トレイルを進みながら先々の計画に悩む日々【プロハイカー斉藤のナショナルシーニックトレイル踏破レポ vol.22】 - 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2025.05.01

    トレイルを進みながら先々の計画に悩む日々【プロハイカー斉藤のナショナルシーニックトレイル踏破レポ vol.22】

    トレイルを進みながら先々の計画に悩む日々【プロハイカー斉藤のナショナルシーニックトレイル踏破レポ vol.22】
    トレイルの本場であるアメリカには、連邦政府によって認定されたトレイル(ルート)がいくつかあります。そのうち「シーニックトレイル」と呼ばれるものが全11ルートあり、総距離は約17,800マイル(約28,646km)におよびます。

    日本で唯一のプロハイカー・斉藤正史さんは、そんなシーニックトレイル全11ルートの踏破に挑戦中です。2024年9月から10月にかけては、アメリカ東部の「ポトマックヘリテージトレイル」と「ニューイングランドトレイル」に挑みました。斉藤さんによるアメリカのトレイルの最新レポート第22回をお届けします。

    [ポトマックヘリテージトレイル編 その22]

    いつしか季節が進み、寒さがこたえるように…

    以前にも軽く触れましたが、GAPトレイルの沿線は私有地が隣接しているエリアが多くあります。なので、トレイル沿線で勝手にテントは張れません。

    宿泊地探しには苦労したのですが、GAPトレイルのコミュニティーでいろいろな情報を教わり、とても助かりました。マイヤーズデルの次に泊まったロックウッドのホステルも、GAPトレイルのコミュニティーで教えてもらったところです。

    マイヤーズデルからロックウッドは、わずか12マイル(約19.2km)ほどです。早めに着いてゆっくりしようと考え、いつも通り朝早くに出発しました。

    すると、数分でまたもや雨が降り出す始末。ロックウッド到着までの約6時間、ずっと雨が降ったりやんだりを繰り返していました。

    手袋なしでは寒い朝。
    この日はずっと雨が振ったりやんだり…

    The Potomac Heritage Trail : MILE228.3 | Rockwood

    ペンシルバニア州の最高峰、標高 3,212 フィート(979m)のデイビス山の麓にあるロックウッド。ここは、鉄道とともに発展した街だそうです。ボルチモア・アンド・オハイオ(B&O)鉄道は、ロックウッドを通ってピッツバーグとメリーランド州カンバーランドを結ぶアムトラックの急行列車を、毎日運行しています。

    たどり着いたロックウッドでは、目当てのホステルが閉まっていたり、管理人の所在が不明だったり、クレジットカードが使える or 使えないでモメたりなどなど、トラブルが目白押し。が、二転三転しながらも予定通りのホステルに宿泊できました。

    しかも、宿は静かでキレイで、もう1泊してもいいかなと思えるほど。しかし、この先の天気予報をチェックすると、しばらくは快調の様子です。とりあえず天気の良いうちに先へ進もうと、予定通り次の街を目指して翌日に出発しました。

    The Potomac Heritage Trail : MILE236.4 | Pinkerton Tunnel

    ピンカートン・トンネルは、ウェスタンメリーランド鉄道が1911 年に建設したもの。あえて、競合相手のボルチモア&オハイオ鉄道が建設したトンネルの近くにつくったそうです。

    しかし、このトンネルは 1970 年代に放棄されました。その後、グレート・アレゲニー・パッセージ保護協会がトンネルを修復し、GAPトレイルのルートとして利用したそうです。

    ピンカートン・トンネル。

    このピンカートン・トンネルを越えると、マークルトント・レイルヘッドがあるのですが、トレイルのすぐ脇には手作りのモニュメントと共にレジスターが置かれていました。

    レジスターとは、ハイカーやバイカーが自身の足跡を記録するノートです。他のハイカーやバイカーがレジスターに目を通して、自分のトレイルを検討する際の参考にしたりすることもあります。ただ、このGAPトレイルで見かけたレジスターはおそらく通り過ぎる人が多いだろうと判断し、僕もレジスターを読まずに先に進むことにしました。

    マークルトン・トレイルヘッド近くにあったレジスター。

    そのままトレイルを進むと、今度は何やら怪しいマシーンがやってきました。ほぼ全面ソーラーパネルの…何だろう?ソーラーカーといわれればそうだし、自転車といわれればそんな気もします。よく見るとペダルが付いているので、電動自転車に分類されるのかもしれません。

    いま、僕が歩いているトレイルは、ハイカーとバイカーしか通れない道です。ただ、C&O運河トレイルもGAPトレイルも、下り坂が多いにもかかわらず、電動自転車で走っているバイカーをよく見かけました。

    電動バイク、電動自転車、ソーラーカー、ソーラー自転車…。何がOKで何がNGなのか、どこまでがアリなのか、実に境界線が曖昧な感じがします。ともかく、僕は自分の足で歩いていくだけですが。

    え〜と、これでトレイルを走ってもOKなのでしょうか…?

