
BOOK 01
女性ジャーナリストが追う人間と火の真なる関係とは

『森を焼く人
自然と人間をつなぎ直す
「再生の火」を探して』
M・R・オコナー著
大下英津子訳
英治出版
¥2,970
オーストラリアに取材で訪れていた著者は、黒焦げになった林を見てこう思った「なんてひどい状態なんだ」。しかし、〈黒焦げの林〉は意図的に火入れされたものと知って衝撃を受ける。
そして、各地の先住民族が火入れを行なってきた歴史や、火によって生長する植物があることを知り、徐々に火に魅せられていく著者。ついには森林火災消防士(火入れに参加するために必要な資格)になり、火入れの現場に踏み込むまでになる。
著者が住むアメリカでは各地で計画的な火入れが行なわれている。森林保全、生態系維持、近年増えつつある巨大森林火災(メガファイヤ)を防ぐためだ。実際の火入れ現場の様子は過酷そのものに映るが、火に魅せられた様々な出自の人物たちが登場し、士気は高い。
本書では森林火災現場の実態も描かれ、過去には多くの殉職者もいて、炎最前線の証言は生々しい。
一般的には鎮火すること、炎を封じ込めることこそがセオリーとされているが、火には森を甦らせる力がある。ヨセミテ国立公園などでは落雷による発火は、状況をコントロールして慎重に焼く方法が取られている。
火は悪か──。人間と火、人間と自然、その関係性を見つめ直す。炎を見ることすらなかなかない現代に今一度考えてみたい問題だ。
BOOK 02
自分だけの地図を描く地形図便利活用術!

『遊べる、学べる、役立てる
地理院地図の深掘り』
今尾恵介著
PHP研究所
¥2,200
国土地理院の地形図は、フィールド遊びには欠かせないアイテムのひとつ。大型書店などでは紙版も購入できるが、国土地理院のウェブサイトでは無料公開されている。紙と違って切れ目なくどこまでも閲覧が可能だ。距離計測などのツールを備え、オリジナル地図を作ることもできる。だが、実際にアレコレ触ってみないとわからないことも多い。
本書は国土地理院地形図ウェブ活用の指南書。地図の基本的な話から始まり地理院地図活用術を詳細に解説する。また、土地の成り立ちや地形の特徴、活断層の位置も地図上に表示でき、防災に役立つ要素も多い。もっと活用したいものだ。
BOOK 03
リアルな関係が生む生きるための力

『原点回帰
山田孝之、新しいコミュニティをつくる』
秋吉健太著
blueprint
¥2,750
俳優の山田孝之氏が、「生きる力を身につけたい」と、’21年に立ち上げたコミュニティ「原点回帰」。全国にいる仲間たちと農業経験ゼロから始めて野菜や米を作るなどしている。本書はこれまでの活動の記録と、山田自身がその道(農業、製塩職人、醸造家、養蜂家、染織など多岐にわたる)の達人たちに教えを乞う対談集だ。
達人の教えは仲間とシェアし血肉となっていく。何を大切にして何を軸にして生きるのか。模索を続ける本気の姿に、自分も何かやってみたいと刺激を得る。
BOOK 04
暑い夏はスパイスキャンプご飯にも

『ひとりぶんのビリヤニ』
印度カリー子著
山と溪谷社
¥1,760
ビリヤニはインド生まれのスパイシーな炊き込みご飯。近年は日本でも人気に火が付き、提供する店も増えた。家でも食べたい! 作り方を調べると、複雑な手順に何種類ものスパイス……。
「店でいいか」と自炊は諦めた人も多いはず。本書は本来大量に作るというビリヤニをひとり分のレシピで構築。スパイスの基本を踏まえ「炊飯器で」「鍋で」「日本米で」と、より身近なものに近づけてくれた。手順の要点や理由などが明確でわかりやすい。スパイス料理初心者にもおすすめ。
※構成/須藤ナオミ
(BE-PAL 2025年8月号より)