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    2025.05.11

    ドラゴンが棲んでいる!? 中央スイス・ピラトゥス山の洞窟にまつわる伝説と絶景を堪能する旅

    ドラゴンが棲んでいる!? 中央スイス・ピラトゥス山の洞窟にまつわる伝説と絶景を堪能する旅
    ある春先のオフシーズン時期。中央スイス・ピラトゥス山の山岳ホテルに泊まる機会がありました。

    この山は「ドラゴンが棲む」という伝説があることでも知られています。果たして言い伝えの真相(?)はどうなのか、さっそく探索に出かけました。

    標高2000m以上の場所にある山岳ホテルへ、いざ!

    ロープウェイを乗り継いで、ピラトゥス山頂まで

    出発地点はルツェルン州クリエンス(Kriens)。ここからロープウェイで山頂のピラトゥス・クルム(Pilatus kulm)駅まで行きます。

    クリエンス駅から4人乗りのゴンドラリフトで出発!

    この日はうららかな日和。ゴンドラリフトから見える山や民家、草地に放牧されている動物たち、そして歩きや自転車で山を登っていく人々を眺めつつ、のんびり気分で乗っていました。

    中間駅までは約30分間の空中散歩。 

    ふと横をみると、人ではなく荷物運搬用の箱がすれ違って行きます。4人乗りのゴンドラリフトは小さいので大きな荷物を載せるのに限りがありますが、これなら簡単・安全に運べますね。

    スーツケースなどは、この荷物用ロープウェイで頂上のホテルまで楽に運べます。 

    やがて中間駅フレックミュンテック(Fräkmüntegg/標高1415m)に到着。ここで今度は「ドラゴン・ライド」と呼ばれるロープウェイに乗り換えです。2015年にリニューアルされ、車体だけではなくケーブルなども頑丈で大きなものに交換されました。一度に55人まで乗ることができます。

    フレックミュンテック駅からは「ドラゴン・ライド」で山頂へ。

    フレックミュンテック駅からピラトゥス山頂駅まではたったの数分。とはいえ頂上に近づくにつれ、周りが雪景色となり、再び冬の季節へ舞い戻ったかのようになっていきました。

    運が良ければロープウェイから野生動物が見られることもありますが、今回は残念ながら動物たちには会えず。

    ほぼガラス張りの「ドラゴン・ライド」からは山の斜面がよく見えました。

    その代わり、野生動物たちが雪上のあちこちに残した足跡を見ることができました。

    雪の上にはユキウサギのものらしき足跡も。

    ピラトゥス山頂はまだ冬だった

    こうしてあっという間に最終駅ピラトゥス・クルム(標高2073m)へ。そこから通路に沿って歩いていくと、2つのホテル「ホテル・ベルヴュー(Hotel Bellevue) 」と「ホテル・ピラトゥス・クルム(Hotel Pilatus Kulm) 」共通のレセプションエリアへたどり着きました。

    ホテルのレセプションエリアから見える町や湖は、小さなジオラマのよう。 

    さて、宿泊する「ホテル・ピラトゥス・クルム」へのチェックインを済ませ、部屋へ入った途端、室内が妙に薄暗いことに気付きました。外は快晴、まだ午後の日が高い時間だというのに…と部屋の窓に目をやれば、窓の半分が雪に覆われています。

    客室の窓は雪がかぶさったまま。

    「雪ぐらい払っておいてくれたらよいのに」と思いつつ、窓の外から雪を除けようとホテルの外へ出てみたら、宿泊する部屋の窓に届くほどの雪が数メートルも積もっていて驚きました。

    実は我々が宿泊したこの部屋、他の部屋より料金が若干お安くなっていたのですが、こういった事情があるからのよう。

    なんと雪が窓まで積もっていました。自分で雪を取り除くのは無理(笑)。

    ホテルの外にはレストランのテラス席があり、日帰りでハイキングに訪れた人々でにぎわっていました。息をのむようなパノラマビューを楽しみながら、ランチやお茶ができるのは魅力です。

    ホテル前のテラスでくつろぐ人たち。

    ホテルのテラスで軽食もいいな、と景色が良く見えそうな席を探していた時、どこからか視線を感じました。視線の先を見ると、そこにはフェンスにとまってこちらを見つめる黒い鳥たちが。しかもそろって前のめりになり、何かを狙っている様子。

    最初にこの鳥たちを見た時、スイスや欧州全土に生息するアムゼル(die Amsel/クロウタドリ)に似ていたので「平地に暮らすアムゼルなのに、さすがスイスでは高い山にも来るのかな」と不思議に思いましたが、よく見るとアムゼルより一回り大きく、足の部分が赤いことから、標高の高い地域に住むアルペンドーレ(die Alpendohle/キバシガラス)のようです。

