ニホンザルに似てる?フランスの森林公園に暮らす、アフリカ原産の「バーバリー・マカク」の生態 | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2025.11.27

    ニホンザルに似てる?フランスの森林公園に暮らす、アフリカ原産の「バーバリー・マカク」の生態

    ニホンザルに似てる?フランスの森林公園に暮らす、アフリカ原産の「バーバリー・マカク」の生態
    フランスのアルザス地方には、自然の中でのびのび生活するサルたちがいる施設があります。「La Montagne des Singes (ラ・モンターニュ・デ・サンジュ)」、日本語に直訳すれば“サルの山”という意味の、その名の通り山中にある森林公園です。

    ヨーロッパとアフリカの間に位置するジブラルタルを除き、欧州には野生のサルが生息していません。そのため、野生に近い生活環境の中で暮らすサルの生態を訪れる人々に知ってもらおうと、1969年にオープンしたのだとか。そんなサルたちが暮らす山の公園を訪れてみました。
    Text

    欧州では珍しいフランスの「サルたちに会える森林公園」へ

    森林の中で遊びながら、サルの生態について学ぶ

    山のうねうね道を車でひたすら進んでいくと、突然開けた場所に出ました。どうやら24ヘクタールほどあるこの森林が、200頭以上いるというサルの住まいのようです。

    駐車場内にあった“サルの山”森林公園の案内板。

    入り口から歩を進めるとそこは森林で、ピクニックエリアもあります。広い遊歩道から左の方へ行くと、アスレチックコースのようなものがありました。ユニークなのは、15ほどあるそれぞれの遊具とサルの行動を結び付けた体験ができること。

    例えば、雲梯(うんてい)の前にあるパネルには「テナガザルみたいに体を前後に揺らそう」などとあり、特に子どもたちは嬉々としてパネルに書かれたミッションに従いながら進んでいました。

    様々なアスレチックがあり、なかなか楽しい!

    もちろん子どものみならず、大人も童心に帰ってサルの気分で遊べます。

    「バーバリー・マカク」のように登れるかな?
    「どうやってシファカのように横っ飛びするの?」とミッションに悩む遊具も。

    森林以外にも小さな池や木の橋があって、水中に暮らす様々な生物を観察することもできるようです。この池にはイモリが暮らしているとのことでしたが、この日は見つけることができませんでした。 

    森林内にはイモリが棲む池や木製の橋もありました。

    気を取り直してアスレチックコースエリアをさらに歩くと、今度は野鳥たちを観察できる「壁」にたどり着きました。

    野鳥をこっそり観察できる壁。 

    壁の向こうには給餌所や巣箱が設置されているので、アルザス地方の野鳥たちが集まってくるというわけです。さっそくどんな鳥たちがいるかワクワクしながら穴を覗くと、鳥たちはぱっと飛び立っていってしまいました。

    驚かせてしまったかと、あの手この手でこっそり覗くべく挑戦してみましたが、鳥たちに私の存在がすぐばれてしまうのです。野鳥たちは警戒心が強いので、不審な動きを続けていた私を“胡散臭くて怪しいヤツ”と認定したのでしょう。

    そして野鳥たちだけでなく、それまで私と同じように壁の穴から鳥を観察していた人たちも、皆いつのまにか姿を消していて、私は一人になっていました。

    残念、逃げられてしまった…。

    ニホンザルにそっくり!アフリカ原産のバーバリー・マカクとは

    こうして森林の道に沿って奥へ歩いて行くと、金網が張られた新たな入り口が見えてきました。どうやらここがサルたちに会えるエリアのようです。入り口で手渡されたレシートをスタッフに見せると、先へ進むことができました。

    ちなみに入り口で入場料を払うと、窓口のスタッフの女性はレシートのみを渡してくれます。「このレシートはまだ捨てないでくださいね、後でまた必要になるので」とのこと。もう少しでその辺のゴミ箱に捨てるところでした、訪れる際はなくさないようにしましょう。