    The Potomac Heritage Trail : MILE246.1 | Confleuence

    コンフルエンスは直訳すると「合流点」ですが、ここはまさにカッセルマン川とローレル・ヒル・クリーク(入江)が合流する場所です。さらに、ユーギオゲニー川とも合流します。

    アメリカの初代大統領であるジョージ・ワシントンは、若いころに測量士をしていました。1749 年にこの地域を探検し、3つの水域が合流する様子が七面鳥の足の形に似ていることに気付いたそうです。この3つの川の合流点エリアは「ターキーフット・バレー」とも呼ばれているのですが、もしかしたらワシントンのエピソードが由来なのかもしれません。

    コンフルエンスは、オハイオパイル州立公園まで10マイル(約16km)の距離にあり、3つの川が合流するのでカヌーやフライフィッシング、ハイキング、自転車といったアウトドア・アクティビティのメッカとして知られています。

    ユーギオゲニー川。

    今夜泊まるのはOutflow Campground(アウトフローキャンプ場)です。ここはアメリカ陸軍工兵隊が管理しているそうですが、現在はシーズンオフで管理人も不在です。ただ、キャンプ場のすぐ目の前に川があり、ルアー釣りをする人、キャンピングカーでやってきてキャンプを楽しむ人など、シーズンオフながら多くの人で賑わっていました。

    僕はGAPトレイルのコミュニティでの教えに従い、屋根のある東屋のような場所にテントを張ります。事前の情報通り、コンセントがあって電源も使えました。残念ながらシャワーは使えませんが、トイレもゴミ箱もあります。

    近くの街にモーテルもありますが、軒並み1泊2万円越え。このキャンプ場でも雨をしのげるし、前日にシャワーを浴びているので問題ありません。ここで2日間過ごすことにしました。なお、このキャンプ場はオフシーズンは無料、オンシーズンは1泊16ドルです。

    シーズンオフなのでピクニックテーブルもが片付けられていました。 

    翌日は、再びゼロデイ(トレイルを歩かず、休息したり今後の計画を見直したりする日)です。

    この日は、街で洗濯をしたり、図書館のWI-FIを利用してBE-PAL.netに連載している「TOKYO山頂ガイド」の原稿をチェックしたり、この先5日分の食料を調達したり、ポトマックヘリテージトレイルを歩き終えてからニューイングランドトレイルへ行く交通手段の確認をしたりと大忙し。相変わらず、ゼロデイなのに全く休めないというか休まないというか…。

    それはともかく、ここまで悩みの種としてずっと抱えていることがありました。昨年(2023年)、ニューイングランドトレイルを半分まで歩いたところで、コロナウイルスに感染したため中断を余儀なくされました。そこで、今年(2024年)はポトマックヘリテージトレイルを歩き終えたら、そのままニューイングランドトレイルの残り半分を歩く予定です。

    当初、GAPトレイルに続いてLAUREL HIGHLAND HIKINGトレイル(LHHトレイル)を歩き終えたら、最寄りの街であるジョンズタウンに1泊。そこから、去年歩き終えたコネチカット州ウィンザーロックまで列車で行く予定でした。

    しかし、ジョンズタウンからコネチカットまでの列車は早朝出発便が1日1本しかなく、しかも到着が夜中なのでウィンザーロックに2泊しなくてはなりません。そうすると、その3日間は全てホテルに泊らなくてはならず、宿泊代は約5万円。一般的にはともかく、僕のトレイルではかなりの贅沢です。

    そこで、あれやこれやと行き先を変え、もっとリーズナブルなルートを探し続けていました。例えば、LHHトレイルを歩き終えて11時までジョンズタウンに着けば、フィラデルフィア行のバスに間に合います。そのバスに乗れば、フィラデルフィア到着が午後7時。

    そこから翌日朝イチの列車に乗ってウィンザーロックに行けば、到着が昼です。これなら2泊で済むし、フィラデルフィアには7,000円ほどで泊まれるバンクハウスもありました。

    迷うまでもない、これしかないだろう。そう思い、ジョンズタウンからフィラデルフィアに行くバスと、フィラデルフィアのバンクハウスを予約しました。

    ただ、この計画は、全て順調でなければ意味がありません。少しでもスケジュールが狂えば、交通費や宿泊代がかさみ、結局は当初の無難な予定と大差なくなります。

    さて、予定変更が吉と出るか凶と出るか…。こうして休日も仕事のことが抜けない日本人らしく(?)、ゼロデイといいながら忙しく頭を働かせる1日が過ぎていくのでした。

    2日間お世話になった寝床。快適でした!

    ポトマックヘリテージトレイル公式サイト

    ナショナルシーニックトレイル踏破レポのバックナンバーはこちら

    斉藤正史さん

    プロハイカー

    2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。また、BE-PAL.netにて「TOKYO山頂ガイド」を連載。

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