    ホテル「ピラトゥス・クルム」前のテラス。

    アルペンドーレたちは、テラスで食事をしている人たちが残していった食べ物を、スタッフの目を盗んではさっと取っていきました。鳥たちにこんな間近で監視されていたらゆっくりできないなぁ、と結局テラスでの食事はあきらめることに。

    等間隔に並んでチャンスをうかがう鳥たち。

    ちなみに周りの人々は慣れっこなのか、全く気にしていないようでした、スゴイ。

    ピラトゥスに棲むドラゴンと洞窟からのパノラマビュー

    さて、このピラトゥス山には大昔よりドラゴンがいる、なんて伝説があります。そのためピラトゥス山の公式ロゴはドラゴン。中世時代、ピラトゥス山の起伏多い岩々の割れ目にドラゴンが潜んでいると信じられ、恐れられていたのだとか。

    こういうドラゴンがいるなら、ぜひ仲良くなりたい!

    そんなわけで山頂には「ドラヒェンヴェーク(Drachenweg)」という、石灰岩を掘って作られた洞窟もあります。和訳すると「ドラゴンの道」で、なんだか往年のカンフー映画のタイトルみたいですが、私がピラトゥスを楽しみに訪れる理由の一つがここにある洞窟。

    いかにも怪しげで何か潜んでいそうな入り口から全長500mほどの洞窟を進むと、その先には小道が続いていたり、崖に沿って上る狭く急な階段があったり、と自分自身がドラゴンかアルプスの動物になった気分になれる、およそ30~40分の周遊ルートになっています。

    「ドラヒェンヴェーク」の入り口。怪しさ満点。
    洞窟入り口近くから、ロープウェイの最終駅が見えました。

    電灯などはないので洞窟内は暗いのですが、ところどころに大きな穴が開いており、そこから広がるパノラマビューが楽しめるので人気スポットになっています。

    洞窟の隙間から壮大な雪景色が拝めます。

    寒い季節の間は周遊ルートが限られると聞いていましたが、どこまで行けるかな?洞窟とはいえ内部はきれいに舗装されていて、とても歩きやすいです。

    まだまだ洞窟が続く…この先には何が?

    こうして5分ほど調子に乗ってずんずん奥へ進んで行ったら――行き止まり。

    この時期はまだ雪や凍った箇所が多いので、安全面から通行止めになっているよう。もうちょっと先まで探索できると思っていたのに残念!スイスの山に本格的な春が来るのは5月半ば~6月。4月下旬はまだ“冬”だったということをうっかり失念していました。

    ここから先は、鉄柵の扉が閉まっていて進めず。残りのルートは暖かくなるまでおあずけ。

    夕食後、宿泊客たちがこぞって急ぐ先とは

    夕方になると、日帰りでピラトゥス山を訪れていた人たちは最終のロープウェイで帰って行きました。突然の静寂さが漂う中、今山頂にいるのはホテルの宿泊客のみ。

    その後ホテル内レストランで夕食を取っていると、他の宿泊客の人々がこぞって外へ出て行きます。「みんなどこへ行くのだろう?」と首をかしげていると、レストランのスタッフが来て「もうすぐ日没ですよ、きれいな夕日が見れますよ!」と教えてくれ、そこで初めてみんなが展望台から沈む夕日を見に行ったことを知りました。

    そこで我々も急いで食事を済ませ、他の宿泊客たちの後を追うようにして夕日を見に行きました。テラスとは別にある、ホテル横からジグザグに続く長い階段を10分ほどかけて昇った先の展望台から、空のグラデーションと夕日、それが反射する雲など壮大な眺めをみんなとシェアし合えたのでした。

    この絶景鑑賞は、山頂ホテルに泊まった人たちだけが味わえる贅沢!

    他の宿泊客たちと一緒に、展望台から日暮れ時の大パノラマを堪能。

    翌朝早く、外から聞こえる複数の人の声で目が覚めました。今度は朝日を拝むため早起きをした宿泊客たちが再び展望台へ向かっていたのです。

    私も一緒に日の出を見たいと思いましたが、眠気には勝てず断念。それでも朝は気持ちよく起床、朝食後ホテルに別れを告げ、再びロープウェイで山を下りました。

    こうして体験したピラトゥス山頂での一夜でしたが、それまでは夏に日帰りで来たことがあるだけだったので、今回ピラトゥス山の別の顔を垣間見た気がしました。

    次回はシュタインボック(大角のヤギ)やアルプスのカモシカ、ゲムゼ(シャモア)がアクティブに活動する夏に再訪できたら良いな、と思います。

    小島瑞生さん

    スイス在住ライター

    1998年~2009年までアイルランドで暮らした後、2009年からスイス在住。スイス始め欧州の国々のさまざまな興味深い情報を雑誌やウェブサイト、ラジオ等のメディアにて発信中。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員

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