どうも。オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。
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【柳沢有紀夫の世界は愉快!山遊び王国チリ・プコン旅・その2】
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前回はこちら↓
そして下りはソリすべり。笑
で、訪れたのがトップの画像の山! 「富士山か!」とツッコミを入れたり、「チリ富士」と勝手に命名したくなるほど見事な円錐台形の「ビジャリカ火山」です。
ビジャリカ火山はチリの中部にあるプコンおよびビジャリカという町のそばにあります。その名の通り活動中の火山。2年前には火口から溶岩が見えたことがあり、危険ということで政府が立ち入り禁止にしたのだとか。
でも今は頂上まで行けます!


ブルーの舗装路とオレンジ色の未舗装路を南下してカメラのイラストがあるあたりが出発点です。送迎車でプコンの街から約30分。


ここからリフトに乗ります。

じつはこの時期、本当はリフトは動かしていないのだとか。でも今回はわれわれ取材班のために一番低いところにあるリフトだけ、しかも登りのみとはいえ特別に動かしてくれるのだそうです。
これで標高1400メートル地点まで、高度差200メートルを稼げるのだとか。この特別扱いが少し川口探検隊になった気分です。笑
しかし……リフトに乗る前から寒いです。気温は5度くらいらしいのですが、ほぼほぼ台風並みの強風で体感気温はたぶん氷点下。昔富士山に登ったとき、朝2時に起床したのはいいが前日から続く秒速35メートルの風でガイドから「1人のガイドにつき1~2名を連れて行くマンツーマン登山ならチャレンジもできますが、今回は2人のガイドで十数人を連れて行く状態。安全が保障できないので中止にします」と言われたときと同じくらいの強風です。先が思いやられます。

いよいよ登山開始! ところが予期せぬ事態が……
リフトを降りたところの標高は先ほども書いたように1400メートル。ここで最後のトイレを済ませて8時20分に出発。



だけど最初からなんだか疲労困憊の状態です。自分でも不思議になるくらい力が入らないのです。
チリ到着の2日後ですが、なんたって私が住むオーストラリアのブリスベンとチリの時差は11時間(日本とは12時間)。完全に「昼夜逆転」状態で、まだ時差ボケ状態。加えて風邪気味だったのです。
……とそのときは思っていたのですが5時間くらいは寝られたし、風邪気味とはいえ熱があるわけではないし。なんでこんなに活力がみなぎってこないのだろうと不思議でした。
今振り返ってみるとじつは他の原因があったのだと思います。とにかく。日本とは違ってチリでもオーストラリア同様、一つのパーティーとして一列になって間を空けずに登るのではなく、各自が自分の好きなスピードで進みます(もちろん先頭と最後尾にはそれぞれガイドが付きます)。で、私は最後の集団ではないのだけれど、先頭集団からは完全に離されて孤高の旅路状態。
クランポンを装着するも……
出発から1時間後の9時半頃、この先は雪も深くなるというのでクランポン装着を兼ねての休憩になりました。


何から何まで頼りきりで、ちょっとオムツを替えてもらっているような気分。
ここでピッケルも渡されます。じつは私にとってピッケルは初めての経験です。
ガイドの一人から「トレッキングポールは1本たたんで仕舞い、片手はピッケル、もう片方の手でトレッキングポールを持ちます。急斜面は蛇行しながら登りますがピッケルは常に、斜面の上のほうの手に持ちかえるように」と指導を受けます。
その後すべったときには腹ばいになってピッケルを使ってカラダを止める方法の指導もあり、一人ひとり実際にやってみます。
そんなこんなで充分すぎるほど休憩をして、糖質の補給もしてから再出発したのですが……それでもペースが上がりません。先頭集団についていこうとするのですが、すぐに取り残されます。
カラダが自分のカラダでないかのように重いのです。
無念のリタイア。涙
で、再出発から1時間後、ちょうど中間地点あたりでの次の休憩のときに、ガイドに「リタイアしたい」と告げました。私のあとから登ってきた人たちも全員賛同。ちょうど中間地点あたりで11人中5人が脱落です。



