- Text
- Source
BOOK 01 クマとの遭遇のリアル、ここから学ぶべきこととは
ドキュメント『クマから逃げのびた人々』
三才ブックス編
三才ブックス
¥1,980

全国各地でクマと人間との接触事故が相次いで報道されている。人家にクマが侵入する、住宅街での遭遇など、想像もしなかった事例がこれまで以上に関心を持つきっかけになっているのだろう。事故発生後に程なくして該当の個体が駆除される末路はなんとも気持ちの行き場がないものだ。
本書は、クマに遭遇しつつも生還した人びとのインタビュー集。8つの話はどれも現場の様子を生々しく想像させる。山中、自宅の畑、キャンプ場、住宅街などシチュエーションは多岐にわたる。数々のインタビューの中には実践で活かせる防御対策や共生への糸口が見つかりそうだ。
また、クマに襲われた経験は心に深い傷を負ってしまうという当事者の痛切な悩み。身体の治療と回復はもちろんだが、心のケアも必要になることはこれまであまり語られなかったかもしれない。
そして、クマとの共生について語る専門家の話も自然で遊ぶことが多い人は必ず読んでおきたいところ。「クマには個性がある」
「人を襲うのは防御目的」など、行動原理や生態は前々から知られていたことだが、フィールドに出る際には改めて肝に銘じたいもの。ヒグマ、ツキノワグマ、ともに個体数は増加傾向にある。出合わないことが一番の防御策なのは間違いない。
BOOK 02 うんこと向き合い世の中を見れば、風景が変わるかも
『うんこになって考える いのちを還す野糞と土葬の実践哲学』
伊沢正名著
農山漁村文化協会
¥2,200

誰もが毎日お目にかかっているであろう「うんこ」。ほとんどの場合は、水洗トイレに流され処理される、膨大な水とエネルギーを使って……。だが本来「うんこ」は土に還るべきものなのだ。
本書は糞土師として活動する著者が世の中のあり方や物事の捉え方、死生観をうんこから考える社会学のような一冊。著者は’73年にあった屎尿処理場建設反対運動を発端に、うんこと向き合い、以来自然の摂理に従って野糞でうんこを土に還している。
ゆくゆくは自分の身も還したいと願う著者。食べれば必ずうんこが出る、関係ない人はいないはずだ。向き合ってみたら、何かが変わるかも。
BOOK 03 何も起きないが旅の良さが凝縮する
『ロバのクサツネと歩く日本』
高田晃太郎著
河出書房新社
¥1,892

元新聞記者の著者が一頭のロバを連れて日本を歩き旅したルポルタージュ。栃木を出発し、西へ進みさらに九州から北海道へ。旅は1年以上に及んだ。後にクサツネと名付けるロバを引き取りに行くところから旅は始まる。
大きな目的がありそうなものだが、この旅には特にない。同じ場所に数日から1週間滞在したり、常にのんびり。旅先での出会いやクサツネとのやり取りから、著者の実直な人柄が窺える。道中大きな事件は起きず、旅っていいなぁ、つくづくそう思わされた。
BOOK 04 現実の異世界へ探究
自らを揺さぶること
『フィールドワークのちから──「いまここ」を抜け出す人類学』
奥野克巳著
亜紀書房
¥1,980

アウトドア界隈でも「フィールドワーク」という言葉がよく使われるが、元は人類学の分野だ。実際に現場に飛び込んで体験してみること、アウトドアにおいても欠かせない要素でもある。
本書では文化人類学者である著者がフィールドワークの歴史を繙きながら自身の経験も振り返りつつ、フィールドワークを深く考察する。好例として探検家の角幡唯介氏のグリーンランド・イヌイットとの経験が挙げられている。自らを揺さぶり、揺さぶられること、そこから全てが始まる。
※構成/須藤ナオミ
(BE-PAL 2025年11月号より)







