
BOOK 01
一風変わった虫目線の花図鑑。昆虫と花の関係は未来に影響大
『虫がよろこぶ花図鑑 ミツバチ・ハナバチ・ハナアブなど』
前田太郎、岸 茂樹著
農文協
¥2,420

花の図鑑は数あれど、その多くは「美しさ」や「身近さ」といった人間目線でラインアップされている。本書はタイトルにもあるとおり、虫が喜ぶのが基準。どんな花にどんな虫がやってくるのか、蜜は多いのか少ないのか。野生(在来・外来)、園芸、作物の175種を紹介する。養蜂や農業、庭づくりをする人にとって虫の飛来は特に重要な要素だ。
本書では四季ごとに色別で花を紹介する。開花期や大きさといった基本的な情報をベースに、「おもな訪花昆虫」、「香りの好み」(ミツバチなどの)、「蜜量」、「花粉のサイズ」という虫から見た魅力の度合いを示した独自の項目がある。育てやすくよく見かけるパンジーは、華やかだが虫の訪花はほとんどなく、彼らにとっては魅力がないのだとか。一方でネギは人気の花だったりして、虫目線で花を捉えてみると植物の違った一面が浮かんでくる。巻末の「花の調べ方」は、著者がどのように調べたかの解説で「かんたんな方法」は、すぐに真似してみたくなる。
虫が喜ぶ花が咲いているか? それは私たちの生活にも大きな影響を及ぼす。主な農作物の実りに欠かせない受粉は、虫たちが担っているからだ。昨今、世界的に昆虫は減っている。要因のひとつは花資源の減少だと本書は警鐘を鳴らす。
BOOK 02
森の意思か?緑を奪還する植物の反乱!
『我らが緑の大地』
荻原 浩著
角川書店
¥2,200

主人公の村岡野乃は、スタートアップ企業に籍を置き植物の会話(コミュニケーション)について研究している。郊外の研究農場で小松菜や大豆を育てる日々。仕事と育児、平穏な毎日を送っていた。だが、あるときを境に原因不明の山火事や野生動物の不穏な行動などが立て続けに起こり、物語は一気に走りだす。森が意思を持ち、有害な生物(人間を含む)を駆除し始めたのだと野乃は考え立ち向かう。中盤からはめくるめくパニックな展開となるが、現実の世界でも植物間のコミュニケーションの仕組みについては、研究と解明が進んでいる。植物とは友好な関係を築きたいものだ。
※構成/須藤ナオミ
(BE-PAL 2025年5月号より)