ただこの写真の真ん中にまっすぐ伸びる道のようなもの、なんだか気になりませんか? もちろん「登山道」ではありません。

その避難小屋でしばし休憩するとのこと。ですが……。

しかも急斜面で、アイスバーン状態になっていたので立つこともままならず、ゆっくり休憩できません。風を避けることができるのが唯一いい点なのですが、快晴の外とは違って日が当たらないのでそれなりに寒いです。

入口の高さは5メートル以上あったと思います。しかもドアもない。冬場には雪がもっと積もることを考えると、下手にドアなどはつけられないのかもしれませんね。
そして「本日の隠れメインイベント」。笑
さてこのあとリタイアした5人はガイドに連れられてトボトボと下山……かと思ったのですが、全員口を揃えて「無茶苦茶楽しかったね~」という「本日の隠れメインイベント」がありました。それはソリすべり!
いくつか前の写真で真ん中にまっすぐ伸びる道のようなものがありましたよね。それは「ソリすべりのルート」なのです。
そのソリ、下敷きくらい薄いけれどももう少し柔らかい感じです。写真がないのかと言われそうですが、下山に同行してくれたガイドに「スマホも全てリュックの中にしまって」と言われて従いました。
スマホをしまう理由の1つは、雪の中に落として無くしてしまう人が多いから。私は首から下げ防水カバーに入れられる状態だったのでなくすことはなかったのですが……途中で登山を断念した身、強くは主張できません。
でも2つめの理由を聞いて、素直に納得しました。ソリはかなりスピードが出ます。それでほぼずっと両手でアイゼンを脇の雪に押し付けるようにしてブレーキをかけながら、滑っていくとのこと。
はい、ある意味で雪の上を滑落しているのに近いのでアイゼンのブレーキは必須で、両手は常にふさがれた状態なのです。というわけでスマホを持ってすべるのは物理的に無理。小さくてヘルメットや服の前につけられるアクションカメラが欲しいなとまた思いました。
ちなみにこのソリができるのは雪がふわふわなときのみなのだそう。硬いとアイスバーン状態になって危ないということなのでしょう。
そしていよいよ出発! 前に書いた通りソリ用のコースが作られているのですが、リュージュやボブスレーのように深く掘られているわけではないので、コースアウトして雪を巻き上げてしまうこともあります。でも逆にそれが楽しいのです!
ソリのコースは確か3セクションありました。セクション間は歩いて移動です。各セクションの所要時間はそれぞれせいぜい3~5分くらいだと思います。
ふもとに近づき雪が少なくなったらソリは終了です。童心に帰って楽しんでいたので気づきませんでしたが、さっきまで青空が見えていたのに天気はかなり悪くなっていました。


板をかついで登山したのか、はたまたヘリコプターなどで下ろしてもらったのか。いずれにせよ1回のすべりにかける情熱がすごいです。。

さて私は結局たどりつけなかった頂上について。いわゆる噴火口が「お釜」状態になっていて、かつては1時間弱で「お鉢巡り」ができたそうです。
ただ2年前に火口の中でオレンジ色の溶岩が見えるほど活動が活発になってからは、危険だということで一周はできなくなったそう。
そんな頂上にはたどりつけなかったけれども、雪山も雲海も楽しめて、みんなにも大好評のソリすべりもあって、楽しい一日でした。途中で断念したけれども旅で登山でも一番大切なのは「無事に帰ること」ですよね。
ちなみに今振り返ってみると体調不良の原因、おそらくなのですが「高血圧の薬の飲みすぎの低血圧」ではないかと思います。笑
【柳沢有紀夫の世界は愉快!】シリーズはこちら!
Amity Tours (今回のプコンでの各アクティビティーのツアー催行会社)
https://www.amity-tours.com/
CHILE TRAVEL(チリ政府観光局の旅行者用サイト)
https://www.chile.travel/en/
ATTA (ADVENTURE TRAVEL TRADE ASSOCIATION。アトベンチャートラベルに関する世界的な業界団体。今回のイベントを主催)
https://www.adventuretravel.biz