    荷物のチェックをされている人もいましたが、おそらくサルが興味を引きそうなものや危険なものがないか調べていたのでしょう。

    いよいよサルたちが暮らすエリアへ。

    サルたちが住むエリア内には、フランス語、ドイツ語、そして英語で書かれた注意事項の看板があり、そこには「サルに触れてはいけません」「サルと最低1mの距離をあけましょう」「サルにエサをあげてはいけません」「飲食してはいけません」「お子さまと手をつないでください」とありました。

    サルの生活圏内での注意事項が記された看板。

    森林の中の散策道を1分も歩かないうち、道や横の林にいるサルたちの姿が目に入りました。みんなニホンザルにとても似ています。ここで暮らしているのは、アフリカ北部に生息する「バーバリー・マカク」というサル。ニホンザルと同じオナガザル科マカク属なのだそう。

    そういえばニホンザルは、フランス語でも英語でも「二ホンマカク」の意味がある、Le macaque japonais(マカク・ジャポネ/フランス語)、Japanese macaque(ジャパニーズ・マカク/英語)と呼ばれることを思い出しました。

    ところでマカク属のサルは、日本などアジアに生息しているものがほとんど。バーバリー・マカクは唯一アフリカに住むサルなのだとか。

    周りを見渡すと、あちこちにバーバリー・マカクたちが。

    フランスのアルザス地方にアフリカのサルが暮らしている状況は不思議に思えますが、アルザス地方の気候条件はバーバーリー・マカクの故郷、モロッコの中部アトラス山脈のそれと似ており、好条件の地なのだそうです。

    雑誌の表紙のような、深みあるポージングで沈思黙考中。

    バーバリー・マカクたちが思い思いに過ごす森林の道を歩いていると、餌やりの時間なのか、黄色いシャツを着たスタッフが説明をしながらリンゴやナッツを辺りに撒き始めました。いっせいに地面に落ちた食べ物を拾い始めるサルたち。

    バーバリー・マカクについてスタッフが説明をするのを聞く人々(とサル)。

    私は餌を食べているサルより、それぞれにマイペースに過ごしているサルの様子の方に惹かれ、観察をしていました。

    このサルはりんごをかじってはその都度上を向く…を繰り返していました。

    餌を食べながら、時折空を見上げている個体や毛づくろいをし合っている個体、そしてサルたちを見て喜ぶ人々を冷ややかにウォッチングする個体など、一体ここのサルたちは毎日何を考えて過ごしているのかな、と興味がわきました。

    サルたちと普通に会話ができたら面白いだろうな、「ここの生活はどう?」など色々質問してみたかったです(笑)。

    小川が流れる開けた場所で、サルも人間ものんびり。

    絶滅危惧種のバーバリー・マカクを守れ

    ここ数十年の間で、森林の乱伐や家畜の過放牧、さらにはバーバリー・マカクの赤ちゃんをペットとして販売する違法取引の蔓延といった理由により、モロッコとアルジェリアに生息するバーバリー・マカクの個体数は劇的に減少しています。専門家によれば、1978年には2万3千頭ほどいたバーバリー・マカクが、いまや8千頭未満にまで減っているのだと言います。

    訴えかけるような表情で見つめてきました。

    そのため、バーバリー・マカクは2008年より国際自然保護連合(International Union for Conservation of Nature/IUCN)のレッドリストに登録され、絶滅危惧種となっています。そこでこの森林公園ではバーバリー・マカクの個体数を増やして、アフリカの自然へ野生復帰させる試みも行っているのだそうです。

    バサバサと葉の音をさせて木を降りてきた個体。さすが木登り上手!

    かくして今回は、バーバリー・マカクの生活空間を共有させてもらうという貴重な体験ができました。そして平和にのんびり暮らすサルたちの今後の繁栄を祈りつつ、「サルの山」森林公園を後にしたのでした。

    La Montagne des Singes:https://www.instagram.com/montagnedessinges/

    小島瑞生さん

    スイス在住ライター

    1998年~2009年までアイルランドで暮らした後、2009年からスイス在住。スイス始め欧州の国々のさまざまな興味深い情報を雑誌やウェブサイト、ラジオ等のメディアにて発信中。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員

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