
BOOK 01
あえて時間と手間と金をかけて! 自分で何でも作ってみよう
『自家製はエンタメだ。』
浜竹睦子著
サンクチュアリ出版
¥2,420

いかに時間をかけずに、いかに効率よくやるか。良し悪しは別として昨今は何でもその風潮が強い。多くの事や物は、対価を払うことで手に入れることが可能になっている。「食」もそのひとつで、味噌、豆腐、醤油、特に調味料などは買って手に入れている人がほとんどだろう。だが、それらの原材料を改めて見ると思いのほかシンプルだったりする。
本書は、自分で作れるんじゃないか? と思い立った著者が、様々な食品を自作していくイラストレシピ集だ。和洋中の調味料から魚や肉の加工品、漬物、乳製品、麺類と幅広く挑戦する。ビギナー目線の素朴な疑問や陥りがちな失敗とその解決法、手順のコツが随所にあってわかりやすい。普段あまり調理をしない人でもきっとトライできるはず。
しかし、自家製は時間と手間と金が必要。それが「エンタメ」たる所以だ。本書では味噌や醤油など蔵を訪ね、プロから作り方を教わる場面もある。製作の現場の様子も著者目線でレポート。知られざるサイドストーリーも読み物として楽しめる。
もうすぐ店には梅が並び始めるころ。梅干しや梅酒を仕込んでみるのもいいかもしれない。梅干しを作るときに出る梅酢で、紅しょうがも作れる……そんな食のDIYプランを考えだしたら自家製沼の仲間入り。
BOOK 02
平安人も愛でていたホタルは人と共存する
『じつは身近なホタルのはなし』
遊磨正秀著
緑書房
¥2,420

あと数週間もすれば各地でホタルが飛び始める。たびたび清流の象徴のように扱われる昆虫だが、実際はある程度に人が手を加えた水系が住処。ホタルはいくつかの条件が揃わないと住めないという。
暗さが必要なこと、川にある程度の流れと幼虫が隠れられる石が川底にあること、餌となるカワニナがいることなどなど。単に水がきれい(「きれい」も主観が入る)なだけではなく、住処となる川を取り巻く環境全体を見なければならないと著者。
本書はゲンジボタルを長年研究してきた著者が、生態や暮らしぶりなどホタルの秘密を解き明かす。ホタルを通じて水辺の環境を考えよう。
BOOK 03
探して捕まえたい! 極意を細かく伝授
『コツがわかる! カエルの見つけ方図鑑』
松橋利光著
山と溪谷社
¥1,760

田んぼに水が張られると、カエルの大合唱が始まる季節。田んぼといえばニホンアマガエルが代表格だ。日本には約50種(外来種含む)のカエルが生息しているという。
本書は田んぼ、山や渓流、島といった生息場所別にその生態と見られる時期を紹介する。捕まえ方、持ち方、持ち帰る方法まで指南。同じ場所でも時期を変えて何度も行ってみる! 見つけても気づいてないふりをして近づく! といった近所の生き物好きのお兄さんが、そっと教えてくれるような朗らかな導きだ。
BOOK 04
4億年の系譜とは? 謎多き海の覇者
『知られざるサメの世界 海の覇者、その生態と進化』
佐藤圭一、冨田武照著
講談社
¥1,430

インパクト大で表紙を飾っているのは深海に住むミツクリザメ。サメはこんなふうに襲ってくる! 映画『ジョーズ』(’75年公開)の印象はいまだに強い。
だがサメの多くの種は深海に住み、遥か昔に誕生し4億年も命を紡いできた歴史がある生き物なのだ。知られざる様々なサメの生態や種類を本書が最新の事実とともに繙いていく。しかし、まだまだサメはわからないことだらけ。進化の過程がとても遅い生き物のようで、近年の気候変動が彼らにどう影響するのか気になるところだ。
※構成/須藤ナオミ
(BE-PAL 2025年6月号より)