TOMO CAMP CLUB @sotosotodays 山中湖みさき】
東田トモヒロPresents、特別な音楽とキャンプの時間。目の前に富士山と山中湖を望む最高のロケーションで、心地よい音に包まれながら、素晴らしい2日間を過ごしましょう!

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■ 会場:sotosotodays CAMPGROUNDS 山中湖みさき
(山梨県南都留郡山中湖村平野2431-2)
■ 出演:東田トモヒロ、時川大輔&more…?
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東田トモヒロのオフィシャルWeb Shopにて販売いたします。
料金・種類について
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